米エネルギー開発業界のリーク資料が明かす「シェールガス」影の部分 (2011/07/18)


 だが、シェールガス・ブームには喜んでばかりはいられない側面があるようだ。ひとつは環境問題だが、これについては別の機会に触れることにして、ここでは米紙ニューヨークタイムズ(電子版)が6月25日に報じた埋蔵量過大評価などシェールガス開発をめぐる数々の疑問に関する衝撃的な記事内容を取り上げたい。

 ニューヨークタイムズは過去6カ月にわたって、シェールガス開発企業など関連業界からリークされたeメールやアナリストによる内部文書、報告書など数千ページにおよぶ資料を調べ上げた。その結果、いま表面に出ているシェールガスのばら色の側面とは裏腹に、いろいろな問題点や危惧が業界内部にあることが浮き彫りになったと伝えている。

 「ゴールドラッシュ転じて裁判沙汰に」という記事では、中米エルサルバドルにおけるシェールガス開発計画が、実際には掘削すら開始されないまま挫折し、投資家たちは得そこなった利益を求めて国際法廷に訴えた事実を明らかにしている。この種の話はエネルギー開発案件にはありがちとも思えるが、内部文書によると決して例外的なものではないようだ。

「シェールガスはポンジースキーム(米国版ねずみ講)か」「SEC(証券取引委員会)はどこにいる」「企業の傲慢さと悪徳科学がエンロンの二の舞を招く恐れあり」といったきわどい文書がeメールや内部文書を紹介している。

 さらには業界の中にシェールガスの経済性に疑問を抱いている見方も少なくないことが問題だろう。「シェールガスは世界最大の不経済分野だ」「シェールガスには群集心理が覆う」「シェールガスには経済性がない(ある地質学者の見解)」「マスコミはコスト無視で報道している」等々の発言や見解が業界内部の本音として流れているという。

 だが、一番の問題は生産可能埋蔵量に関する開発会社の過大評価だろう。業界内部データは「スイートスポット(生産性の高い地点)は多くない」ことを示しているという。ニューヨークタイムズは北米地区を中心に、主要なシェール構造における井戸ごとの生産性を分析した。その結果、スイートスポットは、テキサス州バーネット・シェール構造で7%に過ぎず、同州のヘインズビル・シェール構造では10%、アーカンソー州ファイエット・シェール構造では10~20%だという。

スイートスポットの周囲に、生産性の劣る広大な地域が広がっているのが現実のようだ。

 さらに、ヒューストンの地質専門家の計算によるシェールガス推定埋蔵量と、開発会社の主張する推定埋蔵量とを対比させ、会社の推定量が相当過大に公表されているケースが少なくないと指摘している。たとえば開発会社A社は、地質専門家の推定量の4.5倍もの数字を掲げている。同様な例はほかにもあって、B社は3.3倍、C社は2.8倍、D社は2.2倍といった具合だと同紙は開発企業名を挙げて報じている。

 昔から山(鉱山)にかかわる人のことを山師といって、言うことが当てにならない人の代名詞に使われてきた。シェールガスの真実がどの辺りにあるのか今はわからないが、開発当事者たちの言う推定埋蔵量が必ずしもあてにならず、しかも生産性の高い地点も期待ほど多くないとすれば、「ブームはただの浮かれすぎだった」との批判を甘んじて受けなければならなくなる可能性もある。

そうならないことを願うばかりだが、われわれは業界から発せられる思惑付き楽観論に安易に取り込まれることなく、シェールガス・ブームの動きを冷静かつ注意深く読み解く必要がある。
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