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最首 公司 エネルギー・環境ジャーナリスト |
東京生まれ 上智大学新聞学科卒業後、東京新聞入社(のち中日新聞と合併) 主としてアラブ、エネルギー問題を担当日本アラブ協会理事GCC研究会を主宰している。 著書 『聖地と石油の王国 サウジアラビア』、『人と火』、『水素社会宣言』など。 |
「アラブの春」と「日本の夏」 (2011/06/27) | |
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だいたい、「春」が喜ばれるのは長い冬があるからこそで、四季に乏しいアラブでは、季節よりもラマダーン(断食月)やハッジ(メッカ巡礼)などイスラムがらみの行事に日常生活の節目を置くのだから。 ヨーロッパ人の「春」には薫り高い花が咲き、やがて果実が熟れるときが訪れる、という期待が込められているが、「アラブの春」はまるで花の咲く気配がない。ツィッターやフェースブックで結集したアラブ大衆は「ネット・ベドイン」と呼ばれているが、ネットで呼び掛けられ、街頭に飛び出したまま政治の表舞台に立たされたものだから、政権の用意がなかった。 チュニジアではいまだに暫定政権だし、失業や物価高がいっこうに収まらない現状にさらなるデモが起きている。エジプトも今夏に総選挙、そして秋には大統領選挙という当初の予定が大幅にずれ込みそうだ。 悲惨なのはリビアである。チュニジア、エジプトのように長期独裁政権が退陣するのかとおもいきや、アラブ最長42年の政権を維持するカダフィ大佐は、欧米諸国による経済封鎖、NATO軍による空爆、盟邦アラブ諸国の反対にもかかわらず、孤塁を守り通している。「アラブの春」を信じ込んで、街頭に飛び出した挙句に政府軍の餌食になった大衆は気の毒である。 同じように33年の長期政権にあったイェメン・サーレハ大統領は、大部族の武力決起で倒されたが、欧米やNATO動いた形跡はない。その欧米諸国がリビアに介入するのは、カダフィ政権が接収した旧米空軍基地と旧英海軍基地の再確保にあるといわれている。サブ・サハラのアフリカから北上してくる中国勢を抑えるには、地中海に面したリビア軍基地が戦略上必要なのだという。 「それにしても」とアラブの友人がいった。「死に体になってもカダフィはよく粘る。国際社会が疲れるのを待っているのだろう」と。「そういえば、日本にも似たような名前の首相がいるね。カンダフィー!」。日本はそんな首相と共に節電下の「蒸し暑い夏」を迎える。 |
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