福島 伸享
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日) (2018/01/22)

 新年あけましておめでとうございます。今年からこのコラムを毎月掲載させていただくこととなりました。エネルギー政策をめぐる政治と行政の動きを、なるべくその水面下が覗けるように綴ってまいりたいと思っておりますので、ご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。


 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画の見直しの議論が本格化する年。新年早々、小泉・細川両元首相が「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表した。小泉元総理は、今年の9月には自民党総裁選が行われることを見越して、独特の政治勘から「いちばん早いのは自民党が原発ゼロを進めること。これは不可能ではない。(安倍晋三氏に代わる)新総理がゼロの方針を打ち出せば自民党はがらっと変わる。自民党が変わらなくても、原発問題が国会で議論になり、選挙で争点になった時に大きな変化が起きる」と挑発しているから、野党の動きと合わせてエネルギー基本計画の議論はいつも以上に政局と絡んだ注目を浴びる可能性が高い。

 エネルギー基本計画では、我が国のエネルギーの安定確保に向けた電源構成の扱いに一番注目が集まる。とりわけ原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点である。2014年4月に閣議決定された現行のエネルギー基本計画では、原子力は「重要なベースロード電源」と位置付けられ、「安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で一番厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、再稼働を進める」とされている。脱原発派にとっては、「原子力ムラの既得権益の確保」と見えるかもしれないが、エネルギー政策を立案する立場からすればいわゆる3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力の活用なのである。ましてや、またパリ協定の締結を受けて、その削減目標を達成しなければならない今回の改訂では、尚更のことである。

 しかし、従来のエネルギー基本計画で書かれていることは、原子力の位置づけや安全性の確保を原子力規制委に委ねることばかりで、国の役割は再稼働のための立地自治体など関係者の理解と協力を得ること程度でしかない。昨年末、深い海を越えた130kmも離れた阿蘇山の火砕流が及ぶ可能性があるとして、広島高裁は伊方原発の運転差し止めの仮処分を命じる常識を超えた決定を行ったが、それはそもそも現行の原子力規制委の規制基準に基づく判断である。「世界で一番厳しい水準」と言っても、どの程度のリスクを社会として許容するのかを決めるのは、科学者である前に政治でしなければならない。私の地元では、日本原電が運転開始から今年で40年になる東海第二発電所の再稼働に向けて苦労しているが、稼働可能性ある発電所が東海第二しかない以上、一民間企業の日本原電は何があっても社運を賭けてこれを進めざるを得ない。東京電力が柏崎刈羽原発の再稼働に向けて努力しているのも同様であるが、そう簡単に物事を動かすことは難しいことであろう。

 政府がエネルギー政策の帳尻を合わせるために、今後も原子力に一定の役割を位置づけ、それを推進するのであれば、従来のような「国策民営」と言われる政府が国策としての旗を振るだけで後の運営は民間という「基本計画」では、すべては絵に描いた餅になり何ら日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないであろう。安全規制についても、規制委員会に丸投げする前に、どのような水準の規制が国民に受容されながら原子力事業者が事業を推進していけるものなのか判断するのは、政策的観点からなされなければならない。政府が自らの役割を規定して責任の所在を明確にしたがらないのは官僚組織の常であるが、今回のエネルギー基本計画の改定ではバックエンドも含めた原子力の実施体制、国と事業者の役割等について本質的な議論がなされ、これまでの延長線上ではない枠組みが提示されることを期待したい。

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2018/01/22
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日)
 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画見直しの議論が本格化する年だ。その中で原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点になる。例えば、脱原発派にとって原子力は、「原子力ムラの既得権益の確保」とみるだろう。一方、エネルギー政策を立案する立場からすれば、3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力である。政府がエネルギー政策の帳尻を合わせに、今後も原子力に一定の役割を位置づけるのであれば、すべては絵に描いた餅になり、日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないだろう。