福島 伸享
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。
第5次エネルギー基本計画に期待する (2018/05/14)

 第5次エネルギー基本計画の骨子案が、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に提示された。私は、現在のエネルギー政策をめぐる難しい政治状況の中で、派手さはないがバランスをとりながら一歩前に出たそれなりのものであると、一定の評価をしたい。

 骨子案では、「再生可能エネルギーの革新が他のエネルギー源の革新を誘発」として、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて導入を加速することとしている。一方、原子力を「重要なベースロード電源」とする従来の基本計画の位置づけをそのまま維持し、「原発依存度については、再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化などにより、可能な限り低減させる」としている。さらに、パリ協定の締結を背景に議論が開始されたエネルギー情勢懇談会の経済産業大臣への提言を受けて、新たに2050年に向けた長期のエネルギー戦略を打ち出した。

 これに対して、「原子力の位置づけがあいまい」とか「脱原発への方針転換が明確ではなく先送りだ」などという批判があるが、私は「原子力か脱原発か」という2元論に陥るのではなく、技術革新の可能性と不確実性を前提としながら、複線的なシナリオを用意しようとする今回の基本計画の方向性は、日下部資源エネルギー庁長官らしい現実的なものであると評価する。これまでの基本計画は、何かの政治的な決着を付けようとして、逆に不確実な国際情勢や技術動向に対応できない硬直的でお題目的なものになっていたのではないか。

 一方、方向性は妥当だとしても、そこの掲げられている政策の方向性は従来の政策の羅列に過ぎず、技術の進展に期待しながら、肝心の政策自体のイノベーションを目指す姿はあまりみられない。再生可能エネルギーの導入加速については、系統接続の問題や間欠性の課題への対応としての調整機能確保などの課題が掲げられているが、「託送料金制度の在り方についての検討」程度のことが例示されているにすぎず、発送電分離後の新たな電力供給体制下での役割分担や費用負担のあり方についての方向性は何も見えない。

 原子力を「重要なベースロード電源」とするのであれば、再稼働やリプレイスを進めなければならないが、現在の政策の延長上にはそれが著しく困難なのは明らかである。これには、原子力事業の推進体制や国と事業者の役割分担の議論が必要となるが、「さらなる安全性の向上、防災・事後対対応の強化…対話・広報の取組強化」などによる「社会的信頼の獲得に努めていく」ということのみで、本質的な議論を避けているように思われる。

 せっかく技術革新の不確実性を前提とした複線的なシナリオを用意しようとしているのだから、これまでの基本計画ではほとんど取り上げてこなかった技術開発やファイナンスなどの経済産業省所管外の分野の政策も含め、まさに具体的な複数のシナリオを政策として提示する政策のイノベーションがあれば、基本計画の実効性は飛躍的に高まるであろう。そもそも、エネルギー基本計画の根拠となるエネルギー基本法に定められている基本計画の目的は、「エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進」であり、それは経済産業省の所管分野に限定されるものではない。骨子案では資源確保について「新興国の台頭などで我が国の交渉力の低下」と評論家的に記述しているが、この「我が国の交渉力」を確保するためにいかなる外交を展開していくのかという全政府的観点からの戦略がいつになっても議論されず、示されないのも残念である。今後、今回の一歩前へ出た骨子案をたたき台にして、基本計画のあり方そのものに関する本質的な議論が展開されることを期待したい。

記事一覧
2018/05/14
第5次エネルギー基本計画に期待する
 第5次エネルギー基本計画の骨子案が総合資源エネルギー調査会で公表された。骨子案では、再生可能エネルギーについて、「ほかのエネルギー源の革新を誘発」するものだとする。一方、原子力については、「重要なベースロード電源」ではあるが、その依存度は可能な限り低減させるとしている。このような目標に対し私は「原子力か脱原発か」という2元論でなく、技術革新の可能性と不確実性を前提として、複線的なシナリオを用意しようとしている点で評価したい。
2018/04/02
森友学園問題とエネルギー政策
 森友学園問題が再燃している。当初安倍総理夫妻は、「保守ビジネス」の被害者ではないかと思っていた。しかし、経産省から出向している首相夫人付の関与や、財務省の決裁文書改ざんなどの問題が明らかになり、安倍政権の権力構造そのものの問題があぶり出されるようになった。第二次安倍政権は、経済産業省人脈がその屋台骨を支えている。しかし、森友問題をきっかけに、その運営に疑問が沸き起こり、安倍政権の行方も不透明なものになってきている。
2018/02/26
厳寒の電力不足で考えたこと
 東京電力が1月24日に節電を呼びかけた。22日から降り始めた大雪の影響によるもので、最近は夕方の暖房需要が綱渡りになっているようだ。太陽光発電の比率が高まったことによる構造的なも問題もあるという。FITの下で今後とも再生可能エネルギーの導入は増えていくだろう。規制の適切化、燃料調達環境の整備など、政策のきめ細かいミックスを図っていくことが急務だ。
2018/01/22
「エネルギー基本計画の見直しに必要な論点」 (福島伸享、1月22日)
 今年は、昨年から総合資源エネルギー調査会で始まったエネルギー基本計画見直しの議論が本格化する年だ。その中で原子力の位置づけは、脱原発を目指す政治勢力にとって最大の論点になる。例えば、脱原発派にとって原子力は、「原子力ムラの既得権益の確保」とみるだろう。一方、エネルギー政策を立案する立場からすれば、3E(安定供給、経済性、環境)の政策目標を達成するための帳尻合わせに一番便利なのが、原子力である。政府がエネルギー政策の帳尻を合わせに、今後も原子力に一定の役割を位置づけるのであれば、すべては絵に描いた餅になり、日本のエネルギー政策が抱える問題は解決しないだろう。