矢島 正之 電力中央研究所研究アドバイザー
1947年 生まれ 国際基督教大学大学院卒、電力中央研究所に入所。学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学特別招聘教授などを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力自由化」「世界の電力ビッグバン」「電力改革」など。
再生可能エネルギー入札制度の効果 (2017/06/12)

 欧州の多くの国で、再生可能エネルギー電源の促進策として、固定価格買い取り制度が採用された結果、同電源は飛躍的に増大している。とくに、固定価格買い取り制度を早期に導入したドイツでは、2016年1月1日現在、再生可能エネルギー電源の導入量は、98GWとなり、電力生産に占めるそのシェアは30%となった。同国では、再生可能エネルギー電源の増大は低炭素化に貢献しているとの評価があるものの、ますます膨大となっている再生可能エネルギー電源の支援コストが問題となっている。そのため、支援コストの抑制のために、2017年から、再生可能エネルギー電力の買い取りに際して事業者に支払われるプレミアムを入札で決める制度に移行することになった。
 ネットワーク規制庁(BNetzA)は、今年4月13日に、ドイツの北海地区での洋上風力事業の入札(上限1550MW)を行い、4件が落札したが、うち3件はプレミアムゼロでの落札であった。このニュースを、電力関係者は大きな驚きをもって受け止めた。現在、洋上風力発電事業者が受け取るプレミアムは、1kW時当たり12セントだからである。落札したプロジェクトは、デンマークのエネルギー会社Dong Energyの3件とEnBWの1件である。Dong Energyは、OWP West(240MW) とBorkum Riffgrund(240MW)をプレミアムゼロで落札し、Gode Wind 3(110MW)をプレミアム6セントで落札している。また、EnBWは、He Dreiht (900MW)をプレミアムゼロで落札している。
 Dong EnergyとEnBWがプレミアムゼロで応札した理由は、まず、プロジェクトの開始時期である2024~2025年までに、発電機の一層の大型化(13~15MW)が可能となり、発電機の設置個所の減少と1基当たりの発電量の増大により、建設・運営のコスト低減が見込めることがあげられる。次に、今後建設される発電機を既存発電機とともに集中的に配置させることで、運営コストの低減が見込めることが指摘できる。さらに、規制当局は、発電機の寿命を25年から30年に延長することを認めたこともプレミアムゼロでの入札を可能にした理由としてあげられる。しかし、これらの理由があったとしても、プレミアムゼロで落札した上記のプロジェクトが実際にペイするかどうか分からない。確かなことは、ドイツでは、再生可能エネルギー電源の開発リスクを、事業者が積極的にとる例が増えてくることである。その背景には、多くの事業者は、ドイツのエネルギー転換はリスクよりもチャンスのほうが大きいと考えていることが指摘できる。そして、その経営マインドの変化には競争入札の導入が関係している。わが国でも、再生可能エネルギー電力の買い取り価格に関して、入札制度を早期に導入し、大幅な賦課金低減が実現することを期待したい。
記事一覧
2017/10/16
電力自由化と革新的サービス
 米国の電力自由化促進にあたり、グリーン電力とダイナミックプライシングがその一役を担っている。ダイナミックプライシングを提供する上で欠かせないのが、スマートメータだ。しかし、米国では電気料金への影響を考慮し設置に慎重な州も多い。インフラ構築の部分では、規制の役割は重要だ。インフラ構築に対して、効率化と投資のインセンティブを同時に付与する規制方式が求められている。
2017/09/11
米国における電気料金の動向
米国の電気料金は、1997年の小売り自由化開始以降、自由化州、規制州それぞれで値上げされ、2016年の平均は3.5セント/kWhだった。気になるのは、自由州が規制州より電気料金が高くなることだ。原因は、天然ガスの価格動向にある。例えば、卸電力市場での決済価格は、最後の落札価格であるガス火力の短期限界コストで決まるため、比較的価格は安定している。一方、規制州では、発電価格が全電源平均コストで決まる。天然ガス価格が高くなれば、自由州と規制州の料金格差はさらに広がることになる。
2017/08/07
米国の家庭用需要家は電力小売全面自由化の利益を享受しているか
家庭用の需要家は、1997年に始まった米国の小売り全面自由化で、電気料金支払額の削減を享受できたのだろうか。種々の調査では、高い料金を支払わせられている場合もあれば、削減できた場合もあるという。しかし、実際は、契約している電力会社を変更するスイッチングの削減額を正確に把握していない需要家が多いのではないか。多くの事業者は料金を割安に見せるため、様々な工夫をしてくる。そのため、それぞれの特性を理解した上でないと、本当に安くなったのかを判断するのは難しい。
2017/07/10
非化石価値取引市場
 再生可能エネルギーや原子力の環境価値を証書化して市場で取引することを可能にする「非化石価値取引市場」が、今年度から創設される。しかし、本当に必要なのだろうか。我が国では、再エネの促進策としてFITを採用している。その中でオークションなどにより年間の開発量を設定すれば、市場を立ち上げなくてもよいのではないか。世界では、環境価値の証書化と証書取引のための市場を設立するクオータ制がある。非化石価値取引市場はその一部だといえるが、一般的にFITと非化石価値取引市場双方を採用する国はない。
2017/06/12
再生可能エネルギー入札制度の効果
再生可能エネルギーの支援抑制のため、事業者が電力を買い取る際に発生するプレミアムで入札額を決めているドイツでは、最近プレミアムゼロで落札する事業者が増えてきている。実際、落札したプロジェクトがペイするかはわからない。しかし、再生可能エネルギー電源の開発リスクを事業者が積極的にとる事例が増えてきているのである。ドイツの事業者はエネルギー転換を、ビジネスに生かせるチャンスとして捉えているようだ。
2017/05/15
欧州の電気料金比較
 EU加盟国の中で家庭用電気料金を高い順番に並べると、デンマーク、ドイツ、イタリア英国となるが、租税公課を除くと、その順番が逆になり、デンマークが最も安くなる。これは、電気料金の高い国ほど電気料金に占める租税公課の割合が高いからで、デンマークでは7割を占めている。また、租税公課は、再生可能エネルギーの賦課金とも相関関係があり、電気料金を上昇させている。
2017/04/03
電力小売り全面自由化の成果
 電力小売りが開始されてから1年が経過した。とはいえ、家庭用需要家による供給事業者の変更率は、約5%程度と低いままだ。そもそも家庭用需要家は電気料金の節減意識が高い産業用需要家と違い、普段の生活で電気を意識していないし、電気料金メニューの情報を積極的に得ようとしない。仮に600円程度の節約であれば、変更を考える需要家はあまりいないだろう。欧州では、家庭用需要家の変更を促すため、需要家への電気料金節減情報の提供や変更時に発生する取引コストの低減などが実施されている。
2017/02/20
料金値下げ競争
 ドイツは1998年に電力の自由化に踏み切り、その1年後には大手電力会社間で需要家獲得のための料金値下げ競争が激化した。しかし、家庭用の需要家の変更率は5%にとどまった。メニュー変更にかかるコストが、料金支払いの削減よりも大きかったからである。料金の引き下げで財務が悪化した電力会社は、2000年ころから設備投資コストを補うため、料金の引き上げに踏み切り、最近まで料金は上昇し続けている。料金値下げ競争がお互いに利益にならないことが分かったドイツの電力会社は、その後値下げ競争を行っていない。
2017/01/23
東電の再編
 経済産業省の有識者会議は昨年12月、東京電力の原子力事業や送配電事業の他社との再編・統合を盛り込んだ提言をまとめた。福島第一原発の事故処理費用を捻出するためである。しかし、事業の再編や統合は、本来電力会社の経営判断で行われるものである。例えば、巨額の資金を要する原子力発電所の建設は、共同事業で行うほうが確実だ。問題は、東電との再編・統合にメリットを見出す電力会社はいるのどうかだ。
2016/12/19
ドイツにおける電力会社の組織再編
 原子燃料税の導入や卸電力価格の低下による火力電源の収益減により、ドイツの電力会社E.ON・RWEの経営が悪化している。これに伴いE.ONは火力やトレーディングの不採算部門を分社化した。一方RWEは、成長部門である再生可能エネルギー、配電、小売り部門を分社化した。両社の再編について市場関係者は、「エネルギー転換に向けて舵が切られた」と歓迎している。市場関係者の評価は、RWEの方が高かった。
2016/11/14
グリーン電力
 欧州では、再生可能エネルギー100%のグリーンラベルが増大しているという。例えばドイツにおけるグリーン電力の需要家は、2008年の5%から13年には17%まで増加した。背景には需要家の環境意識もあるが、再生可能エネルギーの電気が比較的安価に提供されたこともあげられる。再生可能エネルギー電力の価格が高ければ、それを購入する需要家の数は限定的かもしれない。しかし、値ごろ感が増せば、購入する需要家は急速に増えてくる可能性がある。
2016/10/11
家庭用需要家と供給事業者の変更
 4月に日本で始まった家庭用電力自由化の傾向をみると、供給事業者を変更(スイッチング)した世帯はわずか3%。いまだに供給先の変更に慎重な需要家の姿が浮かび上がる。ならば、日本より一足早い2007年に全面自由化を実現したEU諸国はどうか。自由化から7年経った14年でも6%強に過ぎない。その中でドイツはスイッチングした世帯が24%、同一電気事業者内での料金変更(インターナルスイッチング)を行った世帯は43%にのぼった。新規参入者と比べ従来の電力会社が依然高いブランド力を有していることや、供給事業者変更のメリットが小さいことを考えると、今後日本でも、インターナルスイッチングが進展していく可能性がある。
2016/09/05
英国における電力自由化の問題点と改善策
 英国では2004年に、国内の6大電力会社が発電市場の70%、小売り市場の90%を占める「ビッグ6」体制が誕生したが、その後電気料金が上がり続けたため、ビッグ6が市場支配的な料金設定をしているのではないかという疑念が浮かび上がった。これを受け規制当局が14年に調査を行ったところ、ビッグ6は、卸市場よりも家庭用需要家に対して支配力を持っていることがわかった。この問題を解決するため規制当局は、一社あたり提供できる料金メニューを4つに限定している規制を撤廃するなどして企業間競争を促そうとしているが、供給事業者の変更を促すのが目的になってしまったり、一部需要家の保護になってしまったりすると、規制の失敗につながりかねない。
2016/06/20
シュタットベルケの破綻
 ドイツでは、既に電力・ガス分野が自由化され、競争が導入されているが、いまだに多くの需要家は、シュタットベルケ(ドイツの自治体企業)から供給を受けている。これは、経営が苦しくなっても自治体がどうにかしてくれるだろうと需要家が捉えていることなどが原因だが、その「神話」を覆す事件が2014年に起こった。チューリンゲン州ゲーラ市のシュタットベルケの破綻である。原因は、再生可能エネルギーの増大によるもので、コージェネレーション設備の卸価格の低下や、配電線の増設などが経営を圧迫した。ドイツでは、ゲーラ市のケースは氷山の一角に過ぎないと見られている。
2016/05/16
小売り電気事業者選択の落とし穴
 電力の小売り全面自由化が始まる前の2月、全国の自治体や公官庁などの高圧需要家と契約している日本ロジテック共同組合が、資金繰りの悪化から事業者登録申請を取り下げた。このような出来事は、家庭の需要家にとって他人事ではない。20年近く前に全面自由化したドイツでは、一括前払いを前提に低価格で電力を供給する新規の小売り電気事業者が、大手でさえ破綻することがあった。最近では、ドイツの消費者団体が、家庭用の選択で普及している比較サイトに「選択の罠」が潜んでいるとして、その評価を始めた。日本も今後そのような様態になっていくだろう。
2016/04/04
全面自由化と電気料金
 欧米諸国では、自由化後に電気料金が上昇したが、それには地域特有の背景があった。欧州は、再生可能エネルギーに関わる租税公課や送電設備の新増設コストの増大が顕著で、天然ガス卸価格の減少さえも凌駕する額だった。米国は、シェールガスの大量生産で卸価格を下げたものの、風力発電を中心とした再生可能エネルギー電源の導入増で、電気料金が上昇している。日本では最近、再生可能エネルギーの支援コストや系統運営コストが増え続けている。これらのコスト増大は、燃料費の下落や自由化の恩恵さえも打ち消すかもしれない。
2016/02/29
英国電気事業の競争評価
 英国の家庭用小売り市場では、その90%をE.ON UK、EDF、Centricaなど大手電力会社6社(ビッグ6)により占められている。そのため電料金が値上がりすると、ビッグ6が共謀し、市場支配的な価格設定をしているのではないかと言われてきた。しかし、昨年7月に公表された規制当局OFGEMの報告では、ビッグ6の発電部門は市場支配力を有しておらず、小売り部門が料金改定で共謀している証拠もない。むしろ、発電と小売りの一体化は、価格変動リスクをヘッジするもので、利益は消費者に還元できるとしている。日本で電力自由化といえば、寡占化と料金値上げによる失敗例のように取り上げられるが、英国の場合は違う。競争は有効に機能していると評価すべきだ。
2016/01/18
電力自由化と安定供給
 ドイツ政府は昨年7月に提出した白書で、電力市場においては、容量市場を導入しなくても、電力量市場(スポット市場)の価格メカニズムなどの活用により、安定供給を確保できるとの見解を述べている。これは、ドイツが国際連系線で欧州最大の容量を持ち、かつ発電の余剰設備も十分にあるからだ。また、今後余剰がなくなった場合でも、電力量市場や需給調整市場、インバランス決済制度が十分機能すれば、容量確保のインセンティブが働き安定供給が維持できるとしている。これは、価格シグナルで投資のインセンティブが左右されることを意味する。
2015/11/30
成長戦略
 安倍晋三首相は9月、1億総活躍のもとで名目GDP600兆円、出生率1.8、介護離職率ゼロの政策を表明した。 その中心にあるのが名目GDP600兆円だが、本当に100兆円の付加価値を生み出せるのか。過去20年のGDPをみると、年平均の実質成長率は1%弱にとどまっている。物価上昇目標2%が2016年から達成されたとしても、20年の名目GDPは、580兆にとどまる。日本の成長率を底上げしていくためには、日本の良さや強みを再発見し、これを競争力アップにつなげていかなければならない。
2015/10/19
日本型電力自由化
 2016年4月に導入される電力全面自由化では、「小売り競争」に日本的な自由化のあり方をみることができる。例えば、新設される小売り電気事業者は、ポイント制やセット販売、ホワイトラベルなどのサービスを活用し、顧客を囲いこもうとしている。これは、電力自由化で先行している欧米でも取られている戦略だ。ただ、欧米の企業は、小売りの競争よりも、同業者あるいは異業種間のM&Aを積極的に採り入れた。いわば「規模の経済」や「範囲の経済」を実現する手法で、電気料金の低下と企業の利益を同時に享受できるからだ。囲い込みだけでは、企業にとって利益が減少するだけではないか。
2015/08/31
市場自由化の規制コスト
 2016年4月から、電力小売りの全面自由化が始まる。自由化が広まれば、事業者間の競争が活性化することで、電気料金が下がると期待されているが、自由化に伴うコスト増も勘案しなければならない。たとえば4月に業務を開始した「電力広域的運営推進機関」。全国規模の需給調整を行うため、以前の「電力系統利用協議会」よりも、系統運用コストが上昇しないだろうか。9月に発足する「電力取引監視等委員会」の役割は、公正取引委員会が扱う範囲と重なる部分はないだろうか。自由化を機能させるための規制は必要だ。しかし、規制は、独占分野である系統への公平なアクセスを確保するだけに留めなければならない。
2015/07/21
再稼働をストップすればわが国は安全か?
 福島第一原発を機に、我が国は、原発再稼働反対の声が多くなった。その影響は他国にもおよび、ドイツ、イタリア、スイスが原発の廃止を決めた。特にドイツでは、原子力発電の代わりに、再生可能エネルギーを大幅に増やしているが、その結果電気料金は上昇し、周辺国の原発による電力がドイツに輸入されている。一方途上国では、原発推進の姿勢に変化がない。我が国は原子力の技術面で優位な立場を有しているのだがら、周辺国への技術協力を通じてこれらの国々の安全性を向上させた上で、国内でも最高水準の安全性を確保しつつ、原子力発電を再稼働していくことが、現実的ではないだろうか。
2015/06/08
長期エネルギー需給見通し
 2016年4月から開始される電力小売り自由化を見据え、2030年の電源構成が示された。電力産業に、総括原価主義が適用されていれば、政府と電力会社が協力して将来の電源構成を決めることができる。一方、自由化市場の下では、それを市場に委ねることになる。もし政府が電源構成を決めたければ、あらかじめ電源構成のシェアを決めなければならない。そして、送電事業者に対して必要な各電源の競争入札を義務づけた上で、小売り事業者はそれと同一の電源ミックスからなる電力を購入するよう誘導するなど、需要家の電源選考を認めないことが必要になってくる。
2015/04/20
原発安全審査の遅延
 日本にとって、原子力発電は重要な社会インフラのひとつだ。それゆえ、再稼働の遅れは社会に大きな影響を及ぼす。安全審査に慎重を期すことは間違っていないが、それを理由に規制側の都合だけで審査期間が伸びてはいけない。その点で、英国と米国の例が参考になる。英国では、重要なインフラについて、政府がニーズやガイドラインを明確にすることで、許認可手続きを円滑化する。一方米国では、温室効果ガスを出さない原子力発電の開発のために、規制や訴訟に関連していて生じる遅延コストを補償する措置が取られる。日本でも、安全審査の効率化を促す何らかの仕組みを考えるべきだ。
2015/03/09
最適電源構成
 経済産業省の中で、2030年の電源構成(エネルギーミックス)を検討する議論が、1月30日から始まった。今後電力市場は、自由化に向かい進んでいくが、自由化される中で、電源構成をアプリオリ(先天的)に決めることについては、疑問を感じている。自由化市場では、電源構成も市場によって決められる。市場の失敗を引き起こさず、それがうまく機能すれば、電源構成はコスト効果的であるといえる。政府は、自由化で解決できない課題の克服策として、固定価格買い取り制度(FIT)を積極的に活用している。しかし、それは、国民負担をもたらしていることを忘れてはならない。
