EPレポート

・ 18年度エネルギー・環境予算のポイントは 2018/01/21

再エネ水素・省エネ関連事業を拡充


 政府の2018年度当初予算案が、昨年末に決定した。エネルギー・環境関係については、経済産業省のエネルギー特別会計が、17年度から52億円減の7798億円。環境省では、全体の予算額9591億円のうち、エネ特会は1575億円と、前年度並みの額を確保した。一方、経産・環境省の事業の重複も散見され、チェック体制の確立を求める声も出ている。
 経産省は、18年度も福島復興を「一丁目一番地」に掲げた。再生可能エネルギーや、最先端のエネルギー利用の実証により、復興を後押しする。415億円と、17年度から108億円の増額だ。特に、①再エネ由来水素の製造・輸送・貯蔵技術の実証、②阿武隈山地や県沿岸部での送電網増強による再エネ導入拡大――は、大きく拡充した。安倍政権は、20年の東京五輪・パラリンピックで復興が進んだ福島の姿を世界に向けてアピールすることを掲げており、ターゲットに向けて着々と事業を進めていく方針だ。

・ 【エネルギーを見る眼】台湾の野心的な地球温暖化対策 2018/01/21

電力コスト増に電子産業は生き残られるか?


 キヤノングローバル戦略研究所は台湾の工業技術研究院(ITRI)から潘はん子しきん欽経理を招へいし、2017年12月14日に公開セミナーを開催、3日間にわたって突っ込んだ議論を行った。その概要と筆者の意見をお伝えしたい。
 日本ではエネルギー多消費産業といえば鉄鋼・セメント・石油化学・紙パルプに非鉄金属と、いわゆる素材産業であり、いずれも1973年のオイルショック以前に発達した産業ばかりである。これは世界中どこでも同じだと思っていたら、台湾では電子産業が最大のエネルギー多消費産業だと知って驚いた。

・ 【EWN】卸価格低迷に苦しむ米国のIPP事業者 2018/01/21

負債圧縮・収支変動リスク軽減が課題


 米国では再生可能エネルギー導入の増加やシェール革命に伴う天然ガス価格の低迷により、2009年頃から電力卸価格が低迷している。
 米国のIPP事業者は、①送配電部門などの規制事業を保有する大手電力会社の子会社としてIPP事業を営む事業者、②それがスピンアウトして独立した事業者、③発電デベロッパーとして事業を立ち上げた事業者――に分けられる。このうち、②③のような収益の大半を発電事業で得ている独立系IPP事業者には特に厳しい環境となっている。

・ 【スポット解説】新たなエネルギー基本計画策定へ 2018/01/21

経産・環境省の連携を促す


 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会(分科会長・坂根正弘・コマツ相談役)が2017年12月26日に開催され、30年のエネルギーミックス(電源構成比)実現のための対策を議論した。資源エネルギー庁事務局は、11月の会合で取り上げた省エネルギーと再生可能エネルギーに引き続き、原子力、火力、化石燃料、熱の4分野を巡る課題の洗い出し、それを基に議論が交わされた。
 原子力については、電気料金の引き下げやエネルギー安全保障への貢献、CO2削減を再稼働のメリットとした上で、一方で、社会的信頼の獲得が課題だと整理。再稼働に向けては、福島復興や事故収束の加速、安全性の向上、安全を担う技術・人材・産業の維持・発展が不可欠だとした。特に安全確保では、規制要求を満たすのみならず、継続的・自律的に安全性を向上しリスクを適切に管理する、事業者自らの取り組みの重要性を強調した。

・ いま、福島第一原発の状況は 2017/12/01

廃炉に向けた工事の現場を訪れて


 東京電力福島第一原子力発電所の事故から6年半。事故直後の混乱は収束 し、いま発電所は、約5000人が働く巨大な工事現場に変へんぼう貌している。構内は整理が大きく進み、事故や大津波を連想させるものは減りつつある。放射 線量も減り、作業員は構内の95%では通常の作業服を着て、マスクも簡易 なものを着用している。
 構内の木は切り倒され、地表はモルタルに覆われている。フェイシングと呼ばれるこの取り組みは、雨水が地下に染みこんで地下水になり、事故炉に流れ込むことを抑えると同時に、放射線物質の土からの拡散を抑える目的がある。
 東電は、労働環境の改善に取り組んでいる。作業員5000人のうち、東電の社員は1000人程度。東電は協力企業約40社に工事を発注し、そこに約1000社程度がかかわっている。原発事故直後、構内の建物の大半が地震と津波の影響、さらに放射性物質の汚染で使えなかった。主に免震重要棟で東電の事務や作業員の休憩、作業準備が行われた。そこはごった返しており食事も乾パンやクラッカーなどしかなかった。東電は2014年に事務棟(現在は協力企業が利用)、15年に現場で働く人向けの大型休憩所、16年10月には新事務本館を建設。作業環境の改善を進めた。

・ 【エネルギーを見る眼】転換期のサウジ父子政権で政変 2017/12/01

皇太子による強行突破か


 20年ほど前、サウジアラビアの著名なジャーナリスト、M.サラフディー ン氏とパリを散歩したことがある。「このホテルに2組のサウド家プリンスが 宿泊している。1組はワンフロアを借り切って、大騒ぎしている」と、サ氏 が高級ホテル「リッツ」の前で言った。「もう1組は運転手を兼ねた秘書だけ で、スイートルームに泊まっている」と続けた。なんの話?といぶかる私に 「大騒ぎしているのはファハド国王の息子で、もう1組はアブダラー皇太子 の息子だ」と続けた。
 11月4日、サウジ国営通信は突然「複数の主要王族、閣僚を汚職容疑で拘束」 というニュースを流した。その中にミティーブ・アブダッラー国家警備隊相の名を見つけた時、私はわが目を疑った。今は故人となったサ氏が、あの時パリで話した「秘書と2人だけで泊っている」プリンスこそ、このミティーブ王子だった。厳しく、質素に育てられた王子が、職を汚してまで金銭を得 るようなことをするだろうか。

・ 【EWN】米国の石炭・原子力 相次ぐ早期閉鎖 2017/12/01

危機感を強めるDOEは異例の措置


 米エネルギー省(DOE)は8月、「電力市場と電力系統信頼度に関する調査報告書」を公表した。これは、オバマ前政権時代の再生可能エネルギー拡大に向けた政策(補助金・税制優遇など)や化石電源に対する環境規制が、電力系統の信頼性を損ねるとともに電力市場を歪め、ベースロード電源(石炭・原子力など)の早期閉鎖につながっている、との仮定に基づいてDOEがとりまとめたものだ。
 報告書によれば、石炭火力・原子力発電所の早期閉鎖の最大の要因は、天然ガス火力発電のコスト低下であり、ほかにも電力需要の伸びの鈍化、再エネ(太陽光・風力)の増加、ベースロード電源の環境規制対応費用の増加も影響しているという。また報告書では、現状を踏まえた政策提言もなされており、特に連邦エネルギー規制委員会(FERC)に対しては、州政府や地域送電機関(RTO)・独立送電機関(ISO)と協力し、卸電力市場にベースロード電源の価値を適切に反映するように提案している。

・ 温暖化対策とエネ政策両立へ 2017/11/21

再エネ・原子力とどう向き合うか


 経済産業省は、2050年の視点で長期的なエネルギー政策の方向性を検討する有識者会合「エネルギー情勢懇談会」を11月13日に開催した。3回目となった同会合のテーマは、「地球温暖化対策とエネルギー政策」。環境問題に関する研究や政策提言を行う米エンバイロメンタル・プログレス代表で作家のマイケル・シェレンバーガー氏、英インペリアル・カレッジロンドン持続可能エネルギー担当教授のジム・スキー氏が、再生可能エネルギーや原子力政策を含め、地球環境の視野に立ったエネルギー政策の在り方をプレゼンテーションし、それを念頭に置いた議論が交わされた。  まず、経産省事務局から、日本と世界各国の低炭素化に向けた取り組みや実情が、直近のデータを踏まえながら示された。この中で、各国の電源のゼ ロエミッション比率(2015年)を比較すると、日本の16%に対し、米国 33%、ドイツ44%、フランス93%と、海外各国の方が軒並み高い。

・ 【エネルギーを見る眼】エネルギー安定供給に国際連系線の検討も 2017/11/21

求められる将来に向けた長期構想


 欧米を中心に電力改革が本格化したのは1990年代半ばである。既に四半世紀が経過しているものの、自由化をめぐる理念と実態のギャップは埋まらない。発電部門のプレーヤーがどのタイプの設備をどの地点に持っているのかが明確にされ、それらの出力や特性も公開されているのが理想だが、現実には発電市場の全体像とその特徴を即座に把握するのは難しい。
 経済学で完全競争を説明する時には、すべての主体が同じ情報を持つことを前提としている。新規事業者は十分な情報を集めた上で、自らの判断で市場への参入を決定する。小売市場でもプレーヤーと料金に関する情報が周知されていれば、最終需要家は合理的な選択を実現できると想定しているが、実際は必ずしも豊富な判断材料が入手できるわけではない。

・ 【EWN】アザデガン油田を巡り 交錯する権益争い 2017/11/21

中立の利点を生かして日本の参入も


 インドのモディ首相は最近、中国の「一帯一路」政策と「真珠の首飾り」に例えられる海からのインド包囲網に対して、「ダイヤのネックレス」戦略を日本とアメリカの協力を得て、首飾りの外側に構築しようとしている。
 インドは、イランから原油・天然ガスを輸入するのみならず、パキスタンを通過せずに資源の豊富なアフガニスタンや中央アジアにアクセスできるようになるために、イランのチャーバハール港を協力して開発して、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)のアラビア湾への出口であるパキスタンのグワダル港に対抗させようとの動きを見せている。グアダル港は中国の管理下にあり、中パ経済回廊の出口として重要な港である。
 2016年5月にはモディ首相がイランを訪問し、チャーバハール港開発でインドとイランで14の分野での合意。物流を促進し、同港からアフガニスタンの国境近くのザーヘダーンまで500㎞の鉄道を敷くプロジェクトにインドが協力する。ホルムズ海峡の外側のイラン領に港を持つことの意義もある。

・ 【スポット解説】環境配慮の電力入札 裾切り基準を見直しへ 2017/11/21

 電力入札における環境配慮の在り方を検討していた環境省は、2018年度の制 度改定方針をまとめた。主要論点となっていた環境配慮契約実施率の拡大や、裾切り基準の全国一律化は引き続きの検討課題とした。一方で裾切り基準の一部見直しを決定。来年2月頃に基本方針改定を閣議決定、18年度以降に契約する電力入札に反映させる。
 同制度は環境配慮契約法に基づくもので、国の機関と独立行政法人、国立大学、自治体などが調達契約を結ぶ際に価格だけでなく、環境配慮度合も含めて評価して事業者選定を行うよう求めるもの。電力入札の場合は、入札に際して参加資格評価を実施。事業者のCO2排出係数や再エネの導入、未利用エネの活用などを評価して、70点以上獲得などの条件を満たす事業者の中から、価格競争により落札者を決定する裾切り方式を採用している。

・ パリ協定のルール交渉が焦点に 2017/11/11

COP23 のポイントを解説


 国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が、11月6日~ 17日、ドイツ・ボンで開催されている。新たに決まるトピックスはないが、パ リ協定の実効性を左右するルールブック(実施指針)の交渉がどこまで進む かが、最大のポイントだ。ルールブックは2018年のCOP24までに策定することを目指しているが、さまざまな分野で先進国と途上国の対立が表面化し、難しい交渉を後1年で決着させなければならない。さらに、18年には世界全体の温暖化ガス削減の進ちょく状況を確認する「促進的対話」が開催されるが、それをどのように実施するかもCOP23で決まる予定だ。促進的対話は、グローバル・ストックテイク(パリ協定のもとで5年ごとに世界全体の進ちょくを把握する仕組み)の試行版のような位置付けとされており、COP23で示される促進的対話のデザインも注目される。

・ 【エネルギーを見る眼】日独のエネルギー転換 それぞれの課題と選択 2017/11/11

ドイツには課題克服のポジティブな意思


 本年初め、若狭湾に面した自然豊かな高浜原子力発電所を訪れる機会に恵まれた。2030年における原子力による発電シェアを20 ~ 22%とした政府目標の実現のためには、安全性を高めた原発の再稼働と、40年とされた運転期間の延長が必要となる。訪問した当時の高浜原発は、昨年再稼働を果たしたのち、大津地裁の差し止め仮処分により停止している状態にあった。
 津波の侵入を遮断する堤防、それでも機能を喪失した事態に備える何重もの対策を目にした。想定する津波や竜巻の水準は、当地のお寺などを巡っても、歴史上の記録も見出せないほどという。未利用であった地下水をためて緊急時に利用する装置など、規制によらない自主的な取り組みにも積極的である。安全対策主任による説明と応答は誠実さを超え、凄すごみすら感じられた。エンジニアとしての誇り、そして安定供給の実現という公益への強固な信念なしに成し得るものではないだろう。

・ 【EWN】経産省の素人委員会に何を期待すればいいのか 2017/11/11

経産省が2050年の長期ビジョン検討


 経産省は8月から「エネルギー情勢懇談会」を発足させ、2050年までの長期エネルギー・ビジョンの検討に着手した。別途「エネルギー基本計画」を審議する委員会の会長の任にある坂根正弘・小松製作所相談役も、懇談会委員に名を連ねている。驚くのは、この懇談会の委員の顔ぶれだ。この中にエネルギーの専門家が全く見当たらないことで、素人懇談会の性格は免れない。
 この懇談会の人選をした経産省の狙いは一体何なのか。中でも、中心人物 と目される坂根氏は、前々から「化石燃料は今世紀中になくなる=枯渇する」と言うのが口癖である。化石燃料が今世紀中に枯渇化するというのは、エネルギー専門家の間で共有されている常識では全くない。おそらく、可採年数(RP)を、資源の寿命と勘違いしている致命的な初歩的誤解を披露しているのか、別の意図があってあえて唱えているのかのどちらかだろうが、おそらくは前者だろう。これは、エネルギーの素人が最も犯しやすい重大誤 解のひとつだ。

