日本と海外のジャーナリスト、学者、消費者、生産者の総勢30人が科学的な事実に基づき、
日本を含む世界の現状を分かりやすく紹介した画期的な内容!

なぜ誤解はいつまでも続くのか?

日本ではなぜ理解が進まないのか?

1章 遺伝子組み換え作物とは何か?
2章 生産者と消費者の目
3章 記者たちはどう見ているのか?

遺伝子組み換え作物の真実

序章 つくり話からの解放
1章 遺伝子組み換え作物は怖くない
2章 21の問い
3章 人間の進化と遺伝子の移動
4章 巨大企業と表示の義務化論争
5章 科学をゆがめているのは誰か?

<書籍詳細>
書名:誤解だらけの遺伝子組み換え作物
編著:小島正美(毎日新聞記者)
体裁:A5判 上製 304頁 
定価:本体1400円+税
発行:2015年9月5日

『品種改良は遺伝子の変化』 小泉望(大阪府立大学教授)

『発がん性試験の不備』 唐木英明(東京大学名誉教授)

『研究者と市民の橋渡し役』 笹川由紀(くらしとバイオプラザ21・主席研究員)

『なぜGM作物に興味を持つのか』 宮井能雅(北海道・生産者)

『GM作物は北海道に有益』 小野寺靖(北海道・生産者)

『現場を知る・知らせることの大切さ』 蒲生恵美(消費生活アドバイザー)

『教科書副読本に見るGM作物の誤解』 森田満樹(消費生活コンサルタント)

『理解進まぬアメリカの現状』 中島達雄(読売新聞記者)

『米国とフィリピンの現状をレポート』 日比野守男(元東京新聞・中日新聞論説委員)

『現実を知って考えよう』 平沢裕子(産経新聞記者)

『漠然とした不安をどう考えるか』 米谷陽一(朝日新聞記者)

『冷蔵庫から眺める日本の「食」事情』 小田一仁(時事通信記者)

『「自覚なき消費、実態なき不安」って、なんだかヘン』 中野栄子(日経BPコンサルティング・プロデューサー)

小島正美(こじま・まさみ)記者
現在、毎日新聞社生活報道部編集委員

1951年愛知県犬山市生まれ。愛知県立大学英米研究学科卒。1974年毎日新聞社入社。長野支局、松本支局を経て、1987年東京本社・生活家 庭部に配属。千葉支局次長の後、1997年から生活家庭部編集委員として主に環境や健康、食の問題を担当。東京理科大学非常勤講師のほか、農水省や内閣府の審議会委員も務める。

著書に、
『リスク眼力』(北斗出版)
『アルツハイマー病の誤解』(リヨン社)
『誤解だらけの「危ない話」』(エネルギーフォーラム)
『正しいリスクの伝え方』(エネルギーフォーラム)など。

「非科学的な遺伝子組み換え作物論争に終止符を!」
-毎日新聞・小島正美記者に聞く遺伝子組み換え作物-

インターネット上だけにとどまらず、時に大手メディアにおいても、その危険性が叫ばれ、反対論などが展開される「遺伝子組み換え作物」。こうした状況に一石を投じる書籍、「誤解だらけの遺伝子組み換え作物」が9月5日にエネルギーフォーラムから発売される。本書の出版過程において主導的な役割を務めたのが毎日新聞の記者である小島正美氏だ。小島氏は、当初遺伝子組み換え作物には否定的な立場をとっていたが、現在ではバイアスの強すぎる報道や情報を是正する活動に尽力しており、今回の出版はそうした活動の集大成だという。
小島氏に、自身が考えを変えた理由や、現在の遺伝子組み換えをめぐる報道の問題点について話を聞いた。

アメリカの農業の現場を見て考え方が変わった

-最初に、本書を出版された動機を教えてください。

小島:以前から個人的に、過度に危険だとされている遺伝子組み換え(GM)作物に対する誤解を解きたいと考えていました。そんな時に、アメリカ人が中心になって書いた「The Lowdown on GMOs」という電子ブックと出会い、非常に面白いので翻訳して内容を知ってもらおうと思ったんです。
この本の一部は無料で電子書籍として読めるのですが、読んでみると日本の記者たちが今まで持っていたイメージとの違いもわかってきます。アメリカでは、日本より遺伝子組み換え作物が受け入れられているイメージあるのですが、実際には、トマトに注射器を刺した図などを見せて恐怖を煽っている反対運動があることも電子ブックで分かりました。
こうした状況を踏まえ、日米双方の記者、専門家、生産者の声を紹介する本を出せば、誤解が解けるんじゃないかと考えたんです。

