エネルギーフォーラム / clm_fukushima
福島 伸享
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。
森友学園問題とエネルギー政策 (2018/04/02)

 国会では、1年たってまた森友学園問題が再燃している。3月27日には佐川前国税庁長官の証人喚問が行われたが、疑惑の解明には全く至っていない。私は、昨年の2月17日にはじめて安倍総理に森友学園問題について問い質し、安倍総理は思わず「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれはもう私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」と答弁してこの問題が燃え広がるきっかけを作った者なので、この問題が今後エネルギー政策とどう関わるかについて述べたい。
 私が質問した当初は、この問題は安倍総理ファンを語るいかがわしい人の「保守ビジネス」の問題として、安倍総理夫妻はある意味被害者ではないかと思っていたが、経済産業省から出向している首相夫人付きの関与や財務省の決裁文書の改ざんなどの問題が次々と明らかとなって、安倍政権の権力構造そのものの問題が炙り出されることとなった。官邸主導の政策決定、政治主導の幹部人事などの仕組みを作ったのは橋本首相時の行政改革で、その実現には当時の通産省が大きく関わっていた。第二次安倍政権は、その新たな官邸主導・政治主導の仕組みを活用し、経済産業省人脈が屋台骨を支え、その要にあるのが今井尚哉首席秘書官である。
 今井秘書官は、橋本行革を構想するチームの一員として、省庁再編が議論された当時は「エネルギー・環境省」構想を持っていたエネルギー政策に強い人物である。嶋田隆経済産業事務次官、日下部聡資源エネルギー長官とも同期であり(ちなみに佐川前国税庁長官も同期)、現在検討が進められている新しいエネルギー基本計画は首相官邸の強力なバックアップと連携の下でとりまとめられることになっていたであろう。
 しかし、森友学園の問題をきっかけに、経済産業省出身者が屋台骨を支える安倍政権の官邸主導の政権運営にさまざまな方面からの疑問が沸き起こり、安倍政権の行方自体も不透明なものとなってきている。今井秘書官自身に対しても、野党から証人喚問を求める声が出てきている、ポスト安倍首相とされる政治家のうち、河野太郎外相以外の岸田政調会長や石破氏のエネルギー政策に関するスタンスは明らかではないが、安倍政権が農業政策や労働政策の転換を成長戦略のターゲットにしてきたのに対して、ポスト安倍の争点の大きな一つがエネルギー政策になる可能性は非常に高い。安倍政権の権力構造に対する揺り戻しというものは、必ずやってくる。政局の匂いに敏感な小泉進次郎氏の父上も、すでに活発に活動を始めている。
 森友学園の問題の行く末とともに、今後安倍政権がどのような末路をたどり、権力構造の変化がエネルギー政策にいかなる影響を及ぼすのか、注目すべき時がまもなくやってくるのではないか。
記事一覧
2018/07/23
日米原子力協定の自動延長は何を意味するのか?
 7月に日米原子力協定が自動延長された。これは、今後いつでも一方の国の勧告で協定を終了させることができる「サドンデス」期間に入ったことを意味する。協定が失効すれぱ、日本側では大きな混乱となる。一方、米国側が失うものはほとんどない。米国としては、エネルギー政策のみならず、対日外交上の大きなカードを得たことになる。
2018/06/18
新潟県知事選挙に見る選挙と原子力
 6月10日に行われた新潟県知事選で、与党系候補の花角英世氏が当選した。花角新知事は原発の是非について、米山隆一前知事の路線を継承するという。これまで、細川護熙元首相が出馬した東京都知事選などで、原発が争点となった。しかし、脱原発派が劇的な勝利を収めて政策の変更が行われたケースは少ない。国民は、観念的な政策よりも、現実に即した政策を求めているのである。
2018/05/14
第5次エネルギー基本計画に期待する
 第5次エネルギー基本計画の骨子案が総合資源エネルギー調査会で公表された。骨子案では、再生可能エネルギーについて、「ほかのエネルギー源の革新を誘発」するものだとする。一方、原子力については、「重要なベースロード電源」ではあるが、その依存度は可能な限り低減させるとしている。このような目標に対し私は「原子力か脱原発か」という2元論でなく、技術革新の可能性と不確実性を前提として、複線的なシナリオを用意しようとしている点で評価したい。
2018/04/02
森友学園問題とエネルギー政策
 森友学園問題が再燃している。当初安倍総理夫妻は、「保守ビジネス」の被害者ではないかと思っていた。しかし、経産省から出向している首相夫人付の関与や、財務省の決裁文書改ざんなどの問題が明らかになり、安倍政権の権力構造そのものの問題があぶり出されるようになった。第二次安倍政権は、経済産業省人脈がその屋台骨を支えている。しかし、森友問題をきっかけに、その運営に疑問が沸き起こり、安倍政権の行方も不透明なものになってきている。
2018/02/26
厳寒の電力不足で考えたこと
 東京電力が1月24日に節電を呼びかけた。22日から降り始めた大雪の影響によるもので、最近は夕方の暖房需要が綱渡りになっているようだ。太陽光発電の比率が高まったことによる構造的なも問題もあるという。FITの下で今後とも再生可能エネルギーの導入は増えていくだろう。規制の適切化、燃料調達環境の整備など、政策のきめ細かいミックスを図っていくことが急務だ。
2018/01/22
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日)
 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画見直しの議論が本格化する年だ。その中で原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点になる。例えば、脱原発派にとって原子力は、「原子力ムラの既得権益の確保」とみるだろう。一方、エネルギー政策を立案する立場からすれば、3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力である。政府がエネルギー政策の帳尻を合わせに、今後も原子力に一定の役割を位置づけるのであれば、すべては絵に描いた餅になり、日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないだろう。