飯倉 穣 エコノミスト
1947年生まれ。経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。鹿児島市中心市街地活性化協議会会長、鹿児島商工会議所参与。著書に「石油危機から30年」「あえて言わせてもらえば」「電力」など。
人づくり革命を考える (2017/11/13)

 国難突破解散に伴う総選挙(10月22日)が終了し、引き続き自民・公明の与党が多数を確保し政権維持となった。選挙前の新党の動きでは「賢しくて牛売り損なう」を彷彿とさせる場面もあった。
 政府は、森友・加計問題の渦中で「未来投資戦略2017―Society 5.0 の実現に向けた改革―」(6月9日)を決定したが、影が薄かった。第3次安倍晋三内閣(8月3日発足)は、仕事人内閣を旗印とし、唐突に「人づくり革命」を打ち出した。その後第4次内閣発足の首相会見(11月1日)で、人づくり革命と生産性革命を両輪とする政策パッケージを12月に取りまとめると述べた。
 毎年新政策作り、事務局立ち上げ、看板かけ、総理訓示、新会議開催を繰り返している。政府の意気込みを感じる人もいるが、冷めた目もある。過去の政策と効果は、成長率、物価、雇用、財政などのマクロ経済指標で評価すれば、行き詰まり状態にある。
 今回内閣は「人生100年時代構想会議」を設置した。第1回会議(9月11日)でテーマとして人生100年における教育の機会(負担軽減・無償化など)、高等教育の質(ニーズ対応)、就業(多様な雇用形態・高齢者配慮)と社会保障給付(全世代型)の在り方を取り上げている。各主題に係る論文や調査報告書などは示されていない。
 その課題の中で大学に焦点を当てた人づくり革命を改めて考えて見たい。経済成長戦略の一環としての人づくりなら、テーマは、学ぶ人(生徒・学生)の教育、学術研究、企業内外で働く人の能力向上(学習・習熟・創意工夫)となろう。優れた経営者や学者を養成したい願望があるが、過去の研究から経営者やノーベル賞学者の育成は、政策マターに馴染まないようである。故に政策的には、働く人のレベルを引き上げる仕組みが関心の対象となる。そこでは大学の役割が重要であり、大学の日米比較が参考になる。
 現在日本経済は、米国と比べて先行きに不安感がある。この差は経済の担い手である政府、企業、個人のどこにあるのか。それぞれ問題点を指摘できようが、日米経済格差は日米大学格差に起因するのではなかろうか。
 明治に始まる敗戦後の教育制度は、読み書きそろばんができる良き労働者の輩出と良き翻訳者の育成に貢献した。日本の高度成長は海外技術導入が中心であったこともあり、うまく機能した。1970年ころ模倣から創造が語られた。当時大学の役割も期待されたが、大学の管理・運営について保守・革新のイデオロギー的論争が突出し、大学経営のあるべき姿に議論が及ぶことは少なかった。スタンフォード大学トーマスP. ローレン教授は、日本の教育改革についてよき初等中等教育に注力しているが必要なのは大学改革ではないかと話していた(1990年当時)。
 1980年代米国では、経済社会の低迷に直面して、建国後初めて次の世代が前の世代より貧しくなるという見方が支配した。米国の衰退を憂う論調が強かった。その時ハーバート大学ヘンリー・ロゾフスキー教授は、米国は必ず再生出来ると述べた。何故なら米国には大学がある。米国で最も国際競争力のある産業は何か。それは大学である。その大学が、米国を再建すると主張した。確かにスタンフォード、MITなどの大学が、その後の米国の経済再生に大きな役割を果たしている。各大学の日本研究は徹底しており、その後の米国への取り込みと日本への批判・要求の基礎になった。
 1990年バブル経済崩壊後、日本の姿はどうであろうか。企業の姿は様々だが、政府、大学は、右往左往している。むしろ政治家、経済人、経済学者・エコノミスト(御用学者)などの現実を直視しない発言・行動に振り回されている。また大学に日本の再生を期待する声も側聞しない。寧ろ大学は、実学に遠く、役立たないという評価もある。そして構造改革の一環としての独立行政法人化は、大学人のモチベーション低下とその日暮らしに追い込み、創造の余力さえも喪失させているようである。益々日本の大学の国際競争力は低下している。
 人づくりという視点から見ると、政府は、大学の在り方を考え、競争力を高めることを第一とすべきではなかろうか。その際大学経営スタッフなどが、大学の中身・経営を再吟味し、創意工夫で改善することが重要である。とりわけ社会科学分野で大学に実学を定着させ、知識面で社会をリードする役割を再度期待したい。
記事一覧
2017/11/13
人づくり革命を考える
 現在の日本経済は、米国と比べて先行きに不安感がある。これは、日米の大学格差に起因するのではないか。明治以降の日本の教育制度は、読み書きそろばんができる良き労働者の排出と、良き翻訳者の育成に貢献し、うまく機能した。一方、米国では、1980年代に、次の世代が前の世代より貧しくなるという見方が支配した。その時、大学が米国を再建すると主張した。大学は、最も国際競争力のある産業だからだ。翻って日本はどうか。構造改革の一環としての独立行政法人化は、大学人のモチベーション低下を生んだ。大学は実学に遠く、役立たないという評価もある。
2017/10/10
国難突破解散と財政問題を考える
 安倍首相が衆議院の解散にあたり述べた「国難」のひとつに、財政問題がある。財政金融政策や輸出関連設備の投資などにより経済は好調だが、財政赤字は縮減せず、国債残高が累積しているからだ。現実の成長率ならば、財政再建には、30兆円超の増税か歳出削減が必要だ。各党は、選挙公約としてそれぞれの財政再建策を掲げる。しかし、予算改革や税金の有効利用など、国民に耳当たりのよいものばかりが強調され、経済の基本である財政均衡は軽視されている。
2017/09/19
概算要求基準を考える
6月に公表された政府方針では、GDP600兆円と、2020年度の財政健全化目標が掲げられている。歳出面では、ワイズスペンディング(賢い支出)やインセンティブ強化を、歳入面では、民間シェア向上による課税ベース拡大、税制の見直しを図るようだが、いずれも効果は疑わしい。これまでさまざまな内閣が財政再建に取り組んできたが、オイルショック以降の内閣で唯一成果を出したのは鈴木善幸内閣のときだろう。なぜなら、鈴木内閣には財政危機の認識があり、シーリングを徹底して行ったからだ。
2017/08/21
金融検査マニュアル見直しを考える
6月9日の日本経済新聞で、銀行経営を監視する「金融検査マニュアル」を廃止するという観測記事が掲載された。金融マニュアルは1999年に制定され、金融行政の回復や不良債権問題解決などの役割を担った。その一方で、多くの雇用を抱え、頑張っている企業を見捨て、過酷な状況を作り出した。とはいえ、金融マニュアルを廃止しても、過去のバブル経済の失敗を経験した経営者・金融機関なら、大きく姿勢を変えることはないだろう。そうすると同じ過ちが繰り返されることになる。
2017/07/18
コーポレート・ガバナンス(企業統治)を考える
 最近、コーポレートガバナンス(企業統治)議論の一つとして、相談役・顧問制度の透明化を求める報道が増えている。本来企業統治とは、会社の経営を監視するのが本来の目的のはずだ。しかし、今では相談役・顧問制度の透明化を求めることが、民間経営に対する政府の介入糸口になっているように見える。本来企業の基本は自立自営にあるはずだ。企業組織・行動は、会社法、企業会計原則、税法などの周知・遵守で十分である。
2017/06/19
教育無償化を考える
 教員無償化の話題が増えてきている。教育に対する介入は、どれほど必要なのだろうか。教育の機会については、私学を中心とした市場に任せるという議論がある。しかし、教育費に対する対価は、ビジネスと違い費用回収が難しい。また、子どもは、どのような境遇であっても、教育を受ける権利がある。何かしらの政府介入は必要だ。政府の試算によると、幼児教育から高等教育まで含めるとその費用は5兆円強かかるという。財源は、税、保険、国債、休眠預金を活用するらしい。政府はまず、どこに財源を投資するか優先順位をつけるべきである。
2017/05/22
人手不足を考える
 今年に入り「人手不足」という言葉がマスコミでよく取り上げられるようになった。歴史をたどると日本は2つの時期で人手不足を経験している。1つ目は高度成長が一段落した1970年代。生産性の高い製造業が、労働力を吸収し、低生産性部門からの人口移動を促した。2つ目は、80年代前半のバブル形成期。財政拡大・金融緩和政策により、設備投資が加速し、85年以降経済が膨張した。一方、13年1月から続いているアベノミクスによる景気拡大策では、雇用増加の8割が非製造業で、非正規の職を得ている。生産性の高い分野での雇用拡大がないのが特徴だ。
2017/04/17
海外企業買収(東芝問題)を考える
 東芝によるWH買収の判断で、多数問題が指摘されている。核心はWHの債務保証だろう。保証を求められれば、当然何かおかしいと本来は感じるはずだ。この甘い判断の原因には、経営者、働く人の意識の問題があるのではないか。民間は、商品サービスの提供で代金という形で自分の稼ぎを得る。故に苦労も多い。しかし、企業が成熟していくとその原点を忘れがちになる。自分の金を自分に使えば、節約して効用の最大を狙う。しかし、他人の金を他人のために使えばどうか。節約不明、効用不明となる。つまり「福祉の欺瞞(ぎまん)」が経営者や働く人に忍び込むのである。
2017/03/13
働き方改革の淵源を考える
 安倍内閣が2016年に示した「ニッポン一億総活躍プラン」では、「高齢者雇用の促進」、「非正規雇用労働者の待遇改善」、「最低賃金引上げ」などを掲げている。しかし、この改革は、労働者に一定の光明を与えるとしても、雇用の根本である企業の発展にどの程度貢献するか不明である。必要なのは、働きを通じて物真似を超え新しいものを創造する人材の醸成ではないか。
2017/02/06
トランプノミクスの雇用第一を考える
 安倍晋三首相が1月20日に行った施政方針演説とトランプ政権の方針を比較してみた。「偉大な国」と「輝く日本」、雇用確保、成長志向。目標はおおむね一緒である。しかし、貿易は二国間FTAか多国間かで若干ニュアンスが違う。最近の思潮である「新自由主義」は市場重視・競争で多くの企業・雇用を不安定にして、それをバネに企業・労働者の活力を高め経済活性化を狙って来た。トランプ政権の雇用第一は、米国の新自由主義の流れを変えるであろうか。
2017/01/05
2017年度政府予算案を考える
 昨年12月、政府は17年度政府予算案を閣議決定した。歳出は97.5兆円で今年度当初予算比0.76%増である。報道によれば特会からの繰入でその他収入を積み上げている。かつ税収の前提が、来年度経済成長率が実質1.5%名目2.5%と高め設定である。これらを考えれば、歳入見積もりを額面通りに受け取れない。財政の基本的考え方は、財政支出のうち経常支出を税収で賄うことである。これは経済の原理、財政の基本原理である。
2016/11/28
トランプ新大統領の経済政策の行方を考える
 現在の米国経済は、リーマンショックからの回復過程がほぼ終了した段階に差しかかっている。今後の景気は、ピーク越えか景気下降局面のどちらかになるだろう。トランプ氏の政策は、雇用確保で移民抑制、輸入抑制、減税、インフラ投資拡大、金融緩和に動くと推察される。しかし、このような財政金融頼りの経済膨張政策は適当なのだろうか。かつてのレガーノミクス(大減税・規制緩和・金融引き締め)やジョージ・W・ブッシュ経済政策(減税・イラク戦争・金融緩和)の再来にみえてしまう。
2016/10/24
お呪(まじな)い的金融政策を考える
 過去3年間の金融政策をみると、為替安、金利低下、株式などの資産価格の上昇をもたらしたが、経済全体で捉えると、生産面は微増から停滞、民間企業設備投資は微増から横ばい、住宅投資はやや増加、輸出は微増だった。この間の実質GDPの伸びは平均0.6%だったが、これは補正予算を含めた財政支出の効果が大きい。つまり、金融政策の経済全体への波及効果はわずかしかなかったことになる。
2016/09/20
消費拡大・景気浮揚・経済成長を考える
 消費拡大、景気浮揚、成長実現とはどのようなことを言うのか。減税などにより短期的に消費拡大で景気浮揚は可能である。しかし長期的には継続が困難である。これは消費が所得に依存するためである。つまり消費は、所得の結果といえる。貯蓄の取り崩しや借金で消費を行うことはできるが、一時的で限度がある。自分の所得以上の消費は長期的に継続できない。故に消費で成長実現は困難である。
2016/08/08
アベノミクスふかし大規模経済対策を考える
 参院選後安倍晋三首相は、28兆超の経済対策を打ち出した。今回の経済対策は、大規模な財政出動で景気の下支えを本格化する狙いがある。ひとつは、当面の需要不足を埋め、回復すれば、財政支援なしで成長軌道にのせる所得ターゲット政策であり、もうひとつは、技術開発ベースの民間投資である。それゆえ、一定期間の経済引き上げ効果(膨張)が期待でき、成長が続けば「呼び水」効果となるだろう。一方、低成長にとどまるなら、「乗数」効果に帰結せざるを得ない。
2016/07/04
消費増税再々延期発言を考える――政策転換は引き際が大切――
 安倍晋三首相が示した新しい判断「消費増税の2年半延期」について大方の国民は、「財政不安は残るが、増税延期に一安心といったところだろう。ただ問題もいくつかある。1つめは、政治的な空言だ。財政運営は政治家の影響があるため、通常は政策の変更は行わないものである。2つめは、安倍首相や政府の経済の捉え方だ。現状はバブル崩壊の前兆か通常の景気後退局面のはずだ。成長が見込めない下でアベノミクスを最大限にふかすのは、バブルを再現になりかねない。
2016/05/30
日本の通貨体制を考える
米国を中心に為替相場は、市場が決める、市場任せにすべきだという主張がある。一方変動相場制では、通貨政策は国内問題である。国内通貨政策の結果、物価変動などで相場が変動することは受容される。他方、行き過ぎには国際的あるいは一国の関与がしばしば認められる。各局面で対応の考えが異なる。根底には過去の経験から通貨安競争は望ましくないという基本理念がある。
2016/04/18
サミット経済宣言の陥穽を思議する
 3月に行った日米首脳会談でオバマ米国大統領は、5月に開かれるG7伊勢志摩サミットを見越し、安倍首相の主導力に期待すると述べた。そんな中、日銀の3月短観が2年9カ月ぶりの景況感悪化を伝えた。日本経済の景気は漂流しているのである。政府は3月に過去最高額となる96.7兆円の予算を成立したが、その後も前倒し執行や「商品券配布」など財政出動を検討していると聞く。財政金融政策で経済水準を押し上げた分、すでに資産価格バブルや設備過剰が起こっている可能性がある。ただ、それでも金融機関の健全性が維持されれば、予想景気の範囲内に収まる。その場合政府は静観したほうが良いといわれている。各国経済は、その国の責任で運営することが基本である。
2016/03/14
日本経済の健全性を考える
 2月19日、野田佳彦前首相と安倍晋三現首相の国会質疑があり、経済認識と政策に係る見解を相互に披露した。その時の両者の認識は、共に成長力を高める工夫が必要ということだった。近頃の政治家は、経済成長を過度に重視し、経済変動(景気変動)や経済のパフォーマンス(経済の健全性)を軽視する傾向にあるのではないか。経済成長は技術革新をベースとした民間設備投資が前提にあるので、短期・中期的な施策で結果を期待してはいけない。
2016/02/08
財政規律を考える
 2016年度予算の国会審議が始まった。政府は、赤字国債を5年間自動発行延長出来る特例公債法案を今国会に提出するという。現在の財政状況下でこのような政策・法律の提案は妥当なのであろうか。消費税率引上で国民負担を求めることに加え高水準の国債依存継続という状況を斟酌すると、歳出拡大は不適切だ。長期にわたる公債依存度も、緊急対策、不況対策の位置づけを越えており、日本の財政運営に不健全性・違和感を覚える。先進国では見られない常軌を逸した財政運営が継続している。
2015/12/21
敗戦後70年を考える「経済成長~現実直視こそ肝要~」
 安倍晋三首相は、9月に行った演説で「2020年に名目GDP600兆円」を目指す目標を掲げた。果たして可能なのか。現在民間企業は約70兆円の設備投資を実施しているが、GDPの増加は見られない。独立投資というより維持補修・更新・合理化などの投資が中心で現状生産を維持するのに精一杯なのだろう。にもかかわらず政府は、10兆円の設備投資実施を経済団体に要請している。民間企業の自主的決定なら喜ばしいが、政府との取引で行うなら単なる投資の前倒しか過大投資でしかない。
2015/11/09
敗戦後70年を考える「当世風経済方針づくりと敗戦後経済計画懐古」
 戦後の日本では、「経済復興5カ年計画案」(1948年)など早くから長期の経済計画が政府で検討されていた。その後は、池田勇人内閣の「国民所得倍増計画」(60年)などを経て、小渕恵三内閣の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(99年)まで14回にわたり改正されている。指示的計画(Indicative Planning)と呼ばれるこれらの経済計画は、価格メカニズムの市場を尊重するところに特長を持ち、政治家の思いつきが検証される機会にもなった。一方、小泉純一郎内閣の「骨太の方針」(2001年)や鳩山由紀夫内閣の「新成長戦略」(09年)では、経済方針を前面に打ち出したものの、その作成過程における議論の根拠や裏づけが、示されなかった。「3本の矢」と呼ばれた安倍晋三内閣の経済政策も2年が過ぎて、その転換が迫られている。今こそ「経済計画策定過程の重みと意義」を再評価すべきではないか。
2015/09/25
敗戦後70年を考える「経済運営再考」
 戦後日本の国内経済を振り返ると、バブル期以降30年間、安易な金融政策や意味不明の構造改革が継続し、経済成長が低下・停滞している。特に3本の矢と称されるアベノミクスは、金融緩和や財政拡大に加え、インバウンドや途上国のインフラ整備など海外需要の取り組みに活路を見出そうとしているが、継続性があるのかどうか疑問だ。戦後日本の経済成長は、「自国土で自国民が創意工夫により経済を築いてきた」と池田内閣時代に所得倍増計画を設計した下村治博士は述べていた。今必要なのは成長期待ではなく、均衡のとれた健全な経済の姿ではないか。
2015/08/10
敗戦後70年 「沖縄を考える」 
 戦後の日本は、日本国憲法を基本に据える一方、外交では、日米安保条約と日米地位協定を受け入れた。言い換えれば、日本は条約に基づき米軍に基地を提供し、また米軍人に特別な法的地位を容認し、安全保障を託している。その状況の中、沖縄が基地問題で揺れている。沖縄の要求は明確だ。①米軍基地の整理・縮小、②基地負担の公平、③基地経済からの脱却・自立、④日米地位協定の改定などである。日本の安全保障、沖縄の歴史的経過とその負担から見て、日本国民・政府はどう考えいかにすべきだろうか。
2015/06/29
日本国憲法改正への挑戦
 1951年のサンフランシスコ講和条約締結後、日本国内では、保守系の自主憲法制定願望による「改正論」と、革新左派による「改正反対論」が対立してきた。しかし、最近になり新たな挑戦者が出現してきた。隣国の中国である。覇権・大国主義は、領土や領海の拡張を促すもので、ポツダム宣言を否定すると日本国民は始めている。どう対応すべきか。例えば、「中国に日本国憲法の趣旨を尊重してもらう」「時限修正条項を憲法に追加する」「同盟国である米国の外交・抑止力に依存する」などの選択肢がある。どれが正しいとはいいきれないところが悩ましい。
2015/05/18
敗戦後造られた日本の理念、平和主義だけでよいのか
 かつて米国の政治学者と国の理念について話したしたことがある。その時彼は米国の理念について、「地方自治・人権・社会貢献」と答えた。それに対し、日本の理念について「平和」だと答えようとしたら、その言葉のあいまいさに気付いたそこに暮らす人々の状況と関係なくどのような国家体制でも使用できるからだ。ある思想家は、戦後日本が作った理念を「平和主義」とした上で、「日本人は、欧米のように理念対理念の対決を好まないのではないか」と述べた。グローバル社会で行動するなら、日本は「平和主義」と言うばかりではいけないだろう。
2015/03/30
敗戦後70年を考える
 1995年、当時の村山富一首相が発表した「村山談話」に続き、安倍晋三首相は、ひとつの節目として、「安倍談話」を検討中だ。敗戦後日本の指導者は、連合国の記者から「軍需資源、国富の点で米英にかなわないにもかかわらず、進んで敵を知ろうとせず、こうすればこうなるという“科学的な頭”を持っていなかった」と指摘された。エネルギー問題はどうか。一部学者・マスコミも含めて無資源国であるにもかかわらず、供給先やコストを軽視し政策的に自由な選択可能という発想が目立つ。指導者を含めた日本人の「科学的精神」をもう一度見直さなければならない。