・ 自民勝利でエネルギー・環境政策は 2017/11/01

原発立地地域で自民候補は沈黙も


 衆議院選挙の投開票が10月22日に行われ、自民党が284議席、公明党が29議席を獲得。連立与党が定数の3分の2を上回る313議席を得て、引き続き政権を担うことになった。
 今回の選挙では、原子力政策が争点のひとつに浮上した。自民党は、「原 発依存度を可能な限り低減させる」としながらも、「原子力は重要なベースロード電源」と位置付けた。「原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、原発の再稼働を進める」という公約は、各党の政策の中で最も推進寄りだった。自民党が単独で過半数を獲得したことは、地元了解などが壁になっている原発の再稼働に追い風となるかもしれない。
 政権を担う自民・公明党の下、今後、エネルギー・環境政策はどう進むのか ――。衆院選での公約から占ってみよう。まず、原発の再稼働。自民党は、原 子力規制委員会による認可のほかに、関門となっている地元了解について も、「国も全面に立ち、理解が得られるよう丁寧な説明を尽くす」と前向き に取り組む姿勢を示している。

・ 【エネルギーを見る眼】ハリケーン被害に見る米石油産業の変貌 2017/11/01

シェール革命で構造が変化


 8月末、米国テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は暴風と洪水により経済活動だけでなく、石油産業にも大きな打撃を与えた。ムーディーズ・アナリティクスはハービーによるテキサス南東部の経済被害は510億~ 750億ドルに上るとの推定を発表し、ハービーは米史上で最も大きい経済被害をもたらしたハリケーンのひとつとなるとした。
 2005年8月下旬、米国メキシコ湾岸を直撃した「カトリーナ」は、湾岸 地域の製油所に甚大な影響を与え、米国ガソリン価格の高騰をもたらした。その際、供給不足を一因とするガソリン価格の上昇に対処するため、米エネルギー省は9月2日、戦略石油備蓄(SPR)1200万バレルの原油を民間石油会社にリースするとともに、 3000万バレルもの原油を市場に売却した。
 さらに、国際エネルギー機関(IEA)は原油価格の上昇を抑えるため、加盟 26カ国が日量200万バレルの備蓄石油を30日間、市場に放出する協調行動 を採ることを決めた。当時は原油市場への投機資金の流入の影響が大きく、 備蓄石油の放出と国際協調行動は投機筋に対する一定のけん制的効果があっ たと評価された。

・ 【EWN】米国で拡大するマイクログリッドへの投資 2017/11/01

各企業がビジネスモデルを模索


 2011年の東日本大震災以降、従来の国内電力グリッドが、地震などの災害に対して脆ぜいじゃく弱性を有しているという指摘がなされて久しい。原子力賠 償を背負った東京電力をはじめとして、採算性の悪化している国内大手電力会社は、その脆弱性を是正するための巨額投資を行うことが 難しくなっている。
 一方、世界では従来の電力グリッドへ複数のプレーヤーが投資し、次世代電力グリッドへの移行を推し進める気運が徐々に高まりつつある。筆頭例としては、マイクログリッドへの投資が挙げられる。マイクログリッドは分散型電源と負荷によって構成されており、非常時には電力会社のグリッドと切り離して運用可能なので、災害に強い面を有している。
 17年の6月末時点では、全世界で運用中のマイクログリッドの電源容量は約854万kWに到達している。また、同時点で発表された17年における全世界のマイクログリッド電源容量の年間増加分は、当初の予想である200万kWを上回る約240万kWに達する見込みである。

・ 【スポット解説】北海道で地熱発電シンポ 2017/11/01

熱利用のハウス栽培にも関心


 地熱発電をPRするイベント「地熱シンポジウム in 函館」が10月17日、北海道函館市の市民会館であった。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が主催し、テーマは、「地熱開発と地方創生を考える~期待が高まる北海道~」。道内で唯一の大型地熱発電所がある森町や地熱発電所関係者らが参加し、地熱の活用や地域活性化について議論を交わした。
 シンポジウムは2013年12月から始まり、年1、2回ほど実施。初回が福島県福島市で開かれて以降、大分県別府市など各地の温泉地や地熱発電に縁のある地域計8カ所が会場となってきた。
 今回は、衆院総選挙のさなかに行われたが、地熱発電を推進する超党派の国会議員連盟で共同代表を務める増子輝彦参院議員(民進)が出席した。14年に改定されたエネルギー基本計画に触れ、「再生可能エネルギーの重要性が大きく増している。一度発電を開始すれば、24時間365日休むことなく働き続ける 地熱発電には優位性がある」と訴えた。また、「理解がまだ広がっていないのは残念だ。地方創生の大きな柱としても地熱は役立つ。さらなる促進をしていきたい」と述べた。

・ 衆院選で原発が争点のひとつに 2017/10/21

総選挙で各党が訴えた原発政策は


 10月10日に公示された衆院選は、「自民党・公明党」「希望の党・日本維新の会」「共産党・立憲民主党・社民党」の3極が争う構図だ。その主要各党の公約を見ると、憲法改正の是非や、2019年10月の導入を予定する消費税10%への増税とともに、原発政策が争点の柱のひとつだ。
 各党の原発政策のうち再稼働を明確に支持したのは、自民党、日本のこころの2党。ただ両党とも新増設には言及していない。自民党は、「エネルギー基本計画を踏まえ、原発依存度を可能な限り低減する」と明記した。一方、公明党、希望の党、日本維新の会の3党も、地元合意取得など条件付きで再稼働容認とした。しかし、このうち公明党と希望の党は、原発ゼロの実現も明記した。公明党はその目標期限、プロセスなどには触れていない。対して希望の党は、「新規原発の建設をやめることと40年廃炉原則を徹底する」ことにより、2030年までに原発ゼロを実現するとした。

・ 【エネルギーを見る眼】「予測」に基づく効率化の限界 2017/10/21

不確実性を無くすことは不可能


 さまざまな分野で、効率の追求が重要視されている。製造業では作業効率を上げること、流通ではより少ないエネルギーで物資を運ぶこと、エネルギー関連ではより少ない資源でより多くのエネルギーを取り出すことが重要な課題となっている。明らかに非効率な作業のやり方や、無駄が自明であることを減らしていくことに何ら異論はない。だが極端な最適性を追求するような効率化は、システムとしてのレジリエンスを低下させる可能性がある。
 作業効率を上げるための仕事のやり方に関しては、さまざまな本が執筆されてネット上にも情報が溢れている。より短い時間で最高の効率を上げるためにはどうすればいいのか。これは誰しもが知りたいことであろう。生産管理の分野ではトヨタのカンバン方式が有名で、1秒単位で時間を縮めて生産効率を上げる手法が世界的に認められ取り入れられている。旧来のやり方に比べれば、このような効率化の手法が有効であり、生産性の向上に寄与することは事実である。

