飯倉 穣 エコノミスト
1947年生まれ。経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。鹿児島市中心市街地活性化協議会会長、鹿児島商工会議所参与。著書に「石油危機から30年」「あえて言わせてもらえば」「電力」など。
金融検査マニュアル見直しを考える (2017/08/21)

 金融検査マニュアル廃止観測報道があった。「金融庁強権を封印 検査マニュアル廃止 銀行の攻めの融資を促す」(日経2017年6月9日)である。今後の展開を金融庁に問い合わせても、金融庁新着情報をご覧くださいとつれない。
 近時金融庁は、金融機関に積極的な融資を求めている。例えば銀行がミドルリスク先や創業支援に注力する、本業支援や事業再生支援を強化、資金需要に迅速に対応する取組みを評価する(6月地銀協等意見交換会など)。そこに金融機関の積極姿勢を誘導したい金融行政がある。その一環として金融モニタリングの検討、とりわけ金融マニュアルの再吟味がある。その見直しは必要であろうか。

 銀行経営を監視する金融マニュアルは、金融監督庁で1999年制定された。平成バブル崩壊後98年に金融破綻があった。大蔵省の銀行行政に不信を来した。金融マニュアルは、私企業である銀行の自己責任原則と市場規律導入を標榜した。それにより金融行政の信頼回復、不良債権問題解決、利用者保護の最低基準設定を狙った。その後日本の金融機関は存続をかけた合従連衡などの紆余曲折を経て健全化に近づく。そして2008年リーマンショックでも欧米と違い大きな金融不安を生起しなかった。

 13年来アベノミクスが進行中である。大胆な金融緩和、機動的な財政支出、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を政策手段とし、名目成長率3%程度(10年間平均)、実質成長率2%程度を目指している。13年4月以降日銀は、金緩和策として長期国債等の買入拡大とマイナス金利導入を進めてきた。

 金融緩和の効果はどうか。日銀勘定のみ肥大している。国債・株等資産の大量買い入れで日銀の貸借対照表は資産502兆円(17年6月末)と12年末の3.2倍である。国債保有高は427兆円(3.8倍)、負債の日銀当座預金は362兆円(7.7倍)である。マネタリーベース (日銀券・貨幣・当座預金)は468兆円(3.4倍)となった。日銀の蛸踊りである。
 もちろんこの間金融機関の貸し出しも総貸出残高で1年間当たり約3.0%と増加している。増加内容をみると、製造業で微増、非製造業とりわけ不動産業などの増加が目立つ。また緩和マネーの一部が証券市場などに流れ資産価格の上昇と若干の経済膨張を齎(もたら)しているが、初期の目論見を達していない。企業と金融機関の行動に日銀金融政策の限界を見る。

 現状の金融環境はどうであろうか。借り手サイドから見れば、金融緩和が進んでも、借りやすいかと問えば、否定的に答える企業が多いであろう。法人の3分の2は、税金を納めていない欠損法人である(14年度)。金融機関から見れば、融資に工夫を要することが多い。

 この状況を受け、政府は16年6月「日本再興戦略2016」で成長資金の円滑な供給を謳った。金融庁は、金融モニタリング有識者会議報告書「検査・監督改革の方向と課題」(17年3月)をまとめた。報告は、金融検査の有様の変更を示唆する。個別融資査定重点から金融機関の判断の尊重、事業を見た融資の推進で融資の増加を狙っている。

 過去金融マニュアル制定で、収支・財務内容の芳しくない企業は、金融面から事業の継続性を問われた。旅館などの地方企業は、常に青息吐息の経営である。民間金融は、元本転がしで事業存続を支えた。それが突然合理的な償還期間の設定を求められたらどうなるか。金融マニュアルは、多くの雇用を抱え、頑張っている企業を見捨て、地方に過酷な状況を作り出した。為政者・政府の経済財政金融政策の失敗が、真面目に細々と事業を継続している企業に多大な影響を与えた。
 金融マニュアルを廃止しても、過去のバブル経済の失敗を経験した経営者・金融機関なら姿勢を変えないであろう。経営者が、金融緩慢だからと国の政策・銀行に同調したならば、同じ過ちの繰り返しとなる。

 金融機関は、保守性、中立性、安定性が基本である。そして収益の中でリスクテークやお互いの負担で企業を支えていくことが重要である。金融行政に必要なことは、金融機関の信用供与で融資企業の自立自営尊重、低収益性容認、地域性配慮、収益見合いのリスクテークか否かなどを確認することであろう。今は経済非常時でない。徒(いたずら)にマニュアル変更に拘泥せず、金融緩和時は冷静に対応すべきである。
記事一覧
2017/11/13
人づくり革命を考える
 現在の日本経済は、米国と比べて先行きに不安感がある。これは、日米の大学格差に起因するのではないか。明治以降の日本の教育制度は、読み書きそろばんができる良き労働者の排出と、良き翻訳者の育成に貢献し、うまく機能した。一方、米国では、1980年代に、次の世代が前の世代より貧しくなるという見方が支配した。その時、大学が米国を再建すると主張した。大学は、最も国際競争力のある産業だからだ。翻って日本はどうか。構造改革の一環としての独立行政法人化は、大学人のモチベーション低下を生んだ。大学は実学に遠く、役立たないという評価もある。
2017/10/10
国難突破解散と財政問題を考える
 安倍首相が衆議院の解散にあたり述べた「国難」のひとつに、財政問題がある。財政金融政策や輸出関連設備の投資などにより経済は好調だが、財政赤字は縮減せず、国債残高が累積しているからだ。現実の成長率ならば、財政再建には、30兆円超の増税か歳出削減が必要だ。各党は、選挙公約としてそれぞれの財政再建策を掲げる。しかし、予算改革や税金の有効利用など、国民に耳当たりのよいものばかりが強調され、経済の基本である財政均衡は軽視されている。
2017/09/19
概算要求基準を考える
6月に公表された政府方針では、GDP600兆円と、2020年度の財政健全化目標が掲げられている。歳出面では、ワイズスペンディング(賢い支出)やインセンティブ強化を、歳入面では、民間シェア向上による課税ベース拡大、税制の見直しを図るようだが、いずれも効果は疑わしい。これまでさまざまな内閣が財政再建に取り組んできたが、オイルショック以降の内閣で唯一成果を出したのは鈴木善幸内閣のときだろう。なぜなら、鈴木内閣には財政危機の認識があり、シーリングを徹底して行ったからだ。
2017/08/21
金融検査マニュアル見直しを考える
6月9日の日本経済新聞で、銀行経営を監視する「金融検査マニュアル」を廃止するという観測記事が掲載された。金融マニュアルは1999年に制定され、金融行政の回復や不良債権問題解決などの役割を担った。その一方で、多くの雇用を抱え、頑張っている企業を見捨て、過酷な状況を作り出した。とはいえ、金融マニュアルを廃止しても、過去のバブル経済の失敗を経験した経営者・金融機関なら、大きく姿勢を変えることはないだろう。そうすると同じ過ちが繰り返されることになる。
2017/07/18
コーポレート・ガバナンス(企業統治)を考える
 最近、コーポレートガバナンス(企業統治)議論の一つとして、相談役・顧問制度の透明化を求める報道が増えている。本来企業統治とは、会社の経営を監視するのが本来の目的のはずだ。しかし、今では相談役・顧問制度の透明化を求めることが、民間経営に対する政府の介入糸口になっているように見える。本来企業の基本は自立自営にあるはずだ。企業組織・行動は、会社法、企業会計原則、税法などの周知・遵守で十分である。
2017/06/19
教育無償化を考える
 教員無償化の話題が増えてきている。教育に対する介入は、どれほど必要なのだろうか。教育の機会については、私学を中心とした市場に任せるという議論がある。しかし、教育費に対する対価は、ビジネスと違い費用回収が難しい。また、子どもは、どのような境遇であっても、教育を受ける権利がある。何かしらの政府介入は必要だ。政府の試算によると、幼児教育から高等教育まで含めるとその費用は5兆円強かかるという。財源は、税、保険、国債、休眠預金を活用するらしい。政府はまず、どこに財源を投資するか優先順位をつけるべきである。
2017/05/22
人手不足を考える
 今年に入り「人手不足」という言葉がマスコミでよく取り上げられるようになった。歴史をたどると日本は2つの時期で人手不足を経験している。1つ目は高度成長が一段落した1970年代。生産性の高い製造業が、労働力を吸収し、低生産性部門からの人口移動を促した。2つ目は、80年代前半のバブル形成期。財政拡大・金融緩和政策により、設備投資が加速し、85年以降経済が膨張した。一方、13年1月から続いているアベノミクスによる景気拡大策では、雇用増加の8割が非製造業で、非正規の職を得ている。生産性の高い分野での雇用拡大がないのが特徴だ。
2017/04/17
海外企業買収(東芝問題)を考える
 東芝によるWH買収の判断で、多数問題が指摘されている。核心はWHの債務保証だろう。保証を求められれば、当然何かおかしいと本来は感じるはずだ。この甘い判断の原因には、経営者、働く人の意識の問題があるのではないか。民間は、商品サービスの提供で代金という形で自分の稼ぎを得る。故に苦労も多い。しかし、企業が成熟していくとその原点を忘れがちになる。自分の金を自分に使えば、節約して効用の最大を狙う。しかし、他人の金を他人のために使えばどうか。節約不明、効用不明となる。つまり「福祉の欺瞞(ぎまん)」が経営者や働く人に忍び込むのである。
2017/03/13
働き方改革の淵源を考える
 安倍内閣が2016年に示した「ニッポン一億総活躍プラン」では、「高齢者雇用の促進」、「非正規雇用労働者の待遇改善」、「最低賃金引上げ」などを掲げている。しかし、この改革は、労働者に一定の光明を与えるとしても、雇用の根本である企業の発展にどの程度貢献するか不明である。必要なのは、働きを通じて物真似を超え新しいものを創造する人材の醸成ではないか。
2017/02/06
トランプノミクスの雇用第一を考える
 安倍晋三首相が1月20日に行った施政方針演説とトランプ政権の方針を比較してみた。「偉大な国」と「輝く日本」、雇用確保、成長志向。目標はおおむね一緒である。しかし、貿易は二国間FTAか多国間かで若干ニュアンスが違う。最近の思潮である「新自由主義」は市場重視・競争で多くの企業・雇用を不安定にして、それをバネに企業・労働者の活力を高め経済活性化を狙って来た。トランプ政権の雇用第一は、米国の新自由主義の流れを変えるであろうか。
2017/01/05
2017年度政府予算案を考える
 昨年12月、政府は17年度政府予算案を閣議決定した。歳出は97.5兆円で今年度当初予算比0.76%増である。報道によれば特会からの繰入でその他収入を積み上げている。かつ税収の前提が、来年度経済成長率が実質1.5%名目2.5%と高め設定である。これらを考えれば、歳入見積もりを額面通りに受け取れない。財政の基本的考え方は、財政支出のうち経常支出を税収で賄うことである。これは経済の原理、財政の基本原理である。
2016/11/28
トランプ新大統領の経済政策の行方を考える
 現在の米国経済は、リーマンショックからの回復過程がほぼ終了した段階に差しかかっている。今後の景気は、ピーク越えか景気下降局面のどちらかになるだろう。トランプ氏の政策は、雇用確保で移民抑制、輸入抑制、減税、インフラ投資拡大、金融緩和に動くと推察される。しかし、このような財政金融頼りの経済膨張政策は適当なのだろうか。かつてのレガーノミクス(大減税・規制緩和・金融引き締め)やジョージ・W・ブッシュ経済政策(減税・イラク戦争・金融緩和)の再来にみえてしまう。
2016/10/24
お呪(まじな)い的金融政策を考える
 過去3年間の金融政策をみると、為替安、金利低下、株式などの資産価格の上昇をもたらしたが、経済全体で捉えると、生産面は微増から停滞、民間企業設備投資は微増から横ばい、住宅投資はやや増加、輸出は微増だった。この間の実質GDPの伸びは平均0.6%だったが、これは補正予算を含めた財政支出の効果が大きい。つまり、金融政策の経済全体への波及効果はわずかしかなかったことになる。
2016/09/20
消費拡大・景気浮揚・経済成長を考える
 消費拡大、景気浮揚、成長実現とはどのようなことを言うのか。減税などにより短期的に消費拡大で景気浮揚は可能である。しかし長期的には継続が困難である。これは消費が所得に依存するためである。つまり消費は、所得の結果といえる。貯蓄の取り崩しや借金で消費を行うことはできるが、一時的で限度がある。自分の所得以上の消費は長期的に継続できない。故に消費で成長実現は困難である。
2016/08/08
アベノミクスふかし大規模経済対策を考える
 参院選後安倍晋三首相は、28兆超の経済対策を打ち出した。今回の経済対策は、大規模な財政出動で景気の下支えを本格化する狙いがある。ひとつは、当面の需要不足を埋め、回復すれば、財政支援なしで成長軌道にのせる所得ターゲット政策であり、もうひとつは、技術開発ベースの民間投資である。それゆえ、一定期間の経済引き上げ効果(膨張)が期待でき、成長が続けば「呼び水」効果となるだろう。一方、低成長にとどまるなら、「乗数」効果に帰結せざるを得ない。
2016/07/04
消費増税再々延期発言を考える――政策転換は引き際が大切――
 安倍晋三首相が示した新しい判断「消費増税の2年半延期」について大方の国民は、「財政不安は残るが、増税延期に一安心といったところだろう。ただ問題もいくつかある。1つめは、政治的な空言だ。財政運営は政治家の影響があるため、通常は政策の変更は行わないものである。2つめは、安倍首相や政府の経済の捉え方だ。現状はバブル崩壊の前兆か通常の景気後退局面のはずだ。成長が見込めない下でアベノミクスを最大限にふかすのは、バブルを再現になりかねない。
2016/05/30
日本の通貨体制を考える
米国を中心に為替相場は、市場が決める、市場任せにすべきだという主張がある。一方変動相場制では、通貨政策は国内問題である。国内通貨政策の結果、物価変動などで相場が変動することは受容される。他方、行き過ぎには国際的あるいは一国の関与がしばしば認められる。各局面で対応の考えが異なる。根底には過去の経験から通貨安競争は望ましくないという基本理念がある。
2016/04/18
サミット経済宣言の陥穽を思議する
 3月に行った日米首脳会談でオバマ米国大統領は、5月に開かれるG7伊勢志摩サミットを見越し、安倍首相の主導力に期待すると述べた。そんな中、日銀の3月短観が2年9カ月ぶりの景況感悪化を伝えた。日本経済の景気は漂流しているのである。政府は3月に過去最高額となる96.7兆円の予算を成立したが、その後も前倒し執行や「商品券配布」など財政出動を検討していると聞く。財政金融政策で経済水準を押し上げた分、すでに資産価格バブルや設備過剰が起こっている可能性がある。ただ、それでも金融機関の健全性が維持されれば、予想景気の範囲内に収まる。その場合政府は静観したほうが良いといわれている。各国経済は、その国の責任で運営することが基本である。
2016/03/14
日本経済の健全性を考える
 2月19日、野田佳彦前首相と安倍晋三現首相の国会質疑があり、経済認識と政策に係る見解を相互に披露した。その時の両者の認識は、共に成長力を高める工夫が必要ということだった。近頃の政治家は、経済成長を過度に重視し、経済変動(景気変動)や経済のパフォーマンス(経済の健全性)を軽視する傾向にあるのではないか。経済成長は技術革新をベースとした民間設備投資が前提にあるので、短期・中期的な施策で結果を期待してはいけない。
2016/02/08
財政規律を考える
 2016年度予算の国会審議が始まった。政府は、赤字国債を5年間自動発行延長出来る特例公債法案を今国会に提出するという。現在の財政状況下でこのような政策・法律の提案は妥当なのであろうか。消費税率引上で国民負担を求めることに加え高水準の国債依存継続という状況を斟酌すると、歳出拡大は不適切だ。長期にわたる公債依存度も、緊急対策、不況対策の位置づけを越えており、日本の財政運営に不健全性・違和感を覚える。先進国では見られない常軌を逸した財政運営が継続している。
2015/12/21
敗戦後70年を考える「経済成長~現実直視こそ肝要~」
 安倍晋三首相は、9月に行った演説で「2020年に名目GDP600兆円」を目指す目標を掲げた。果たして可能なのか。現在民間企業は約70兆円の設備投資を実施しているが、GDPの増加は見られない。独立投資というより維持補修・更新・合理化などの投資が中心で現状生産を維持するのに精一杯なのだろう。にもかかわらず政府は、10兆円の設備投資実施を経済団体に要請している。民間企業の自主的決定なら喜ばしいが、政府との取引で行うなら単なる投資の前倒しか過大投資でしかない。
2015/11/09
敗戦後70年を考える「当世風経済方針づくりと敗戦後経済計画懐古」
 戦後の日本では、「経済復興5カ年計画案」(1948年)など早くから長期の経済計画が政府で検討されていた。その後は、池田勇人内閣の「国民所得倍増計画」(60年)などを経て、小渕恵三内閣の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(99年)まで14回にわたり改正されている。指示的計画(Indicative Planning)と呼ばれるこれらの経済計画は、価格メカニズムの市場を尊重するところに特長を持ち、政治家の思いつきが検証される機会にもなった。一方、小泉純一郎内閣の「骨太の方針」(2001年)や鳩山由紀夫内閣の「新成長戦略」(09年)では、経済方針を前面に打ち出したものの、その作成過程における議論の根拠や裏づけが、示されなかった。「3本の矢」と呼ばれた安倍晋三内閣の経済政策も2年が過ぎて、その転換が迫られている。今こそ「経済計画策定過程の重みと意義」を再評価すべきではないか。
2015/09/25
敗戦後70年を考える「経済運営再考」
 戦後日本の国内経済を振り返ると、バブル期以降30年間、安易な金融政策や意味不明の構造改革が継続し、経済成長が低下・停滞している。特に3本の矢と称されるアベノミクスは、金融緩和や財政拡大に加え、インバウンドや途上国のインフラ整備など海外需要の取り組みに活路を見出そうとしているが、継続性があるのかどうか疑問だ。戦後日本の経済成長は、「自国土で自国民が創意工夫により経済を築いてきた」と池田内閣時代に所得倍増計画を設計した下村治博士は述べていた。今必要なのは成長期待ではなく、均衡のとれた健全な経済の姿ではないか。
2015/08/10
敗戦後70年 「沖縄を考える」 
 戦後の日本は、日本国憲法を基本に据える一方、外交では、日米安保条約と日米地位協定を受け入れた。言い換えれば、日本は条約に基づき米軍に基地を提供し、また米軍人に特別な法的地位を容認し、安全保障を託している。その状況の中、沖縄が基地問題で揺れている。沖縄の要求は明確だ。①米軍基地の整理・縮小、②基地負担の公平、③基地経済からの脱却・自立、④日米地位協定の改定などである。日本の安全保障、沖縄の歴史的経過とその負担から見て、日本国民・政府はどう考えいかにすべきだろうか。
2015/06/29
日本国憲法改正への挑戦
 1951年のサンフランシスコ講和条約締結後、日本国内では、保守系の自主憲法制定願望による「改正論」と、革新左派による「改正反対論」が対立してきた。しかし、最近になり新たな挑戦者が出現してきた。隣国の中国である。覇権・大国主義は、領土や領海の拡張を促すもので、ポツダム宣言を否定すると日本国民は始めている。どう対応すべきか。例えば、「中国に日本国憲法の趣旨を尊重してもらう」「時限修正条項を憲法に追加する」「同盟国である米国の外交・抑止力に依存する」などの選択肢がある。どれが正しいとはいいきれないところが悩ましい。
2015/05/18
敗戦後造られた日本の理念、平和主義だけでよいのか
 かつて米国の政治学者と国の理念について話したしたことがある。その時彼は米国の理念について、「地方自治・人権・社会貢献」と答えた。それに対し、日本の理念について「平和」だと答えようとしたら、その言葉のあいまいさに気付いたそこに暮らす人々の状況と関係なくどのような国家体制でも使用できるからだ。ある思想家は、戦後日本が作った理念を「平和主義」とした上で、「日本人は、欧米のように理念対理念の対決を好まないのではないか」と述べた。グローバル社会で行動するなら、日本は「平和主義」と言うばかりではいけないだろう。
2015/03/30
敗戦後70年を考える
 1995年、当時の村山富一首相が発表した「村山談話」に続き、安倍晋三首相は、ひとつの節目として、「安倍談話」を検討中だ。敗戦後日本の指導者は、連合国の記者から「軍需資源、国富の点で米英にかなわないにもかかわらず、進んで敵を知ろうとせず、こうすればこうなるという“科学的な頭”を持っていなかった」と指摘された。エネルギー問題はどうか。一部学者・マスコミも含めて無資源国であるにもかかわらず、供給先やコストを軽視し政策的に自由な選択可能という発想が目立つ。指導者を含めた日本人の「科学的精神」をもう一度見直さなければならない。