2015/02/02
E.ONの会社分割
 昨年11月、欧州最大の電力・ガス会社のE.ONが、再生可能エネルギーと配電、需要家サービスに特化すると発表した。可変費用ゼロの再生可能エネルギーが優先的に市場に投入されたことにより、火力発電の稼働率が低下し、その収益性が大きく低下したからだ。同社では、原子力も切り離した理由として、「ドイツが2022年までに原発を撤廃するとしていること」「バックエンドコストが不確実なこと」などをあげている。
2014/12/22
混迷する英国の電力市場
 英国では、電力市場改革の一環として、投資インセンティブを高めるため、原子力、再生可能エネルギー、CCS付設火力などの低炭素電源に対し、差金決済型固定価格買い取り制度(Fit CfD)を導入することになった。これにより、各電源の長期の収入見通しが可能となるのだが、原子力の場合、高レベル放射性廃棄物のコストは不透明であり、また、新規建設においては、民間が負担することになっており、重大なリスクが払しょくされていない。
2014/11/17
負の連鎖が始まっている
 日本国内における再生可能エネルギーの認定施設容量が7200万kWを上回ったことを受け、固定価格買い取り制度の見直しが始まった。経産省では、見直しと並行して地域間連系線の強化や地域内送電網の増強も進めていく方針だが、再生可能エネルギーの拡大が進むに従い、系統への影響を少なく抑えるために、バックアップ電源も必要になってくる。しかし、自由化市場のもとでは、稼働率の低いバックアップ電源は十分に建設されない可能性がある。そこで、火力電源の投資回収を確実にするため、容量市場の導入が必要になってくるのだが、既に導入している米国の事例では、需要家の負担が増える結果になっている。
2014/10/14
全体最適と個別最適
 再生可能エネルギー電源の大幅増大が火力電源の稼働率を低下させ、会社の収益性に及ぼす影響が深刻になってきている。しかし、電力会社は再生可能エネルギー電源の導入に対する積極姿勢を変えていない。それは、戸別の電力会社が投資を控えても、ドイツにおける再生可能エネルギー電源は確実に増加していくからだ。言い換えれば、全体最適としては、これ以上再生可能エネルギー電源を増やすべきではないが、戸別にはそれをコントロールできないので、依然として個別最適を追及しているのである。
2014/09/08
太陽光発電バブル
 経済産業省が認定した再生可能エネルギーの設備が、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が導入された2012年7月から14年3月までの期間で6864万kW増えたという。電力中央研究所の試算によれば、今後国内で認定された再生可能エネルギー設備が全て稼働した場合、国民負担は20年間で38兆円となり、ドイツをはるかに上回る。日本では、再生可能エネルギー電源の支援制度の早期見直しを行うべきだ。例えば、一定割合の再生可能エネルギー電源の利用を電力小売事業者に義務づけるクォータ制度を導入してみてはどうだろうか。
2014/07/28
欧州における電気料金上昇の根本原因
 欧州で電気料金の上昇が続いているのは租税公課の増大によるものだと、欧州の電力業界団体が報告書でまとめた。一般的に家庭用需要家は、租税公課についてあまり考えず「電力会社の電気料金が高いのは、効率化に対する努力が足りないからではないか」と批判する傾向がある。そのため規制当局も、積極的に供給事業者を変更するよう呼びかけている。しかし最近では、一括払いすれば電気料金を安くする新規参入者が破たんするなど電気料金の選択幅が広がることによるリスクも顕在化してきている。
2014/06/23
配電事業の役割
 スマートグリッドやスマートメータの導入により、配電の役割が変化しつつある。再生可能エネルギーの大量導入により、アンシラリーサービス(系統運用者が電圧や周波数などを調整するサービス)や混雑管理など、配電ネットワークの積極的な運用が求められるようになるからだ。スマートメータを配電事業者が保有することになれば、中立的な観点で、膨大なメータ情報を小売り事業者に提供することになり、重要な役割を担うだろう。
2014/05/19
Power to Gas
 再生可能エネルギーの余剰電力を気体変換して貯蔵・利用する「Power to Gas」の実証が、ドイツで進んでいる。電力で水を電気分解して水素を直接取り出す方法と、CO2と化学反応させメタンとして取り出す方法があるが、ドイツは、水素と天然ガスパイプライン双方が発達しているため、その普及に拍車がかかっている。しかし、安全性の問題や、CO2調達などの課題はまだ解決されていない。
2014/04/14
EUのone voice
 EUは、天然ガスの3割をロシアから輸入しているが、ロシアから輸入される天然ガスの大部分は、ウクライナを経由する。ただ、EU加盟国の中でもロシアへの依存度は様々だ。ロシアへの依存度が高い東欧諸国やドイツに対し、英国、フランス、イタリアは、その依存度は低い。そのため、2008年のグルジア紛争では、ロシアへの制裁に対しEU加盟国の足並みが乱れた。これを受けEUでは、エネルギーに関連した事項について「加盟国は、域内や対外的に”one voice”で臨むこと」を定めたリスボン条約を09年に発効した。今回のウクライナ紛争では、統一的な対ロシア政策を打ち出せたといえそうだ。
2014/03/10
欧州における電気料金上昇の理由
 欧州諸国で電気料金が値上がりを続けている。その要因を欧州委員会は、租税公課やネットワークコストの影響が大きく、発電コストはごくわずかだと分析した。これは、再生可能エネルギーの大量導入により、卸電力市場の価格が低迷しているためである。小売り料金の過半は、税金や規制で決まっているため、電気料金のマージナルな部分での競争しかできず、卸電力価格の変動を小売り電力に反映させることは難しい。
2014/02/03
ドイツの連立政権と再生可能エネルギー政策