・ 【EWN】変貌する世界のエネルギー需給構造 2017/10/21

主要国・地域の事情を分析する


 ロシアのプーチン体制は、エネルギーを武器にした理不尽な外交を今まで以上に展開するようになっている。ロシアは、石油と天然ガス、武器以外に競争力のある輸出品を持たない。また、油価に左右される経済を改革できない。ウクライナ問題による経済制裁を受けながら、EU諸国に対するガスや石油のパイプラインを中心にした供給で基本的な収入を確保し、もうひとつの売りの軍事力をシリアをはじめさまざまな地域で露出させながら、国の威信を高めて国民の支持を維持している。
 この政策は当分続くので、世界各国でロシア国営石油・ガス企業による政治的なビジネスが花開くが、成功はおぼつかない。わが国は、北方領土や平和条約問題で、ロシアとの和解と領土・資源問題の解決を望んでいるが、先行きは極めて不透明で危険だ。ロシアからは、エネルギーは売買契約でその都度、確保した方が安全だろう。ロシアはエネルギーソースの多角化には役に立つが、安全保障の役には立たないことを認識すべきだ。

・ 【スポット解説】FITからの自立は可能か 2017/10/21

バイオマス見直し議論に着手


 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格を決めるる、経済産業省の調達価格算定委員会(委員長=植田和弘京都大学名誉教授)が9月29日に開催され、認定量が急増しているバイオマス発電設備について、FITの認定要件を大きく見直す方向で議論を開始した。
 見直しの背景には、昨年12月の同委員会において、出力2万kW以上のバイオマス発電設備の買い取り価格を、今年10月以降の申請分から、1kW時24円を21円へ引き下げることを決定したのを機に、駆け込み申請が急増したことがある。3月末の認定量は1200万kWを超え、仮にこれらがすべて導入された場合、2030年度時点のエネルギーミックス(電源構成比)が目指す設備容量(602万~ 728万kW)と比べ、国民負担は約1兆円多くなる試算で、国民負担の膨張は避けられない。
 負担抑制に向け、資源エネルギー庁事務局は、既に大型の太陽光発電設備を対象に実施を決めている入札制度の導入を検討するほか、既設の石炭火力を転用する場合にはFIT対象外とするなど、認定要件を厳しくするこ とで導入量の適正化を図りたい考えだ。

・ 炭素価格付けの設計議論が本格化 2017/10/11

環境省の会合で電力部門への懸念相次ぐ


 炭素に価格付けし温暖化ガス排出削減を促すカーボンプライシングを日本に導入する場合、どのような制度設計が望ましいか――。環境省が2050年80%削減に向け取りまとめた「長期低炭素ビジョン」では、カーボンプライシングの重要性をあらためて強調しつつ、「制度の是非をめぐる議論に終始せず、導入した場合の効果・影響を分析しつつ、いかなる制度の在り方がわが国に適しているか、具体的検討を深める時期に来ている」と整理した。
 こうした議論を踏まえ、同省は6月に「カーボンプライシングの在り方  に関する検討会」(座長=神野直彦・日本社会事業大学長)を設置。9月29 日の会合では、気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決に資するカーボ ンプライシングの手法や対象、収入の使途などについて意見を交わした。
 

・ 【エネルギーを見る眼】新シルクロードとエネルギー安全保障 2017/10/11

一帯一路」構想の真の狙いは


 現代版のシルクロード構想が話題になっている。それは2013年に中国の習近平国家主席が提唱した新シルクロード(一帯一路)経済圏構想である。
 「一帯一路」は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ大陸にまたがる。中国西部か ら中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半 島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「海上シルクロード」(「一路」の意味)と いうエリアで、インフラ整備を中心に、貿易・投資を促進する構想である。
 ユーラシア大陸をまたがる壮大なスケールの経済圏構想がなぜ提起された か。その狙いは、中国が米国のアジアリバランス戦略を意識し、西側のユー ラシアへつながる古代の交易・交流ルートであるシルクロードを活用し、官民を 挙げてインフラ建設など投資・貿易活動を推進させて、石油などエネルギー 安全保障を図ろうとすることだ。

・ 【EWN】脱化石燃料の行方と天然ガスの将来見通し 2017/10/11

最大のエネルギー源となる可能性も


 天然ガスの21世紀半ごろ以降の将来的な位置付けはどうなるのだろうか。化石燃料の中で単位エネルギー当たりのCO2排出量が一番少ない天然ガスは、温暖化防止の規制が強まるほど需要は増え、エネルギーミックス全体の中での重要性は増していくと天然ガスの供給側は喧伝している。最新型の天然ガス発電では、発電電力量当たり従来型石炭火力の3割程度しかCO2を排出しない。従って、天然ガスの価格見通しはやや強気になる傾向がある。
 しかし、いわゆる「環境主義者」の多くは、天然ガスはせいぜいブリッジ・エネルギー、即ち化石燃料から再生可能エネルギーへの過渡的エネルギー源に過ぎず、いずれは、例えば今世紀後半には、ほぼ全面的な再エネ化で、世界の天然ガス資源は不良資産化して役割を終えるとしている。

・ 【スポット解説】長期予測で海外専門家と討議 2017/10/11

技術革新による変化に期待


 経済産業省は8月からエネルギー情勢懇談会を開催し、2050年に向けた長期的なエネルギー政策の方向性を検討している。9月29日、「地政学的リスクのトレンドなどについて」を議題に2回目の会合を開いた。海外から専門家として、英国王立国際問題研究所のポール・スティーブンス特別上席フェローと、米国戦略国際問題研究所(CSIS)のアダム・シミンスキーエネルギー地政学議 長を招き、エネルギー需給の長期見通しや地政学リスクについて意見交換した。発表では、両者とも資源価格など不確実な要因から長期予測の困難さを強調。一方で、再生可能エネルギーの発電コスト低下、電気自動車(EV)の技術向上などがエネルギー環境を変革する引き金になるとの見解を示した。

・ 注目集まる更田委員長の手腕 2017/10/01

原子力規制委をどう改革していくか


 「福島に対する強い思いを持ち続ける」――。9月22日、更田豊志氏が原子力規制委員会の委員長に就任した。更田氏は就任会見で、福島第一原子力発電所事故を繰り返さないことを原点に据えて、安全規制行政にのぞむ考えを示した。
 更田氏は、規制委の発足(2012年9月)と同時に委員に就任。原子力施設の新規制基準への適合性(安全)審査では、原子力施設の設備を担当している。初代委員長に就いた田中俊一氏とともに、福島第一原発事故を踏まえて誕生した新組織による安全規制行政をリードしてきた。更田氏は「田中前委員長の路線を継 承する」と述べている。田中氏が主導した規制行政には、電力業界や原子力 安全規制に詳しい専門家などから、「順法精神に欠け恣意的」「合理的でない」 「マネジメント能力に欠けている」などの批判の声が出ていた。
 

・ 【エネルギーを見る眼】温暖化対策に逆行する 脱原発と再エネ大量導 2017/10/01

CO2排出削減で各国のあべこべな政策


 2050年ごろをめどとしてCO2などの大幅排出削減を目指す、地球温暖化対策の「長期戦略」の検討が内外で進んでいる。そこでは、エネルギー需要の電化と電気の低炭素化の両方が必要とされている。だが足元で起きていることは、脱原発や再生可能エネルギーの大量導入であり、これは大幅な排出 削減という方針に逆行している。
 パリ協定では、20年までに地球温暖化対策の「長期戦略」を事務局に提出することを諸国に招請している。これを受けて、米国、英国、フランス、ドイツなどが、おおむね現状から80%程度のCO2などの排出削減を進めることを目標として、長期戦略の策定を進めてきた。その内容はだいたい似通っている。そしてどの国でも、電気の低炭素化と、電化の推進(最終エネルギーにおける電力の割合の増加)が、その主要な柱となっている。

・ 【EWN】ドイツが図るEV普及100万台に高い障壁 2017/10/01

充電スタンド、電力系統増強など多い課題


 ドイツ政府は2020年までに国内で100万台の電気自動車(EV)を普及させることを提唱し、それに伴う大々的な充電スタンドの増強を計画している。だが、15年12月時点の普及台数はわずか5.2万台であり、この目標の達成は非常に難しい状態にある。今年5月、メルケル首相はこの目標の達成は事実上不可能であることを公式に認めている。
 一方、マスメディアによる最近の報道では、具体的なバックデータの提示 がないまま充電スタンドの拡大を主張するものがある。充電スタンドの設置 コスト、電力系統の増強計画に関する情報が国民に正しく示されていないま ま、目標達成を急ぐことへの懸念が広がっている。

・ 【スポット解説】「福島事故で健康影響なし」 子どもの被ばくで報告書 2017/10/01

 日本学術会議は9月1日、福島第一原子力発電所事故による放射線被ばくへ の懸念を踏まえて、報告書「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」を発表した。福島第一原発事故に伴う放射線被ばくについては、健康への影響を懸念する声がいまも根強くある。特に、子どもたちへの影響を心配する人たちが多い。しかし、既に「健康への影響は考えられない」とする多くの論文や調査結果が国内外で出されている。国連科学委員会の報告は、健康リスクについて「今後もがんが自然発生率と識別可能なレベルで増加することは考えられない」と結論を出している。学術会議の報告書も「福島第一原発事故による胎児、子どもの健康への影響は心配ない」と明記。「実証的結果を得て、(健康影響の問題は)科学的には決着がついたと認識されている」と指摘している

・ 20年取引開始へ、容量市場の制度設計に着手 2017/09/21

自由化時代の供給力不足の回避なるか


 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会(座長=横山明彦・東大大学院教授)は、将来の電気の供給力(kW)を価値化し取引する容量市場の詳細制度設計に着手した。  容量市場の創設は、電力小売り事業が全面自由化される中で、電源投資にかかわる投資回収の予見性を高め、電源の新陳代謝を促進し、将来の深刻な供給不足を回避しようという狙いがある。自由化で先行する欧米などで既に導入されているが、日本は発送電分離が実施される2020年度の取引開始と、21年度の容量契約の発効を目指している。
 9月6日の会合では、①容量市場と需給調整市場との関係、②稀頻度リス クへの対応、③容量市場の地理的範囲、④容量オークション外の相対取引の扱 い、⑤容量オークションへの参加、⑥容量確保時期と契約期間――という6つ の論点について議論が交わされた。

・ 【エネルギーを見る眼】女性は男性よりも原発嫌いは本当か 2017/09/21

因果関係分析の失敗による誤解


 「統計データの解釈を間違えると採るべき戦略まで間違える」――これはマーケティングを学んだ方や、実務でマーケティングを担当している方には常識だが、意外と知られていないようだ。「女性は男性よりも原子力利用に反対する傾向が強い」という、よく引用される世論調査結果について、なぜそういう結果になるのかを正確に分析し、学術的な評価を加えた論文を、筆者は残念ながら見たことがない。「だから原子力のリスクについて、女性にも分かりやすく説明していくことが重要」なる示唆は山ほど見たことがあるのだが。筆者はこれこそ「因果関係分析の失敗」の典型例であり、それにより戦略を誤っている場合が多々あるのではないかと考えている。
 

・ 【EWN】石油は自動車の燃料に使われなくなるか 2017/09/21

AIの進展で変わる将来の動力


 フランス、英国は2040年までに、自国での内燃機関を使用する自動車の販売を停止する、と言っている。いろいろ政治的な駆け引きはありそうであるが、石炭がなくなって、石炭産業が日本から消えたわけではない。石油の埋蔵量が十分にあっても、今、石油が天然ガスに急激に転換されているように、水素や電気やそのほかのエネルギーに急激に転換される可能性はある。
 石油ピークはいつかとの問いが、2000年代初頭にブームになった。米国の地質学者ハバートが、1956年にハバート・ピーク理論を提唱した。内容は、生産がピークに達した後は、枯渇するまで生産は減少するというものだ。米国の生産は71年にピークを迎え、その後、ピーク時の生産量を超えなかった。 

・ 【スポット解説】環境省、電力調達の環境配慮基本指針を改定へ 2017/09/21

 環境省は8月29日、環境配慮型電力入札制度の見直しを行う「電力専門委員会」(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事)を開き、2018年度の制度改定方針の検討に着手した。検討会は年内を目途に改定内容をまとめ、18年度の国などによる電力調達に反映させる方針だ。
 この制度は07年に施行された環境配慮契約法に基づくもの。国の機関と独立行政法人、国立大学、地方独立行政法人(自治体などは努力義務)が電力調達契約を結ぶ際に、価格だけでなく環境配慮度合も含めて評価した上で事業者を選定し、契約する仕組みだ。同法に基づく契約は電力・自動車・船舶・建築物 など6分野に適用されている。
 一般競争入札の前に参加資格審査を行い、電力調達では、事業者のCO2排出係数、再生可能エネルギーの導入や未利用エネの活用の状況、グリーン電力証書の譲渡予定量、省エネ・節電への情報提供などを評価。70点以上獲得しているかを基準にする(裾切り方式)。また電源構成とCO2排出係数を開示し ていることも重視する。それらがクリアすることを確認して、価格競争入札の参加資格を付与する仕組みとしている。

・ 50年エネ政策に向けた検討始まる 2017/09/11

原子力利用で議論百出


 2030年に向けた中長期のエネルギー政策を示すエネルギー基本計画の見直しが、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会で、8月上旬から始まった。経産省は、基本計画見直しと並行し、「エネルギー情勢懇談会」を設置し50年に向けた長期的なエネルギー政策の在り方の検討も始めた。8月30日に初会合が開かれた懇談会では、年度内に意見を取りまとめ、基本政策分科会での基本計画の議論にも一部反映させる方針だ。世耕弘成経産相は「50年での議論として、地政学上の問題や、50年(温暖化ガス)80%減の約束にどう対応するのか、などがある。多面的議論をお願いしたい」と呼び掛けた。
 50年に向けた議論の視点として、経産省が前面に打ち出したのがパリ協 定への対応だ。これまでも、経産省は「長期地球温暖化対策プラットフォー ム」で、環境省は「長期低炭素ビジョン小委員会」で、50年の気候変動政 策に関する取りまとめを策定している。