-アメリカでは日本よりも受け入れられているというイメージが確かにありますが、実態は違うのでしょうか。

小島:サンフランシスコ、ロサンゼルスのあるカリフォルニア州やニューヨーク、ワシントンといった都市部ではけっこう市民団体を中心に反対運動がありますね。ただ、組み換え作物を実際に栽培している中西部では,あまり反対はないようです。

-多くの読者にとっては、「遺伝子組み換え作物(GM)」という言葉は聞いたことがあっても、日本における具体的な状況はご存じないと思います。

小島:私自身は組み換え作物の輸入状況などをよく記事で書いてはいますが、それでも6~7割の人はよく知らないというのが現状でしょう。先日、民放のディレクターと話をしていたところ、その方も遺伝子組み換え作物についてよく知りませんでした。
現に日本は非常に多くの遺伝子組み換え作物を輸入しています。例えば、トウモロコシは、年間1440万トン輸入しているのですが、そのうちの約1000万トンが、遺伝子組み換えです。トウモロコシの場合、ほとんどが食用油か家畜のエサ、コーラのような清涼飲料水の甘味料などに使用されます。このように間接的な形で消費しているので、その実態が見えにくいのでしょう。
また、菜種、大豆についても、輸入の7~9割は、遺伝子組み換えになっていて、日本で流通しているのですが、その実態はほとんど知られていません。

-小島さんは、15年程前まで遺伝子組み換え食品に否定的で、そうした論調の記事も執筆しています。それが現在では、「農家の方の選択肢としてあってもよいのではないか」という風に考えを変えています。このようにお考えが変わったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

小島: 2002年に偶然「アメリカで実際の生産の様子を見に行きませんか?」というオファーを受けたことがきっかけでした。
それ以前は、恥ずかしいことに私は「遺伝子組み換え作物が普及しても、農薬は減らないし、収量も増えない」という内容の海外の論文を記事で書いたりしていました。ところが、実際に行ってみたら、現場では私の考えていたこととはまるっきり違うことが起きていました。生産者は口をそろえて「収量は増えます」「農薬も確実に減ります」「殺虫剤をまかなくて済むので、環境にもいいです」と言うのです。
農薬をたくさん撒けば、当然、地下水や川に流れていくこともあります。遺伝子組み換え技術を使えば農薬の量も減るので、川の農薬汚染も以前に比べて減ったという話もその時に聞きました。私が依拠していた論文と異なる現実を目の当たりしたわけですが、記者である以上、事実は事実として伝えなければいけない。自分が見たことを帰国して記事にしました。

-遺伝子組み換え作物に否定的な方々は「その農場だけは偶然そうだったんだ」などと反論するのではないでしょうか。

小島:最初に視察した時は、ネブラスカなど一部の州だけだったのですが、2年後にもう一度行ったところ、遺伝子組み換え作物を育てている農場が増えていたんです。実際に、どの生産者に聞いても、間違いなく農薬は減るし、収量は増えるし、環境にも良いんだという答えが返ってくる。一度目は、遺伝子組み換えのシェアが3~4割でしたが、さらに増えていたので「生産者が植えてみて、効果的だったからまた増やしたんだ」と考えました。私自身も最初の1年ぐらいは懐疑的な気持ちもあったのですが、これまでに8回の海外取材をした結果、もはや組み換え作物のメリットは揺るぎないものと考えざるを得ませんでした。
強調したいのは、途上国のアルゼンチン、ブラジル、フィリピンなどでドンドン使用する農家が増えていることです。途上国でも伸びているということは、零細な農家でも大きなメリットがあるということです。これまでに発表された内外の数百の査読付き論文によれば、組み換え作物が収量を上げ、農薬の使用を減らし、世界の食料問題を解決しうる力をもっていることは明白だと言えます。

-収量が増えたとしても、「それは大企業によって自社の商品を使うように操られて、結果的に搾取されているんだ」といった批判もあります。

小島:そうした批判はアメリカ国内でもあったようです。確かに、生産者に聞くと、遺伝子組み換え作物の苗の価格は高いです。しかし、彼らも商売ですから、ずっと損し続けるわけにはいきません。高くても買うということは、その高い値段を上回る収量があったと考えられます。つまり、苗代が高くても使用する生産者が増え続けていくということは、それだけのメリットがあるということです。
私の心の中にも、以前は多少なりとも「農家が巨大企業の操り人形に…」というようなイメージもあったのですが、実際に生産者に会ってみると、そんなことはありませんでした。どの農家に聞いても、「今年はあるメーカーから買ったけど、来年は別の会社から買うかもしれない」という人がいましたし、今でもいます。皆さんが毎回同じメーカーの車を買わなくてもよいのと同じです。
「農家が企業に操られる」と簡単に言う人がいますが、実際には難しいですよ。企業が毎年良いモノを作って出せば、農家は毎年買うでしょうが、ひとたび競合会社がより良いモノを出してくれば、誰だってそちらを選びます。私自身、そういう単純な競争のメリットのことをアメリカに行くまでよく理解していなかったということですね。