 ドイツでは、キリスト教民主同盟・社会同盟と社会民主党の大連立が昨年12月に発足し、政権合意により再生可能エネルギーの比率が、2025年までに40~45%、35年までに55~60%という目標値に設定された。その一方で、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、需要家の負担額が、2014年には6.2セント/kWh(標準世帯1カ月当たりの負担は約1800円)となり、大きな国民負担を招いている。企業にとっては、コストが必ず回収できる「リスクフリー」の投資はざらには存在しないため、存続のためのロビイング活動が横行する。そのため、固定価格買い取り制度は、一旦導入されるとそれを廃止することは容易にできない状況にある。
2013/12/24
発送電再統合の兆しなのか
 欧米における「発送電分離」は、送電を別組織とする構造分離が主流である。特にEUでは、2003年に発効した「第2次電力指令」で送電の法的分離が義務づけられ、09年の「第3次電力指令」では、さらなる送電の分離が義務づけされている。その最大の理由は、固定価格買い取り制度の導入に伴う再生可能エネルギー電源の大幅増大である。欧州では、再生可能エネルギーの飛躍的な増大が、卸電力価格の低下を招き、再生可能エネルギーに対応するバックアップ電源への投資のインセンティブが失われている。そのため、容量市場などの容量確保のためのメカニズムが検討されている。
2013/11/18
容量市場を導入すべきか
 経産省が9月に開催した「第2回基本政策分科会電力システム改革小委員会制度設計ワーキンググループ」の中で、「小売り全面自由化の実施後、将来の発電能力を取引する容量市場を創設する」ことが了承された。しかし、先行して容量市場を導入した米国では、需要家が最終的に負担する容量確保のためのコストのうち新規電源開発に使われたのはわずか2%弱に過ぎない。また、ドイツでも、消費者団体が「容量市場の導入により電気料金が上昇し、消費者の負担が増えている」と指摘している。容量市場は複雑で規制リスクが高い制度なので、導入する前にデマンド・レスポンスの促進、卸電力市場の上限価格規制の撤廃などを行う必要がある。
2013/10/15
欧州電気事業の国際展開とその背景
 欧州の大手電力会社が積極的な国際展開を再び図り始めている。欧州での景気の低迷に加えて、課税強化や再生可能エネルギー電源支援コストの回収不足などの政治的リスクが電気事業の収益に大きな影響を与えているのもその一因だが、より重要なことは、再生可能エネルギーの大量導入で電力価格が低迷し、発電ビジネスが儲からなくなってきたことだ。
2013/09/09
気候変動問題
 米国のオバマ大統領は、6月に行った演説で、気候変動問題に対して積極的な姿勢を示した。演説では、新設火力発電所に対して設けられているCO2排出基準の稼働中の火力発電所への適用や、CO2排出量を2020年までに05年比で17%削減する目標などが示された。その背景には、シェールガスが安価で大量に生産できるようになったことや、議会の承認を得ずにCO2排出規制が可能になったことがある。シェールガスのおかげで米国では、CO2削減による経済や雇用への負の影響を懸念する必要がなくなってきている。
2013/07/29
ネガティブプライスの問題点
 廃棄物などのように、負の価格で取引される「ネガティブプライス」が、2008年9月にドイツで認められるようになった。原因は、風が強い深夜に風力発電が優先的に系統に投入されることで電力が供給過剰になり、他の電源を停止しないといけなくなったからだ。出力を自在に変化させるのが難しい原子力発電では、停止を回避するための引き取り価格として「ネガティブプライス」が発生した。「ネガティブブライス」は、経済学的には効率的といえる。しかし、経常的な運転をしている電源に影響を与えるとなると話は別だ。エネルギーセキュリティもしっかりと考えなくてはいけない。
2013/06/24
再生可能エネルギー導入促進策
 ドイツは、2000年に導入した再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、太陽光発電が12年までに約330倍の3300万kW、風力発電は約5倍の3100万kWまで増大した。その結果ドイツでは、再生可能エネルギーのシェアが12年には23%を占めるようになり、それに伴い家庭用の電気料金も、09年には1kWh当たり1.3セントだったのが、13年には約4倍の5.3セントまで値上がりした。この事態を受け、ドイツでは、再生可能エネルギー電源支援策の抜本的な見直しの議論が始まっている。現在は、固定価格買取制度に替えてクォータ制度やフィード・イン・プレミアム制度が望ましいとの見解が有力になっている。
2013/05/20
卸電力市場の活性化
経済産業省は、卸電力市場活性化のため「常時バックアップ料金と供給量の見直し」「部分供給実施のための環境整備」「卸電気事業者の売電先の多様化」などを検討している。しかし、小売りの全面自由化や発送電分離が行われることが決まった今、「常時バックアップ」は本当に必要なのだろうか。競争条件が平等になる中で、新規参入者に至り尽くせりの支援を行うことは、かえって効率的でない事業者の参入を認め、社会にとってのコストを増大させる可能性があるのではないか。
2013/04/15
独立規制委員会
参議院で6日に行われた原子力規制委員会の所信聴取で、委員長の田中俊一氏は、「世界で最も高いレベルの安全を確保する規制を目指す」と述べた。しかし、それは、コストを無視した過剰規制にならないか。墜落しない飛行機がないように、経済社会の活動は、コストとリスクのバランスの上に立っている。規制当局は、保身のために過剰な規制を課し、過度に安全対サイドに立った判断をする傾向がある。過剰な規制に基づく原子力政策は、燃料の海外依存度の増加や、国富の流出、エネルギーセキュリティの低下を招きかねない。
2013/03/11
スマートコミュニティ
日本の「スマートコミュニティ・アライアンス」や欧州委員会の「スマートシティ・コミュニティ欧州イノベーション・パートナーシップ(SCC)」など、スマートコミュニティへ取り組む組織の動きが活発化している。特にドイツでは、再生可能エネルギーの増大に伴い、必要となる系統の新増設が順調に進まない中で、供給信頼度が脅かされるようになり、連邦・州・地域レベルでスマートコミュニティへのニーズが高まってきている。
2013/02/04
燃料費は予測可能か?
