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最首 公司 エネルギー・環境ジャーナリスト |
東京生まれ 上智大学新聞学科卒業後、東京新聞入社(のち中日新聞と合併) 主としてアラブ、エネルギー問題を担当日本アラブ協会理事GCC研究会を主宰している。 著書 『聖地と石油の王国 サウジアラビア』、『人と火』、『水素社会宣言』など。 |
東電・柏崎原発の災害対策 (2014/09/01) | |
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「これだけの装備をする必要があるのか?」・・・というのが、正直な感想だった。8月最後の週末を利用して、東京電力の柏崎・刈羽原発を見学したときのことだ。15年ほど前、全国の原発を見てみようと、北海道の泊原発から鹿児島の川内原発まで、さまざまな理由をつけて回ってみた。柏崎・刈羽では当時、温排水を利用してサカナや貝の養殖と稚魚用の餌づくりを試みていた。それを取材することを理由にした。 今回は勉強会仲間から誘われて参加した。福島第一原発事故から3年半、同じ東電が経営する柏崎・刈羽原発はどうのか、そして福島の教訓は現場でどう生かされているのか、そこを知りたかった。 まず、型通り津波対策だが、日本海に沿って5kmに達する高さ5mの盛り土が築かれた防潮堤、さらにその背後に高さ15mのコンクリート製防潮壁が、万里の長城のように聳(そび)えている。それでも、この想定を上回る津波が発電所を襲い、福島第一のように「全電源喪失」となったときに備えて、電源車23両、ディーゼル発電機を各原子炉(7基)に3基づつを配備、そのための燃料タンクを設け、注水用の消防ポンプ車42台、注水のための貯水池(2万t)と、常時満水にしておくための井戸2本を掘削・・・といった按配だ。これらを合計すると、約3000億円だという。 原発の強みは建設コストの安さにあった。福島事故が起こる前の試算では、原子力が1kw当たり35万円、石炭が23万円、石油が18万円、LNGが46万円だった。もし、上記のような津波対策を加えると、1kw当たりの建設コストは40万円になるという。加えて、原発には使用済み核燃料と処分場の問題が残されている。使用済み核燃料が再処理されてモックス燃料になるから「有価物」とされ、資産勘定に算入されるが、米国のようにワンスルーで永久処分されると、資産勘定から外され、電力会社の経営は圧迫される。青森県六ケ所村の再処理工場の操業・安全運転と永久処分場は、原発を持つ電力会社の死命を制するといってもいい。折から、中央では原発の電気料金について新エネのように保証しては、という議論がはじめられた。吉田調書も公開されるという。 福島事故当時、その吉田所長とテレビ会議で情報交換し、助言し合ったという横村忠幸所長の「中央操作室の代替施設の設置」や「緊急時は中央から現場に権限を委譲していく仕組みが大事だ」という言葉は重かった。首都直下型大地震が想定されているとき、首相官邸の代替施設や権限移譲の仕組みはできているのだろうか?時間があれば所長や従業員の話をもっと伺いたいと痛感した。 |
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