-一方で今まで遺伝子組み換え作物に批判的な記事を書いていたときは、市民団体の方などから「よくやった」などと賞賛されていたわけですよね。そうした方たちは、考えを変えられた小島さんに対して、反感を持ったのではないでしょうか。

小島:講演会などで市民団体の方々に、私が見た事実を伝えると誰も反論はしないんですよ。見たことは事実なので、それは理解してくれたと思います。ただ、それでも「大企業がやった動物実験は信用できない」とか「政府が安全だと言っているんだけど、本当にちゃんと動物実験を含めた審査をやっているのかどうか信頼できない」といった反論はいまもありますね。
さらに、一部の学者がやった実験の中には、内臓への障害が出たとか、免疫力が落ちたといったものがありますので、そういう否定的なデータを論拠に反論してくるケースはあります。ただし、そうした否定的な論文は、他の学者の大半から否定されており、学者の間では重みをもったものにはなっていません。STAP細胞がいい例ですが、一時的に注目を集めるものの、最終的に他の科学者によって淘汰される論文というのはたくさんあります。反対する人たちが論拠としている論文には、そういうものが多いですね。

遺伝子組み換えは特別なテクノロジーではない

-遺伝子組み換えもそうですが、科学的な議論は専門的な分、非常に難解な場合も多いと思います。そのことが一般読者の理解を妨げ、過度に危険なイメージをもたらす原因になると思うのですが、メディアとして難解な言説を伝えていく上で意識していることはありますか?

小島:遺伝子組み換え作物が、特別なテクノロジーではないということを伝えるようにしています。例えば、糖尿病の治療に使うインスリンも、現在では遺伝子組み換え技術で作られています。大腸菌の中に、人間のインスリンの遺伝子を入れて、大腸菌に作らせているのですが、これは遺伝子組み換え作物と同じやり方です。iPS細胞も細胞に別の遺伝子を入れて分裂可能な初期の状態に戻すというようなことをやっていますし、チーズを作っている発酵菌も、現在では遺伝子組み換えで出来ています。
このように、遺伝子組み換え技術というのは、別に特別なものじゃないということを、事例を挙げながら伝えるようにしています。実際に、他の分野ではすでに普及していて、特別なものではありません。
さらに大きな枠組みで考えると、ヒトをはじめとする生物の進化は遺伝子の組み換えそのものだということも可能です。書籍の中で海外の寄稿者たちは、進化の歴史は遺伝子組み換えの歴史だといった指摘もしています。実は人間の中にも海藻や植物の遺伝子がたくさんあるということが、最近分かってきたんです。元々植物にあった遺伝子を人間がもっているということは、植物の遺伝子を受け継ぎながら人類が進化してきたということなのです。

-とはいえ、すべての記者が、遺伝子組み換え技術に関して正しい知識を持つのは難しいと思うのですが。

小島:私もかつては偏った記事を書いていましたが、現在は全体像を理解した上で記事を書いているつもりです。つまり、記者もキチンと解説してくれる専門家と出会えば理解は出来ると思います。
例えば、ワクチンの予防接種もかつては同じような状況にありました。ワクチンも90年代後半には否定的なイメージが強かったのですが、医師をはじめとする専門家たちが地道に記者セミナーを開くなど科学的な情報を提供し続けた結果、2000年代に入るとワクチンの有用性が浸透していきました。
おっしゃるとおり、記者も様々なことに興味を持って取材をしているので、あらゆる分野を勉強するのは難しいのですが、科学者達が、記者に分かって欲しいと考えて、積極的にセミナーなどを開けば、遺伝子組み換えについての理解も広がると思います。10年前と比較するとだんだん理解されてきたと思います。
一方で、やはり消費者の方にもリテラシー(読み解く力)が必要だと思います。メディア側は、いつも全体像が分かるように的確なニュースを報道しているわけではありません。「メディアとは、記者の判断によって、現象の一部を切り取って報じるものだ」ということを知る必要があると思いますし、情報を受け取る側も勉強する必要はあると思います。