燃料の価格動向は、簡単に予測できるものではない。そのため日本では、直近の燃料費を前提条件した変動分をあらかじめ定めた算定方式に基づき自動調整している。ただ、自動調整が認められれば、燃料調達コストを低減するインセンティブが働かないとの批判もある。これについては、燃料費の原価全体に占める割合が大きく変化すれば、適正かどうかの審査が行われ、正式な料金改定の手続きが求められるようになっている。
2012/12/24
発電と供給の分離
経産省の「電力システム改革専門委員会」で、送電部門の一層の分離の方向が決まったが、競争分野である発電と供給は分離すべきであろうか。欧州委員会は、発電と供給長期契約は新規参入を困難にするものと考えられており、米国でも規制当局や識者の間では、発電と供給の統合を認める考えが支配的になっている。発電価格が高い時は、発電事業者が利益を得て、供給事業者は契約料金のため損失をこうむる一方、発電価格が低い時はその逆になるからだ。
2012/11/19
発電容量確保の経済学的根拠
日本の電力取引市場で、発電容量を確保するため「容量市場」を導入することが7月に開かれた経済産業省の電力システム改革専門委員会で決まった。十分な電力を確保するためには「電力の安定供給」や「供給信頼度」が必要になってくるのがその理由だ。電力は「準公共財」のため、需給ひっ迫時に支払いを行わないものに対し停電することはできない。そのため、純粋な市場メカニズムにはなじまないと経済学では捉えられているからだが、「信頼度」について考え行動する需要家はほとんどいないだろう。
2012/10/15
発電容量確保のメカニズム
再生可能エネルギー電源の増大に伴い、欧米では現在「kWh」を取引する市場以外に、容量を確保する何らかのメカニズムが必要との考えが主流になってきている。ただ、既に容量市場の導入が始まった米国の一部の州では、規制当局から「市場メカニズムが機能していない」と批判が出ている。容量市場では、限界プラントのコストで決済価格が決まり、膨大なインフラマージンが発生するからだ。容量市場の導入については、需要家に対し、過大な負担を生じさせることがないよう慎重な検討が必要である。
2012/09/10
欧州で顕在化する送電事業のリスク
投資家は、欧州の送電線投資に「規制のリスク」が存在していると考えている。再生可能エネルギーの送電線増強が、なかなかうまくいかず、ビジネスとして成り立ちにくいからだ。ドイツでは、再生可能エネルギー大量導入への対応として、2020年までに4050kmの送電線建設が必要だが、地元の反対や規制などで、まだ100kmしか建設できていない。送電は、独占で安定的な報酬を確保できるといわれているが、再生可能エネルギーが大量に導入されるとリスキーなビジネスに様変わりするのである。
2012/07/30
世界の原子力ルネサンスの背景にあるもの
世界の原子力政策を見ると、福島第一原発事故の影響として、ドイツ、スイス、イタリアでは原子力政策の後退がみられるが、中国、ロシア、インド、フランス、フィンランドなど積極的に原子力発電の推進をしてきた国では、基本的にその姿勢に変化がない。特にエネルギー資源の多くを外国に依存する国は、エネルギーの自立を確保することが政治的な独立性につながるとの認識を持っている。
2012/06/25
「発送電分離」という用語
経済産業省で5月31日に開催された「電力システム改革専門委員会」で、発送電分離に関し「機能分離」と「法的分離」の2案で検討を進めることが決まった。「機能分離」は、欧米でいうISOの設立とされているが、本来の意味は、垂直統合した電気事業の中で系統運用機能の独立性を確保することだ。また「法的分離」は、単なる分社化で、現在議論されているITO(法的に分離された送電会社に対し規制を強化し、一層の独立性を確保すること)とは区別される。しっかりとした概念規定を持ち議論することが大切だ。
2012/05/21
再生可能エネルギーの買取価格
7月から導入される再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度では、太陽光で発電された電気を42円/ kW、期間20年(住宅用は10年)で買い取るとした。一方ドイツでは、太陽光発電の買い取り価格は、2000年に50セント(約55円)だったのが、現在では約20セント(約22円)となっている。急激な価格の低下は、ドイツ国内事業者の製品価格ではなく、グローバルな市場の価格を反映している。我が国においても、太陽光発電パネルのコストは、グローバルな市場価格で決まるのが自然だ。
2012/04/16
2030年における原子力比率
経産省の総合エネルギー調査会基本問題委員会は3月27日、2030年における原子力の電源構成比率の選択肢5案をまとめた。原子力発電比率を決定する上で重要なのは、温暖化防止対策やエネルギーセキュリティ政策の考え方だ。温暖化防止対策は、排出削減余地が大きく削減コストの低い国や地域で重点的に削減を行えば、原子力比率を高めなくてもよい。エネルギーセキュリティの面では、賦存量の少なさから、現実的には自前のエネルギー源は原子力発電しかないが、化石燃料の価格リスクの管理に徹するという考えもある。
2012/03/12
発送電分離
 昨年12月末に枝野経済産業相が発送電分離に関する4つの案を示した。それらは、現行制度ですでに実現している、送電部門の会計を別立てとする「会計分離」のほか、持ち株会社の下で各部門を子会社化する「法的分離」、送電部門の運用のみを外部の中立的な組織に委ねる「機能分離」、送電部門を外部に売却する「所有分離」である。今年に入り、政府・経済産業省は、「機能分離」案を軸に、発送電分離の検討に入ったとのことである。
2012/02/06
電源別発電コスト試算
 政府のエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会は、昨年12月13日に、原子力発電のコストは、最低でもkWh当たり8.9円と算定し、2004年の試算よりも約5割高いとする報告書案を示した。原子力発電所の廃炉や事故による賠償費用を考慮すれば 火力並みになるとするとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源は、技術革新などでコストが大幅に低下すると指摘した。一部報道では、東京電力の福島第1原発事故に伴う廃炉や賠償費用が確定すれば原発コストはさらに上昇し、 火力の約10円と並ぶことがほぼ確実と伝えている。
2011/12/26
再生可能エネルギーの全量買取制度
 「私の顔を本当に見たくないなら、早くこの法案を通した方がいい」―菅前首相が退任条件として掲げた「再生可能 エネルギー特別措置法」が8月26日に成立し、再生可能エネルギーの全量買取制度が来年7月1日から実施される。同法は、電力会社に対し、太陽光、風力、水力(中小規模)、地熱、バイオマスの自然エネルギーで発電された電力の全量を、国が決めた価格で一定の期間、買い取ることを義務付けるものである。買取価格や買取期間は、再生可能エネルギー源の種別や規模等に応じて、経済産業大臣が関係大臣と協議したうえで、新しく設置される中立的な第三者委員会「調達価格等算定委員会」での議論に基づき、決定することになった。
2011/11/21
総括原価方式
 福島第1原子力発電所事故の損害賠償支援を行うために開催されてきた東京電力経営・財務調査委員会は、10月3日に報告書をまとめた。それによると、東電が直近10年間で届け出た料金算定のベースになる「原価」は、実際の原価よりも、約6000億円上回っており、割高な料金設定となっていると指摘し、総括原価方式の見直しを提起した。これに先立ち、9月28日、枝野経済産業相は「総括原価方式」について、「ゼロベースで議論を進めていく」と述べた。
2011/10/17
「論理矛盾」は正しいか
 2011年9月26日に、東京電力福島第1原発事故の賠償を支援する原子力損害賠償支援機構の開所式で、枝野経済産業相は、電力会社の役員報酬に関して、「競争がまったくない状況で、役員報酬が、競争にさらされている民間企業に準じて決められるのは論理矛盾」と指摘し、公務員や独立行政法人並みにすべきだとの考えを示した。
2011/09/12
脱原発の影響
7月6日に菅前首相が発表した全原発を対象としたストレステストの実施は、原子力発電の忌避に傾いた世論に巧みに訴えたポピュリズムの手法だ。EUでは、ストレステストの結果廃止される原子力の代わりに、再生可能エネルギーよりもガス火力が建設されるだろう。再生可能エネルギーは、利害関係の複雑さや煩雑な許認可プロセスで送電増強は進まない。ガス火力の比率が高まれば、温暖化防止にも影響が出てくるだろう。
2011/08/08
発送電分離と再生可能エネルギーの導入
 最近、再生可能エネルギー電源の促進のためには、発送電分離が必要との見解がよく聞かれるが、これは正しいだろうか?そもそも発送電分離は、本来的に新規参入者が競争的になっているにも関わらず、送電を有する既存の事業者による差別的な取り扱いにより、市場への参入が妨げられている場合に必要と考えられてきた。言い換えれば、競争政策との関連で発送電分離が議論されてきた。しかし、再生可能エネルギー電源は、競争的な電源とはなっていない。
2011/07/04
発送電分離
 民主党が昨年発表した「エネルギー基本計画」では、今後のエネルギー産業構造のあり方として、「総合エネルギー企業体」の方向性を打ち出していた。今回、1年も経たないうちに、発送電分離や資産売却を検討するとした。大規模かつ強大なエネルギー企業を作ろうという考え方と、規模縮小につながる発送電分離は矛盾していないか。
2011/05/30
我が国電気事業のインフラ輸出
 東日本大震災と福島第1原発電事故は、わが国の成長戦略にも大きな影響を及ぼすだろう。政府が昨年6月に策定した新成長戦略では、インフラ輸出が目玉となっており、パッケージ型インフラ海外展開を目指している。電力関連では石炭火力発電、送配電、再生可能エネルギー発電、原子力発電が有望視されている。しかし、オールジャパンの体制を整え、総事業費1兆円規模の原発2基の受注に成功したベトナムの例でいえば、約束した原発関連の人材育成、廃棄物管理などで詳細を詰めるにしたがってどれだけコストが膨らむか不透明である。
2011/04/18
福島第1原発事故の海外への影響
 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の被災は、高濃度の放射能漏れという深刻な事態に発展した。この事故を受けた欧米政府の対応であるが、米国では、オバマ大統領は原子力発電所の安全性に関して、原子力規制委員会に見直しを行うように指示したが、同時に原子力発電は米国にとっては依然重要なエネルギー源であるとしている。
2011/03/14
温暖化防止政策と市場メカニズム
 2010年12月16日に、英国のエネルギー気候変動省(Department for Energy and Climate Change: DECC)は、電力市場の改革に関する一連の提案をパブリック・コンサルテーションにかけた。英国政府によれば、改革は、投資家に対して低炭素技術への投資をより魅力的なものにするためであり、安定供給のために必要な十分なバックアップ電源を確保するためとしている。コンサルテーションの期間は、2011年3月10日までである。2011年の春後半には、電力市場改革に関する白書が提出され、2013年には新たな法律が実施される予定である。
2011/02/07
欧州における電気事業への増税の動き
欧州諸国の電気事業では、原子力に対する課税が増える一方、再生可能エネルギーについては、税制上の優遇措置が取られ始めている。原子力は、将来の電源構成で不可欠な電源だと認められているが、課税が続けば排除の対象になりかねない。そのつけを最終的に支払うのは需要家だ。
2010/12/27
ドイツにおける再生可能エネルギー発電支援コストの増大
 ドイツでは、2011年初より再生可能エネルギー発電支援のための家庭用電力需要家に対する課金は70%上昇し、kWh当たり3.5ユーロセントになる。これによる一家庭当たりの月々の負担は、約10ユーロ増大すると計算されている。このような再生可能エネルギー発電に対する支援により引き起こされた料金の上昇がどこまで続くのか、いまだに終わりは見えていない。太陽光発電に対する高い支援コストはすでに政治問題化しているが、政府はパネル価格の低下傾向を考慮した適切なレベルへの支援の削減を行っていないため、太陽光発電の建設の勢いは衰えを見せていない。
2010/11/22
市場の失敗と市場の障壁
 再生可能エネルギー発電の促進のために、政府の市場への介入は、いかなる場合に是認されるであろうか。 一般に、市場の障壁(market barrier)と市場の失敗(market failure)とは区別される。前者は、「効率的技術への投資をさまたげる要因」として定義でき、後者は「経済的に非効率な結果をもたらす競争のパラダイムの失敗」として定義できる。 市場の障壁に関する主要な例は、在来技術と比べたときの新技術のコスト、運転に関する種々の不確実性である。しかも、新技術への投資が不可逆的(irreversible)である場合には、投資家にとっての市場の障壁は非常に高い。そのとき、投資はサンク・コストを意味し、市場条件が当初予想したよりも悪化した場合には、投資コストの回収が困難化する。
2010/10/18
再生可能エネルギー電源の増大と卸電力市場
 欧州では最近、再生可能エネルギー電源大量導入の卸電力市場に及ぼす影響について分析が行われるようになってきた。卸電力市場は自由化の産物であるが、電力の自由化で初めて分かったことは、卸電力価格の乱高下がいかに大きいかということである。卸電力市場の価格変動は、決して正規分布には従っていない。その動きは、正規分布ではなくベキ分布であり、頻繁に極端な価格の変動が起きる。このことは、米国のPJM(Pennsylvania- New Jersey- Maryland Interconnection)や北欧のノルドプールなどの経験から分かっている。そのため、市場支配力が行使しやすく、米国ではPJMなど多くの卸電力市場でMWh当たり1000ドルの上限価格が課せられている。
2010/09/13
再生可能エネルギー電源の促進と構造問題
 EUでは、2009年4月の「EU再生可能エネルギー利用促進指令」により、再生可能エネルギー電源に対する優先規定が制定された。優先規定は、優先接続、優先アクセス、優先給電からなり、優先接続は任意規定、優先アクセスと優先給電は、義務規定となっている。現在、わが国でも、再生可能エネルギー電源に対して優先接続、優先アクセスや優先給電が認められるべきかについて議論されていることは周知の通りである。
2010/08/09
再生可能エネルギー電源の促進