・ 【エネルギーを見る眼】サウジとカタール 近親憎悪の根っこは 2017/09/11

長兄サウジと「弟たち」の複雑な関係


「サウジアラビアとカタールの関係はどうなるのか」という記者団の質問に、「言うこと聞かぬ家族をお仕置きしただけ」と、軽くいなしたのは、8月に京都の世界宗教者会議で来日した世界ムスリム連盟事務総長アブドルカリーム・イッサ師だ。師はサウジアラビア人で、1年前までサウジ法相を務めていた。それから2週間もたたぬうちに、カタールから“台風の目” になりそうな貴人がサウジにやって来た。
 アラビア半島からペルシア湾に鳥のくちばしのように突き出たカタールは、そのすぐ北にあるバーレーン島と並ぶ天然真珠の採集地だった。アラブ遊牧民に詳しい文化人類学者、故片倉もとこ氏によると、半島の遊牧民は夏になるとバーレーン島にやって来て、真珠採りをしていたという。最近までサウジ石油相を務めたヌアミ氏も「父親は真珠採りだった」と自伝に記している。カタールはバーレーンを基地とする真珠採りの出先で、18世紀半ばまでバーレーン・ハリファ家が支配していた。

・ 【EWN】カタール孤立で浮上するLNGと地政学的リスク 2017/09/11

サウジとの断交でも調達難は考えられず


 本年6月初めにサウジアラビアが主導する格好で、周辺のUAE(アラブ首長国連邦)やエジプトなどスンニ派の数カ国が現時点で世界最大のLNG輸出国であるカタールとの断交を決めた。現在も継続中だ。
 現時点で同国からのLNG供給に支障は全く生じておらず、現在メディア上でも沈静化しているが、当初は一部エネルギー関係者の間でLNGの供給遮断リスクへの懸念が取り沙汰され、一般メディアでもかなりその旨の報道があった。この集団断交は、サウジと同じスンニ派国でもあるカタールに不満を募らせたためだ。欧米流の公正中立なTV放送を標榜してサウジなどにも歯に衣を着せぬ報道を行っていたアルジャジーラを所有していることや、サウジが不倶戴天の潜在敵と見なしているシーア派のイランに対して融和的な態度を見せていることが許せなかった。

・ 【スポット解説】新技術で低炭素化推進 2017/09/11

エネ特会に8621億円を要求


 経済産業省は8月31日、2018年度概算要求の内容を発表した。エネルギー対策特別会計は17年度から147円増(1.7%増)の8621億円を計上。①福島復興、②エネルギー利用の低炭素化、③エネルギーセキュリティーの強化――の3つを重要項目に掲げている。
 中でも、福島復興はエネルギー政策の一丁目一番地として取り組むため、国が主導する福島新エネ社会構想や、福島イノベーションコースト構想のプロジェクトに向けて603億円を計上する。
 福島新エネ社会構想では、福島県を再エネや最先端エネルギー利用の先駆けの地にするため、太陽光発電や風力発電の導入を促進。共用の送電線や蓄電池の整備を後押しする。また、今年度から浪江町で始まった再生可能エネルギー由来の水素の製造・輸送・貯蔵技術の実証に継続的に取り組む方針だ。福島県の再エネで創出した水素を、20年の東京五輪・パラリンピック開催に合わせて、首都圏 に水素エネルギーとして送ることを計画している。

・ 原発新増設の議論は見送りへ 2017/09/01

エネルギー基本計画の見直し始まる


 経済産業省は8月9日、エネルギー基本計画の見直しを総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会で始めた。焦点の原子力発電の扱いについては、既に審議会の内外でさまざまな意見が飛び交っているが、経産省は新増設などには触れない方針だ。
 経産省は福島第一原発事故を踏まえて、2014年にエネルギー基本計画を策定している。そこでは、次の2つを柱として各エネルギー源への対応を決めている。①安全性を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率 性の向上、環境への適合を図ること、②平時、および危機時のエネルギーの需給バランスを安定的に確保するため「多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造」の実現を目指すこと――、。
 原発については「重要なベースロード電源」とし、「さまざまな重要な課 題の解決が必要」と明記。さらに火力偏重の現在のエネルギー構成を、「安 定性を欠く」と指摘し、その抑制を目指すことを表明。再生可能エネルギー、 水素エネルギー開発、省エネを進めると示した。

・ 【エネルギーを見る眼】パプアニューギニア紀行 2017/09/01

アジア太平洋地域最後のフロンティアで見たもの


 7月末から8月初めにかけ、パプアニューギニアの首都ポートモレスビー に出張した。
 2014年11月に初めて訪れて以来の2度目だが、前回は国際会議への参加 で、現地の人々に接する機会が少なく、ポートモレスビー市内を出ることもで きなかった。しかし、今回はパプアニューギニアの再生可能エネルギー導 入政策をレビューするアジア太平洋経済協力(APEC)プロジェクトで出張 したため、先方の政府や企業と議論する時間が長く取れ、ポートモレスビー 市街を離れる機会もつくれた。短期間で、パプアニューギニア全土のごく一部しか見ていないので、「パプアニューギニア紀行」という表題には羊ようとうくにく頭狗肉のそしりがあろうが、日本にとって馴染みの薄いこの国で考えた ことを記しておきたい。

・ 【EWN】競争激化で早期閉鎖も 試練に立つ米国の原発 2017/09/01

トランプ政権は原発支持を表明


 米国では、シェール革命による天然ガス価格の低下や、各州の再生可 能エネルギー利用基準(RPS)に起因する従来型電源の販売電力量減少な どにより、特に自由化された競争市場で電力販売を行う発電プラント(マーチャントプラント)は厳しい経営環境下にある。
 このような状況下で早期閉鎖の危機に立たされている原子力マーチャント プラントを運営する発電事業者が、どのような経営判断を下しているのかを 見ていく。
米国原子力エネルギー協会(NEI)は、今後10年間で早期閉鎖となる可 能性を有する原子力プラントは、シングルプラントサイトなどのコスト競争 力が低いプラントを中心に、15 ~ 20カ所あるとしている。このような状況 下で、米国の原子力発電事業者は早期閉鎖に関する判断を迫られている。

・ 【スポット解説】石油業界のリストラが本格化 2017/09/01

製油所の統廃合は待ったなし


 出光興産の公募増資が7 月20日に完了し、出光と昭和シェル石油の経営統合が実現に近づいてきた。これにより、石油業界はJXTGホールディングスと出光・昭シェルの2強体制に本格的に突入すると見られる。しかし、ガソリンをはじめとする石油製品の国内需要は、年率2~3%で急速に落ち込んでおり、合併により合理化を図っても供給過剰は免れない見通しだ。多くの業界関 係者が「これからが正念場だ」と指摘する。
 出光・昭シェルは2015年に経営統合を検討し始めたとき、「両社の精製能力を合わせると需給バランスはぴったり合う」と説明していた。だが、需要減少はその予想を上回るスピードで進んでいる。「2強は再編や市場環境の改善に取り組んできたフェーズから移行し、製油所の統廃合を含めた大胆なリスト ラに本腰を入れてくるだろう」と業界に詳しい有識者は見ている。

・ 経産省が高レベル処分で「マップ」を公開 2017/08/11

1500 程の市町村が処分の適性地に


 経済産業省は7月28日、高レベル放射性廃棄物の地層処分の適否を4色に塗り分けて示した「科学的特性マップ」を公表した。これを受け地層処分 の事業主体となる原子力発電環境整備機構(NUMO)は、対話活動計画を発表。今秋以降に開催予定の説明会の実施方針とその内容を示した。
 科学的特性マップは適否の判定要件・基準に基づいて、日本地図を4色 に色分けしたもの。具体的には①オレンジ=火山や活断層近傍など地下深部 の長期安定性の観点から好ましくない7要件などに合致する地域、②シル バー=石炭・石油・ガス田、金属など鉱物資源があり将来、掘削の可能性が ある地域、③グリーン=前出要件に該当せず好ましい特性が確認される可能 性が高い地域、④濃いグリーン=グリーンのうち海岸から約20㎞程度以 内で海上輸送が容易な輸送面でも好ましい地域(グリーン沿岸部)――の4 色に色分けされた。資源エネルギー庁によると、色分けを面積比でみるとオ レンジが約30%、シルバーが約5%、グリーンが約35%、濃いグリーンが 約30%。グリーンと濃いグリーンに含まれる市区町村は1500程度と説明 する。

・ 【エネルギーを見る眼】容量市場に経過措置が不可欠な理由 2017/08/11

広域機関は消費者利益のために奮起を


 電力システム改革において、積み残された課題の議論が少しずつ進んでい る。そのひとつに容量メカニズムがある。電力を生み出すキャパシティ(kW) に支払い、事前にこれを確保する制度だ。容量メカニズムは、調整力公募から始まり、kW全体に支払う容量市場の創設も経済産業省の電力システム改革貫徹小委員会により決定された。今後の詳細制度設計では、需要曲線の作成手法とならび、新設・既設電源の区別の可否と経過措置が論点となる。
 貫徹小委でも認められた通り、容量市場により、kWに対して固定的な支払いがされても、その分消費者の負担が増えるわけではない。もしこれが電源投資を促す効果があるなら(なければ容量市場の意味がないのだが)、これによって電力供給量が増え卸価格が下がる。

・ 【EWN】世界最大のLNG輸出国カタールは孤立化するか 2017/08/11

輸出への影響は限定的との見方が有力


 サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンなど4カ国は6月5日、カタールとの断交を急きょ発表した。世界を驚かせたこの唐突感のある断交宣言には、サウジの国内事情が影響したとの見方がある。
 サウジでは6月21日、ムハンマド副皇太子が勅令により新たな皇太子に就いた。サウジの実質的な最大権力者になったムハンマド皇太子は、国内では「ビジョン2030」でサウジの国内経済体制の石油依存型からの脱却、その一歩としてサウジアラムコのIPO(新規株式公開)の実現化、ソブリンファンドであるPIF(公的投資資金)の設立とその運用拡大など、国内改革を進めている。
 歳入強化策として、物品税、国内に居住する外国人約1000万人への人頭税、付加価値税、奢侈品税などの導入による徴税強化と水・エネルギーなどへの補助金の撤廃に向けた政策を矢継ぎ早に発表している。

・ 【スポット解説】計画値同時同量順守徹底へ 2017/08/11

インバランス発生に厳正措置


総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会(座長=横山明彦・東大大学院教授)は7月26日、インバランス料金の算定方式を見直す方針を決めた。パブリックコメントを経て、10月1日にも新方式に移行する。これと合わせ、インバランス発生事業者に対しては、厳しい監視や、指導・勧告を実施していくことも確認した。
 インバランス算定には、小売り事業者が精算単価を予見しづらくするために、系統全体の需給状況に応じた調整項「α値」が設けられている。一方で、現行ルールでは、新規事業者に過度なペナルティーを課すことで参入障壁とならないよう、変動幅に制限が設けられているため、実際のαの変動幅は極めて狭 く、計画値同時同量のインセンティブとして十分に機能していないのが実情だ。

・ 関電値下げで近畿圏は“総合戦”に 2017/08/01

大飯再稼働で“消耗戦”に突入も


 関西電力は高浜原子力発電所3・4号機(出力各87万kW)が再稼働したことにより、8月1日から全平均で4.29%の料金値下げを行った。昨年4月からの小売り全面自由化後、経過措置として規制が残る部門は3.15%、それ以外は4.9%引き下げる。
 東日本大震災の後、関電は保有する原発の停止により2回(2013年5月、15年6月)値上げを行っている。このうち15年6月の値上げは、高浜原発3・ 4号機、大飯原発3・4号機(同各117.5万kW)が13年5月の値上げの際の想 定よりも稼働が遅れたため、電源構成変分認可制度により、燃料費の増加分 を料金に反映させたものだった。

・ 【エネルギーを見る眼】波紋広がる中東主要国とカタールとの断交 2017/08/01

背景に長年の湾岸諸国連合内の対立


 サウジアラビアを含む主要中東諸国がカタールとの国交を断絶してひと月半が経過した。中東の緊張感は高まっているが、今のところエネルギー価格への影響は限定的である。
断交の発端は5月23日、カタールのタミーム首長によるシャマル兵役訓練所の卒業式で演説であった。首長は演説で「イランは、ムスリム同胞団をテロ組織に分類し、ハマースやヒズブッラーの抵抗運動としての役割を否定しており、同国への批判は不適切である」と発言。続いて、「イランは地域において無視できない力を持っており、カタールは米国、イランの双方と同時に強い関係を築くことに成功している」と述べた。

・ 【EWN】FLNGがけん引する新規の天然ガス開発 2017/08/01

LNG調達で日本は大きく出遅れも


 過去10年の間に巨大ガス田群が続々と発見された東アフリカ・モザンビーク沖で7月、同海域初のLNG出荷案件の投資意思決定がなされた。日 本ではほとんど報じられなかったが、将来の世界LNG市場、日本の調達な いし関連ビジネスにとって潜在的にはかなり画期的なものだ。
 巨大な埋蔵量を誇る同海域での初のLNG出荷案件として、主操業者のイタリア企業ENIが決定した開発方式は、所有鉱区内の一部の深海ガス田の 直上に年間生産量340万tの浮体式洋上天然ガス液化設備(FLNG)を設置 し、直接タンカーを横付けにしてアジア方面に出荷するというもの。その投 資額の約6割がプロジェクト・ファイナンスで賄われる。

