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矢島 正之 電力中央研究所研究アドバイザー |
1947年 生まれ 国際基督教大学大学院卒、電力中央研究所に入所。学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学特別招聘教授などを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力自由化」「世界の電力ビッグバン」「電力改革」など。 |
ドイツにおける再生可能エネルギー発電支援コストの増大 (2010/12/27) | |
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しかも、今後洋上風力発電の建設が本格化していくため、需要家の負担がさらに増大していくと考えられる。ベルリンにある消費者センター連合によれば、数年後には家庭の負担はkWh当たり5ユーロセントに上昇するとしている。 2011年には、ドイツの消費者は、130億ユーロを再生可能エネルギー電源の支援のために支払うことになるが、その主たる要因は太陽光発電の拡大である。太陽光発電の建設は、2010年の最初の8カ月だけで前年の50%増となっている。また、最近におけるドイツの卸電力市場EEX (European Energy Exchange)の価格低下傾向は、固定買取価格と卸電力価格の差で決められる支援のレベルを拡大させている。 ドイツでは、このような再生可能エネルギー支援コストのドラスティックな上昇で、今後の太陽光・風力発電に対する支援のあり方に関する議論が白熱化してきている。中規模産業需要家を代表するVEAは、再生可能エネルギー法の廃止、少なくともさらなる再生可能エネルギーの拡大に歯止めをかけることを求めている。また、大口産業需要家を代表するVIKは、太陽光発電の促進に制約を課すことを求めている。 このような産業からの批判に対して、連邦経済大臣は、再生可能エネルギーへの支援は、将来の技術への投資であるとし、市場の成熟化のために必要な支援であると説明している。しかし、ドイツにおける爆発的な再生可能エネルギー発電の増大は、習熟効果の外部性の名を借りた市場の障壁の除去であり、投資家が本来的に負担すべき経済的リスクを撤廃したためであることは先回のコラムで述べた。再生可能エネルギー支援を巡る議論の中で決定的に重要なのは、最終的にそのコストを負担する需要家の見解である。 需要家団体による日に日に高まる批判を考えると、ドイツにおける再生可能エネルギー電源の支援制度は、明らかに転換期を迎えたと言えるだろう。 |
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