 今年2月号のコラムで、「歴史は繰り返す」と題して米国カリフォルニア州における小売り自由化再開の動きについて述べた。同州では、1998年に全面自由化に踏み切ったが、2000年夏から2001年初めにかけて電力危機が発生し、小売り自由化は完全に失敗した。しかし、懲りもせず最近自由化を再開しようとしているという趣旨であった。
2010/07/05
総合エネルギー企業
 「エネルギー基本計画」が閣議決定された。そこでは、今後のエネルギー産業構造のあり方として、「総合エネルギー企業体」の方向性が打ち出されている。総合エネルギー企業は、欧州では、1990年代以降、一般的なビジネス・モデルとなってきている。ただし、その事業範囲は、基本的にガス・アンド・エレクトリックにとどまっている。例えば、欧州最大手の電力会社EONはかつて石油部門を所有していたが、他の非エネルギー部門とともにこれを売却し、ドイツ最大手のガス会社ルールガスを買収し、電力とガスをコアとしている。
2010/05/31
省エネルネサンス
 米国では、昨年1月にWellinghoff氏がFERC(連邦エネルギー規制委員会)の委員長に就任してから、エネルギー政策の重点は競争促進から、エネルギー利用効率向上やデマンドサイドを重視する政策に大きく変化してきている。同氏はまた、プラグインハイブリッド車やスマートグリッドの支持者である。 このような連邦レベルでの政策の変化を踏まえ、現在多くの州で、政策の新たな重点となっているのがエネルギー利用における効率向上であり、省エネルネサンスというべき状況を呈している。
2010/04/19
最近における英国の電力政策
 欧州では、1990年代からエネルギー市場の自由化が進展したが、それをリードしてきたのが英国であった。同国は、欧州諸国では最も早く1990年に電力自由化に踏み切り、イングランド・ウェールズにプール制と呼ばれる卸売市場を創設した。プール制の下では、徹底的な競争が期待されたものの、大手電力会社による市場支配力の行使により、卸売価格は高止まりした。このため、2001年になると、より競争的な自由化制度と考えられた相対取引を中心とした新たな卸取引制度が導入された。英国は、一貫して市場メカニズムを重視する立場をとってきた。
2010/03/15
FIT vs. RPS
 最近、欧州では再生可能エネルギー発電の促進策として固定価格買取制度( Feed- in Tariff: FIT)への支持が増えてきている。EU27カ国のうち、FITを採用する国は、すでに20カ国に及ぶ。これに対して、RPS(Renewables Portfolio Standard)を採用する国は、7カ国にすぎない。FITは非常に強力な再生可能エネルギー発電促進策である。同制度の下では、電力会社は再生可能エネルギー発電事業者によって発電された電力を総括原価に基づき設定された価格で購入することを義務づけられる。
2010/02/08
カリフォルニア州における再生可能エネルギー促進策:歴史は繰り返す?
 米国カリフォルニア州で再生可能エネルギーへの取り組みが活発化している。同州では2002年に州法(SB1078)によりPRS( Renewable Portfolio Standard)を導入し、2003年から実施した。その目標値は、2017年20%であったが、2006年に新たな州法(SB107)を成立させ、2010年20%という野心的な目標を設定した。これに加え、2006年の州法(AB1969)で、公共用水や排水施設に設置される再生可能エネルギー電源を対象に固定価格買取制度を導入した。再生可能エネルギーの促進は、カリフォルニア州のみならず全米での動きといえる。PRSを導入した州は30を上回る。
2009/12/28
EUにおける炭素税導入の動き
地球温暖化対策として、排出量取引と炭素税いずれが適切な手段であるかについては、長い間議論されてきており、未だに決着はついていない。EUは2005年に排出量取引制度(EUETS)を導入した。炭素税については、EU大で統一的な導入は難しいと判断されたことがその背景にある。炭素税は、1990年前後より欧州北部を中心に導入されてきており、すでにデンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、ドイツにおいて導入されているが、エネルギー多消費産業には国際競争力に配慮し、軽減措置や免税を行なっている。国レベルでも調整は難しいのに、国際的なレベルでの実効性のある調整は不可能と考えられた。
2009/11/23
地球温暖化問題とエネルギー・セキュリティ
民主党政権は、温室効果ガスの削減について2020年までに1990年比25%削減、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。 「25%削減」に必要な具体策についての政府の試算では、太陽光発電を現状の55倍の7900万 kW、エコカーを新車の9割、すべての住宅を断熱住宅にすることが必要とされる。前政権では、2020年時点の温室効果ガスの中期目標を、2005年比15%削減(1990年比8%減)にすると表明し、目標実現に太陽光発電を現状の20倍の2800万kW、エコカーを新車の50%、断熱住宅を新築住宅の80%としたが大きな様変わりである。
2009/10/19
固定価格買取制度 ―ドイツになにを学ぶか―
 衆院選で圧勝した民主党は、社民党、国民新党との3党連立政権を樹立し、9月16日に鳩山内閣が誕生した。民主党が政権の座につくことにより野心的な温暖化防止政策が導入される。温室効果ガスの削減については2020年までに1990年比25%削減、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。このため、全種全量を対象とした固定価格買取制度、排出上限を課すキャップ&トレード方式の国内排出量取引制度、地球温暖化対策税を導入する。
2009/09/14
原子力ルネサンスとポリティカルリスク
 最近、温暖化対策には原子力発電の増強・新設が不可欠であるとの認識が世界的に共有化されつつある。欧米の電気事業者も原子力発電はその電源ミックスの中で重要な役割を担うと考えている。確かに、世界的に原子力発電の新規開発は目白押しである。すでに、フィンライドとフランスでは新規の原子力発電が建設中であり、英国では、2008年1月に原子力発電を推進する内容の原子力白書が発表され、British Energyを買収したEDFは4基の原子力発電所を建設することを計画している。
2009/08/10
米国における電力政策の変化
 現在の米国電気事業の規制環境は大きく変化しており、正に「パラダイムシフト」が起きているといえる。新政権の下で連邦エネルギー規制委員会(FERC)の委員長がKelliher氏からWellinghoff氏に交代した。彼は、FERCのコミッショナーになったときは、電力分野の競争促進に熱心であったが、最近では、省エネルギー、デマンドサイドに関心があり、プラグインハイブリッド車やスマートグリッドの支持者である。
2009/07/06
再生可能エネルギー発電の飛躍的増大がもたらすもの
 麻生首相は、6月10日に「日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標を、2005年比15%削減(1990年比8%減)にする」と表明した。目標実現に太陽光発電を現状の20倍(2800万kW)、エコカーを新車販売の50%、保有台数の20%、省エネ住宅を新築住宅の80%とした。家計(1世帯あたり年間)の負担増は、7万6000円と試算されている。