福島 伸享
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。
沖縄県知事選挙とは何だったのか? (2018/10/09)

 9月30日に施行された沖縄県知事選挙で、野党系の玉城デニー候補が、与党系推薦する佐喜真淳候補を大差で破って当選した。投票率が微減し、前回自主投票だった公明党や自ら立候補した維新が与党系についた中で翁長前知事の得票を上回る票差をつけたのだから、「弔い合戦」を超える圧勝と言っていい。世論調査では基地問題が一番の有権者の関心事項であったことから、普天間基地の辺野古移転が争点となったと言われているが、私はそのような単純な構図ではなかったと感じる。
 選挙戦の真っ最中、私は衆議院同期当選の玉城デニー候補の応援に茨城空港から沖縄入りし、レンタカーを借りて約70軒の相手地盤の建設会社を回ってきた。ある建設会社で出てきた社長さんは、私たちが与党系陣営と勘違いしたのか、満面の笑みで「佐喜真さんを一生懸命やらせてもらっています」と応じた。聞くところによると、毎日のように自民党、公明党の関係者が来るらしい。私が、「いや、恐縮ですが、同期の玉城デニーさんのお願いに自腹切って茨城から来たんですよ」と言うと、低い声で「ちょっとこちらに」と社長室に通された。
 その中で社長はせきを切ったように「基地なんてない方が沖縄の活性化にはつながる。基地問題は日本全体の問題で、それを選挙のたびに沖縄県民に審判させるのはおかしい。実は玉城デニーさんも手分けして応援している」と話し始めた。私たちがマスコミ各社の玉城氏がリードしている調査データを示すと、「そうですよね。玉城候補にぜひ伝えてほしい」と様々な思いをお伺いした。他の建設会社も、自民党王国の私の地元のように自民党系議員のポスターをベタベタ社内に貼ったり、佐喜真候補を表立って応援している姿は見せておらず、多くが与党に面従腹背、二面作戦をとっているように見受けられた。
 今回の選挙戦は、自公維が組織戦に力を入れれば入れるほど、本土対沖縄の構図が出来上がってきて、ウチナーンチュの本土の人には見せない本土への対抗意識が表面化した戦いであったのだろう。そして、与党系の中核をなすべき建設会社の経営者たちと話をしていると、自民党総裁選の模様やモリカケ問題等での政権の対応を見て、安倍政権が長くないことを感じ取っているようであった。
 沖縄県知事選挙は、一見基地問題をはじめとする沖縄特有の問題が出た選挙のように思われるが、実際には安倍政権への現時点での国民の評価がそのまま表れた選挙であったと思われる。その意味では、日本全国に共通する国民の判断の一端が示されたものである。安倍総理は自民党総裁に3選してあと3年の任期を得たが、もう終わりは見え始めている。沖縄県知事選挙は、その終わりへの入口である。電力ガスシステム改革、原子力政策、日露経済協力など安倍政権で手掛けてきたさまざまなエネルギー関連政策に関係する方々は、これからそのことを意識しながら対応していった方がよいだろう。
記事一覧
2018/10/09
沖縄県知事選挙とは何だったのか?
 9月に行われた沖縄県知事選では、野党系の玉木デニー氏が与党系の佐喜真淳氏を大差で破り当選した。世論調査では、基地問題が一番の有権者の関心ごとだったと言われている。しかし、実際のところは、与党が組織戦に力を入れれば入れるほど、本土対沖縄の構図が出来上がり、ウチナーンチュの本土の人には見せない本土への対抗意識が表面化したのではないか。選挙戦の真っ最中、相手地盤の建設会社を回ったときそう感じた。
2018/09/03
小泉元総理の脱原発論の単純さ
 世論調査を行うと、脱原発を支持する国民は多い。しかし、脱原発を争点とした選挙で脱原発派が当選することは少ない。有権者は、観念的なエネルギー政策よりも、現実に即した具体的な政策を求めているのである。小泉純一郎元首相は、脱原発を旗印にした野党再編のキーマンになろうとしているが、旧来の左翼陣営のような観念的な脱原発にとどまっている限りは、それが国民の多くを動かすような動きにはならないだろう。
2018/07/23
日米原子力協定の自動延長は何を意味するのか?
 7月に日米原子力協定が自動延長された。これは、今後いつでも一方の国の勧告で協定を終了させることができる「サドンデス」期間に入ったことを意味する。協定が失効すれぱ、日本側では大きな混乱となる。一方、米国側が失うものはほとんどない。米国としては、エネルギー政策のみならず、対日外交上の大きなカードを得たことになる。
2018/06/18
新潟県知事選挙に見る選挙と原子力
 6月10日に行われた新潟県知事選で、与党系候補の花角英世氏が当選した。花角新知事は原発の是非について、米山隆一前知事の路線を継承するという。これまで、細川護熙元首相が出馬した東京都知事選などで、原発が争点となった。しかし、脱原発派が劇的な勝利を収めて政策の変更が行われたケースは少ない。国民は、観念的な政策よりも、現実に即した政策を求めているのである。
2018/05/14
第5次エネルギー基本計画に期待する
 第5次エネルギー基本計画の骨子案が総合資源エネルギー調査会で公表された。骨子案では、再生可能エネルギーについて、「ほかのエネルギー源の革新を誘発」するものだとする。一方、原子力については、「重要なベースロード電源」ではあるが、その依存度は可能な限り低減させるとしている。このような目標に対し私は「原子力か脱原発か」という2元論でなく、技術革新の可能性と不確実性を前提として、複線的なシナリオを用意しようとしている点で評価したい。
2018/04/02
森友学園問題とエネルギー政策
 森友学園問題が再燃している。当初安倍総理夫妻は、「保守ビジネス」の被害者ではないかと思っていた。しかし、経産省から出向している首相夫人付の関与や、財務省の決裁文書改ざんなどの問題が明らかになり、安倍政権の権力構造そのものの問題があぶり出されるようになった。第二次安倍政権は、経済産業省人脈がその屋台骨を支えている。しかし、森友問題をきっかけに、その運営に疑問が沸き起こり、安倍政権の行方も不透明なものになってきている。
2018/02/26
厳寒の電力不足で考えたこと
 東京電力が1月24日に節電を呼びかけた。22日から降り始めた大雪の影響によるもので、最近は夕方の暖房需要が綱渡りになっているようだ。太陽光発電の比率が高まったことによる構造的なも問題もあるという。FITの下で今後とも再生可能エネルギーの導入は増えていくだろう。規制の適切化、燃料調達環境の整備など、政策のきめ細かいミックスを図っていくことが急務だ。
2018/01/22
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日)
 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画見直しの議論が本格化する年だ。その中で原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点になる。例えば、脱原発派にとって原子力は、「原子力ムラの既得権益の確保」とみるだろう。一方、エネルギー政策を立案する立場からすれば、3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力である。政府がエネルギー政策の帳尻を合わせに、今後も原子力に一定の役割を位置づけるのであれば、すべては絵に描いた餅になり、日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないだろう。