日本は取り残されるのか? (2014/07/07) | |
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周知のように、3.11後の日本の天然ガス(LNG)輸入価格は世界一高い。本年4月の平均価格は、百万BTU当たりで16.88ドルと、同時期の中国のLNG輸入平均価格11.5ドル、パイプライン輸入平均価格9.6ドルと比べて5割前後も高く、同時期の西欧諸国の天然ガス輸入平均価格である10ドル前後と比べても5割も高い。 なぜ、世界一高いLNGを買う羽目に陥ったのか? 日本の買い手が、石油価格準拠の長期購入契約を漫然と続けてきたツケが、11年以降の石油価格高騰によって回ってきた様相が強いものの、やはり、3.11後に原発を突然、無計画に全停止させたことが、売り手側を強気にさせたことも大きい。原発全停止によって、その欠落分をLNGのスポット・短期契約ベースで急きょ手当てせざるを得なくなり、LNGのスポット・短期契約価格を自ら大きく引き上げてしまい、長期契約の価格フォーミュラを欧州並みへ見直すことが不可能になった。 何しろ、原発代替の緊急LNG追加購入量は約年間2000万トンと、世界全体のLNGスポット・短期市場規模の3~4割にも達し、価格急騰は必然だった。一方、現状の中国のLNG輸入平均価格が日本より5割も安いのは、主にLNG価格が上昇する前に契約した長期契約物が大半を占め、最後に契約したカタール産LNGの長期契約価格が日本向け同様に非常に高いものの、それ以降のアジア・プレミアム価格の新規長期契約物にはほとんど手を出さなかったからである。 しかし、ここ1カ月ほどで、新規長期契約物のアジア・プレミアムの潮目がはっきり変わってきた。最近、中国はロシアから年間380億m3もおよぶ大量のパイプライン経由の天然ガスを輸入することで合意したが、その価格は欧州の輸入価格並みの10ドル前後と推定される。これは、最終的にロシアのウクライナ問題での躓きをタイムリーに突いた、中国側買い手の10年越しのハードネゴの驚異的粘り腰の勝利だ。 これをてこに、中国の買い手は、今度はメジャーズの一角、BPから新規の長期LNG輸入契約で、やはり欧州並み価格を獲得した。これで、中国はアジア・プレミアムのガスは買わない姿勢を更に明確にした。今後、アジアの新規長期契約は、この2件が標準参照価格となるだろうし、インドもアジア・プレミアムを回避するため、既に新たな調達戦略を実施中だ。日本に関しては、原発の無計画な全停止が長引き、かつ従来型LNG購入手法を革新しなければ、この新たな潮目から取り残され、日本経済は一層危うくなる。 |
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