環境団体の主張は理想論

-別の問題点として、一度「危ない」という記事が出てしまうと、その後「よく調べてみたら安全でした」という記事が出ても、後の記事は注目されづらいという構造がありますよね。

小島:この点は、私自身も課題だと感じていることです。ただ、メディアは少なくとも価値と事実を分けて報道する必要はあると思います。「多数の科学者がエビデンスとして、確立したものです」ということを確実に伝えて、その上で、「良いとか悪いという価値観はアナタたちがご自由に決めてください」と。現在では、そういうスタンスで記事を書こうとしています。

-やはり科学的なエビデンスを提示し続けることが重要だということでしょうか。

小島:遺伝子組み換え作物に反対するのであれば、危ないというエビデンスを自分でしっかりと集めないといけない。反対派の多くは、事実というよりも、自身の価値観で反対している傾向が強いと思います。
私は、環境NGOのグリーンピースの人たちとも話をするのですが、彼らの「生態系に合った農業が必要」といった理想はよく理解できますが、自分たちは工業社会の恩恵を受けて都会に住んでいますから、どうも説得力に欠けます。
現実問題としては不可能ですが、仮に世界中の食べ物をすべて有機農産物にしたら、生産量は下がる、人手はかかるで、値段が上がります。すると、今度は所得の高い人はよいでしょうが、低い人の生活レベルは間違いなく下がります。そういうことを考えると、いまの農業はまずまずの豊かさを支え、よいパフォーマンスを発揮していると言えるでしょう。今回の書籍に出てくる海外の生産者たちは、反対派の主張は現実を見ていない空論だと盛んに指摘しています。
実際に、除草を1回やってみると、非常に大変です。私自身も10坪ぐらいの農園を借りて、トマトやピーマンを植えているのですが、一番大変なのは雑草です。雑草が次々生えてきても10坪なら何とかなりますが、1ヘクタールとか2ヘクタールもあったら、人力での対応は不可能です。そんなコストかけられるわけがありません。

-今回の本を、特にどんな方に読んで欲しいですか?

小島:農水省のアンケート調査によると、遺伝子組み換え作物に対して理解が低かったのは、学校の先生と栄養士でした。なので、一番読んで欲しいのは学校の先生と栄養士の方ですね。正しい情報をキチッと知った上で、子供たちにちゃんと教えてほしいと思います。
また、まだまだ現実を知らない人も多いので、他のメディアの人にも読んで欲しいなと考えています。

-まだまだメディアで的外れな記事を見かけることはあるのでしょうか。

小島:最近は昔ほど酷い記事はなくなってきたと思います。それは、おそらくある程度、エビデンスが出て来て、「農薬が減る」「収量が増える」ということが、反論しようがない事実だとわかってきたからだと思います。なので、「反対している人達がいる」ということがニュースになることはあっても、遺伝子組み換え作物自体に安全性などで問題があるという記事はなくなってきています。
しかし、アンケートを取ると、いまも必ず6~7割の人達が「不安です」と答える現実もあります。ただ、そういう消費者の意識も大事にしなければいけません。不安に思っている多数の方々の気持ちをくみ取って、記事を書かなければいけないということは、デスク・部長クラスからはいつも言われています。
市民団体の方々の活動も、問題提起としては重要だと思います。科学者は問題提起よりも、自分の新しい研究領域で新しいことにチャレンジすることに集中しがちで、過去の論文を見て、「ここがおかしい」とか「間違っているんじゃないか」ということを、やってもあまり業績になりません。一般の市民団体の人たちから出てきた問題提起に対して、専門家の意見を聞きながら科学ベースで考えて、妥当かどうかを見極めることが、記者の仕事だと今は考えています。

―最後に、今度の本の特色を簡単に教えてください。

小島:組み換え作物に関する本は、これまでにもありましたが、事実に基づかない反対一辺倒の本か、学者が解説した難しい本ばかりでした。この本は、日本と海外のジャーナリスト、学者、消費者、生産者の総勢30人が科学的な事実に基づき、日本を含む世界の現状を分かりやすく紹介した画期的な内容の本だと自負しています。日本の主要紙のジャーナリストがそろって執筆しているのも、初めてのことです。とにかくじっくりと読んでほしいですね。きっと世界観が変わると思います。

[PR企画/株式会社 エネルギーフォーラム]

取材、文:永田 正行【BLOGOS編集部】

【なぜ誤解はいつまでも続くのか?】

日時:2015年10月14日(水)18時30分~(開場:18時00分)
場所:八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー
主催:八重洲ブックセンター 協賛:エネルギーフォーラム