エネルギーフォーラム / clm_fukushima
福島 伸享
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。
厳寒の電力不足で考えたこと (2018/02/26)

今冬の首都圏は大雪に見舞われ、厳寒の日が続いた。1月22日から降り始めた大雪の影響もあって、1月24日には東京電力は厳しい電力需給状況を見越して節電を呼びかけた。これまで節電というと、夏の甲子園の高校野球が盛り上がる日中の冷房需要によるものというイメージがあったが、最近は冬の日が暮れた夕方の暖房による需給の方が綱渡りになっているようだ。

 これには鹿島火力などのトラブルもあったことも要因としてあるようであるが、構造的な問題としてたとえ数パーセントとはいっても電源構成に占める太陽光発電の比率が高まったことも原因であるという。夏の暑い盛りには太陽光発電もフルに発電してくれるが、冬の雪の日にはパネルに雪が降り積もって発電してくれない。FIT導入後急増した太陽光発電は、今や電力供給に一定の影響を与える存在になっているのだ。これからは冬の節電を呼びかける日が増えるのではないかと予想する人もいる。

 この東電が節電を呼びかけていた時期に、ある稼働したばかりのバイオマス発電所は東京電力からフル稼働して電力を供給するよう依頼を受けたという。「こんなできたばかりの小さな発電所にまで」と驚いていた。言うまでもなく、バイオマス発電は需要に応じた稼働が可能である。再生可能エネルギーといっても、太陽光、風力、バイオマス、地熱などさまざまなものがあり、それぞれ天候によって左右されるもの、需要に応じて発電できるものなど電力としての特性や、燃料の調達が必要なものやそうでないものなど事業環境の特性がある。米国のエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によると、日本の太陽光発電の電源構成比率はFITの下では2030年までに12%まで増加する可能性すらあるという。

 FITの下では今後とも再生可能エネルギーの導入は増えていくであろうが、今回の経験でわかったことは単に電源構成のうち再生可能エネルギーが何パーセントになればいいというものではないということである。言うまでもないことであるが、電力は安定供給を行うことが第一の使命である。これまでの原子力、火力、水力によるベストミックスに加えて、再生可能エネルギーの中のベストミックスを図っていくための政策措置を講じていく必要があるであろう。それは、再生可能エネルギーの電力としての特性や事業環境の特性の違いから、太陽光の買い取り価格を引き下げたりバイオマスの買取価格を配慮したりするなどFITの買い取り価格の調整のみでは実現できない。規制の適切化(強化すべきものは強化、緩和すべきものは緩和)や燃料調達環境の整備、技術開発の促進などさまざまな政策のきめ細かいミックスを図っていくことが急務であろう。

記事一覧
2018/07/23
日米原子力協定の自動延長は何を意味するのか?
 7月に日米原子力協定が自動延長された。これは、今後いつでも一方の国の勧告で協定を終了させることができる「サドンデス」期間に入ったことを意味する。協定が失効すれぱ、日本側では大きな混乱となる。一方、米国側が失うものはほとんどない。米国としては、エネルギー政策のみならず、対日外交上の大きなカードを得たことになる。
2018/06/18
新潟県知事選挙に見る選挙と原子力
 6月10日に行われた新潟県知事選で、与党系候補の花角英世氏が当選した。花角新知事は原発の是非について、米山隆一前知事の路線を継承するという。これまで、細川護熙元首相が出馬した東京都知事選などで、原発が争点となった。しかし、脱原発派が劇的な勝利を収めて政策の変更が行われたケースは少ない。国民は、観念的な政策よりも、現実に即した政策を求めているのである。
2018/05/14
第5次エネルギー基本計画に期待する
 第5次エネルギー基本計画の骨子案が総合資源エネルギー調査会で公表された。骨子案では、再生可能エネルギーについて、「ほかのエネルギー源の革新を誘発」するものだとする。一方、原子力については、「重要なベースロード電源」ではあるが、その依存度は可能な限り低減させるとしている。このような目標に対し私は「原子力か脱原発か」という2元論でなく、技術革新の可能性と不確実性を前提として、複線的なシナリオを用意しようとしている点で評価したい。
2018/04/02
森友学園問題とエネルギー政策
 森友学園問題が再燃している。当初安倍総理夫妻は、「保守ビジネス」の被害者ではないかと思っていた。しかし、経産省から出向している首相夫人付の関与や、財務省の決裁文書改ざんなどの問題が明らかになり、安倍政権の権力構造そのものの問題があぶり出されるようになった。第二次安倍政権は、経済産業省人脈がその屋台骨を支えている。しかし、森友問題をきっかけに、その運営に疑問が沸き起こり、安倍政権の行方も不透明なものになってきている。
2018/02/26
厳寒の電力不足で考えたこと
 東京電力が1月24日に節電を呼びかけた。22日から降り始めた大雪の影響によるもので、最近は夕方の暖房需要が綱渡りになっているようだ。太陽光発電の比率が高まったことによる構造的なも問題もあるという。FITの下で今後とも再生可能エネルギーの導入は増えていくだろう。規制の適切化、燃料調達環境の整備など、政策のきめ細かいミックスを図っていくことが急務だ。
2018/01/22
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日)
 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画見直しの議論が本格化する年だ。その中で原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点になる。例えば、脱原発派にとって原子力は、「原子力ムラの既得権益の確保」とみるだろう。一方、エネルギー政策を立案する立場からすれば、3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力である。政府がエネルギー政策の帳尻を合わせに、今後も原子力に一定の役割を位置づけるのであれば、すべては絵に描いた餅になり、日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないだろう。