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福島 伸享 |
前衆議院議員 1970年生まれ。東京大学農学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁において、電力・ガスの自由化や原子力立地、科学技術庁に出向して原子力災害対策特別措置法の立案などに従事。東京財団研究員、学習院女子大学大学院非常勤講師、筑波大学客員教授などを歴任。 |
東海第2原発の運転延長認可の先にあるもの (2018/11/12) | |
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現段階では、その6市村の一つである那珂市長が反対の意向を表明し、最大の人口を持つ私の住む水戸市でも政権与党系の会派も含めて議会では反対が多数となっている。30キロ圏内で100万人近い住民が住み、実効性のある避難計画を策定するのが難しいこともあり、今後確かに地元合意を得るための関係者の皆さんのご苦労は大変なものとなるであろう。 しかし、私は問題はもっと別なところに根源的なものがあると考える。日本原電は、東海発電所・敦賀発電所の1号機が廃炉、敦賀の2号機は活断層の上にあるため稼働の見込みがなく、私も20年も前の資源エネルギー庁勤務時代立地に向けて奔走した3・4号は着工の見込みは当面ない。稼働の可能性がある発電所は東海第二しかないため、この稼働に向けた努力をやめることは会社の存続自体をやめることに等しい。日本原電の株主は9電力と電源開発で持ち株の90%を超えているため、これらの株主の意向なくして大胆な経営転換もできない。 今回の認可を受けるにあたって、安全対策工事等に要する約1740億円の費用を受電をする東京電力と東北電力から支援を受けることが前提となっている。このまま20年たてば、稼働する発電所はなくなり、逆に4基の廃炉・放射性廃棄物の処分を行っていかなければならなくなるため、いくら廃炉ビジネスに乗り出したとしても、事業として日本原電という会社に持続可能性があるとは常識的には思われないであろう。そうした会社が、我が国の原子力発電所の運転から廃炉までの原子力技術を担っていけるのか、危機的な状況と言わざるをえない。 私は、こうした事態にあって9電力会社、電源開発は、日本原電が血のにじむような思いで再稼働の努力をしているのを他人事のように見守るのではなく、日本原電の今後の在り方を奇貨とした日本の原子力産業の再編に向けて主体的に動くべきであると考える。電力システム改革による発送電分離の環境下で、10電力会社がそれぞれに原子力発電所を所有・運転する体制が、経済的な面でも技術の維持の面でも安全面でも果たして良いのか、廃炉・放射性廃棄物の処理における役割分担はどうあるべきか、などについて中長期的な原子力産業の在り方を踏まえた本質的な対応が必要であろう。 第5次エネルギー基本計画で「新たな組織の設立などメーカー等も含めた産業大での連携を強化」していくとして「原子力政策の再構築」を掲げる政府も、事業者任せにするのではなくさまざまな政策上の支援措置の用意も含めて、前面に立ってその旗振りに乗り出すべきである。今こそ、これをはじめなければ、日本の原子力産業はとめどなく衰退していくであろう。東海第二発電所の稼働は、単に日本原電や立地地域のみの問題ではないのである。 |
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