![]() |
最首 公司 エネルギー・環境ジャーナリスト |
東京生まれ 上智大学新聞学科卒業後、東京新聞入社(のち中日新聞と合併) 主としてアラブ、エネルギー問題を担当日本アラブ協会理事GCC研究会を主宰している。 著書 『聖地と石油の王国 サウジアラビア』、『人と火』、『水素社会宣言』など。 |
25%より4%が重要だ (2010/03/08) | |
---|---|
CO2の排出削減量25%達成ができるかどうかは判らないが、このところ太陽光発電がにわかに動き出した。かつては「原発1基分の発電には山手線内くらいの広大な面積が必要だ」と、太陽光発電に白い眼を向けていた電力会社までが政府に背中を押されて「メガ・ソーラー」設置に動き出した。送電の安定性を損ねると、あれほど警戒していた風力発電もやりそうだ。どうせやるなら送電線につながずに「独立グリッド」を立ち上げてもらいたい。 大の電力会社が太陽光や風力発電で振り回されるのは、なんともわびしい話だが、まぁそれはそれでよしとしよう。だが、その効果測定をもっぱらCO2削減率だけにおいているのはもっと淋しい。風力発電も水力発電も、そして太陽光発電も国産エネルギーである。わが国のエネルギー自給率が4%でしかないことはよく知られている。先進工業国でこんな低い国は韓国をおいてほかにない。低い低いといわれる食糧自給率でさえ40%である。 環境政策に押されての風力・太陽光発電も自給率で評価したらいいだろう。「メガ・ソーラー」がいったいどのくらいの自給率向上に寄与するのか、洋上風力も小水力発電もそうだ。日本のエネルギー業界は、CO2削減率よりも自給率向上にどれほど寄与するかに重心を置くべきなのだ。なぜなら、15年後の環境問題よりもいまの微小自給率こそ深刻な問題であり、加えて日本の省エネ・環境技術は自国で進めるよりも開発途上国に移転した方が地球規模でみてはるかに有効で、即効性があるからだ。 再生可能エネルギーを自給率から評価すると、原子力が圧倒的に有利になる。但し、この場合、原子力発電をリサイクル可能なエネルギー源に仕立てなければならない。つまり青森県六ヶ所村の日本原燃・再処理工場を早く立ち上げ、燃やした燃料以上の再生燃料をもたらす高速増殖炉「もんじゅ」をつつがなく運転し、使用済み燃料を長期間、安全に保管する最終処分場をつくらねばならない。電力会社がいまやることはそういうことではないのか。 2010年3月2日記 |
|