・ 【スポット解説】規制委が東電経営陣を批判 2017/08/01

暗雲立ち込める柏崎再稼働


 東京電力が新々総合特別事業計画の実行に動き出した矢先、原子力規制委員 会が新経営陣の姿勢を批判した。柏崎刈羽原子力発電所の新規制基準への適合性審査が大詰めを迎える中、再稼働が遠のきかねない事態に陥っている。
 7月10日、規制委が開いた経営陣との臨時会合で、川村隆会長や小早川智明社長は「福島の責任をまっとうすることが最優先課題」などと強調。しかし、福島第一原発の汚染水への対応など、国の審議が不十分なため東電が判断を保留していることについて、田中俊一委員長は「廃炉の責任は東電にあるのに主体性が見えない」と苦言を呈した。また、川村会長が報道陣に対して、トリチウム処理水の海洋放出について「委員長と同じ意見だ。東電として(放出の)判断はしている」と発言したことに反発。田中委員長は19日の会見で「私を口実にして原発事故を起こした当事者として逃げるのはおかしい。はらわたが煮えくり返る」と憤った。

・ 電力業界が警戒する経産省人事 2017/07/21

剛腕次官は力量発揮か


 7月4日の午後、ある経済産業省OBの携帯電話は鳴りっぱなしだった。相手は電力首脳陣。判で押したかのように、こんな会話が交わされていた。「嶋田さんは何をしようとするのか」「われわれはどう対処するべきなのか」――。力のない声を耳にした経産省OBは、これから押し寄せようとする電力業界の試練を感じ取ったという。
 この日の朝、各省の幹部人事が閣議了解を経て発表された。注目された経産省では菅原郁郎次官が退官し、通商政策局長を務めていた嶋田隆氏が次官の座を射止めた。嶋田氏と言えば、事務官時代から将来を嘱望され、今では安倍晋三首相の懐刀である今井尚哉総理秘書官、資源エネルギー庁長官である日下部聡氏とともに、「昭和57年組の三羽がらす」と称されてきた。傍から見れば至極順当な人事とも言えるが、実際には永田町を巻き込んだ熾烈な駆け引きが展開されていた。

・ 【エネルギーを見る眼】気候変動で人類が備えるべきことは 2017/07/21

自然が急激な気候変動を起こすことも


 エネルギーの問題を考えるとき、どのくらいの時間スケールで考えるかという点が議論のひとつのポイントとなる。産業革命以来の文明の急速な進歩に伴いエネルギーの消費量も増大し、その結果として大気中のCO2量が増加し地球温暖化が起こり、このままでは地球は危機的な状況に陥る可能性があるとIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は警告している。しかし、地質学的な時間スケールでの地球の気候変動の大きさを考えると、どのような状態を「正常」と考えるかという本質的な問題が浮かび上がってくる。

・ 【EWN】事業環境の変化で苦境に立つ仏EDF 2017/07/21

株価は過去最低を記録


 EDF(フランス電力会社)グループはフランス電力市場において発電事業、小売事業、配電事業までを手がけ、圧倒的なシェアを誇る同国最大の電気事業者である。
株価は2007年11月に85ユーロを超えていたが、その後時間をかけてゆるやかに落ち続け、今年3月末から5月上旬にかけては遂に8ユーロを下回る低水準を記録した(17年7月5日現在は8.97ユーロ)。
 16年度の年度報告書によると売上高は約8兆5400億円、営業利益は約9000億円、発電容量は約1億4700万kW、従業員数は15万5000人弱となっており、時価総額は今年7月時点で約3.2兆円に上る(1ユーロ=120円換算)。
原子力発電だけでなく、風力・太陽光などの再生可能エネルギーにも注力しており、他の欧州電力会社からは後れを取っているものの、発電容量は約120万kW、建設中のものも含めると300万kWに達する予定である。

・ 【スポット解説】海外依存からの脱却を図る米大統領のエネルギー政策 2017/07/21

 トランプ米大統領が6月29日に米ワシントンで、またG20の参加を前にした7月5日にポーランドのワルシャワでエネルギー政策についてスピーチを行った。
スピーチで注目されるのが米国のエネルギー支配力の確保と、オバマ前政権時代に設けられた規制の緩和を進めるという2点。これまでの主張の延長にあるが、外交と絡めたことに特徴がある。
トランプ大統領は内政問題に忙殺されたためか、エネルギー政策では2月の一般教書演説と6月の気候変動をめぐるパリ協定からの脱退以外は、自ら目立った発言をしなかった。そのため一連の演説は、世界のエネルギー関係者の間では注目を集めている。

・ 大手電力の電源切り出し、45.6万kWへ 2017/07/11

卸取引活性化の具体策を検討


 経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合(座長=稲垣隆一弁護士)が6月27日に開催され、卸電力取引の活性化に向けた旧一般電気事業者の自主的取り組みの実施状況などが報告された。
 電力システム改革を貫徹する上で、経済産業省が重視しているのが、卸電力取引の活性化だ。大手電力会社が、自社電源や相対契約などによって国内のほとんどの電源設備を確保している中で、新電力が市場を通じて安い電気を購入する機会が拡大すれば、事業者間の競争が促進され電気料金の低減につながるとの考えからだ。
 経産省が大手電力会社に求めている自主的な取り組みとは、①各社が保有する発電設備の余剰分の卸電力取引所(JEPX)への供出、②電源開発(J-パワー)や地方公共団体と長期契約している電源の可能な限りの新電力への切り出し、③グループ内取引をスポット市場に移行する「グロスビディング」の実施――だ。

・ 【エネルギーを見る眼】石油備蓄を加速する中国の狙い 2017/07/11

20年に輸入量の100日分を目標に


 中国のエネルギー需給ギャップは10年前の2億8680万tから2016年には6億4354万tにまで増大している。なかでも石油の需給ギャップは1億8450万tから3億7900tにまで拡大し、対外依存度は65%強と高まっている。こうした中でエネルギー安全保障に備える主要な措置である国家石油備蓄の動きが目立っている。
国家発展改革員会や国家統計局と商務部の発表によると、中国は2016年末までに備蓄原油は3325万tの原油を備蓄している。これは16年の輸入量(3億5760万t)の34日に相当する。
 政府は、第10次5カ年計画(2001~05年)において、「石油などの戦略備蓄体制の整備を早期に確立する」との政策を打ち出した。04年3月に第1期基地の地点として大連(遼寧省)、黄島(山東省)、舟山(浙江省)、鎮海(浙江省)を指定。備蓄事業を始め、14年11月の時点で備蓄容量は1640万㎥、備蓄量は1243万tに達した。

・ 【EWN】米国のパリ協定離脱で温暖化防止が加速も 2017/07/11

LNG大量供給でガス火力に転換


 トランプ大統領は6月2日、「パリ協定」からの離脱を発表した。既に米環境保護局の職員の20%にあたる3200人の人員削減を盛り込んだ予算を発表していたと報道されている。環境保護のための過度の規制は必要ないという選挙中からのキャンペーンをそのまま実行に移している。
 地球温暖化の国際的枠組みからの離脱は、政権のエネルギー政策であるシェールガス・オイルの増産、国内での石油・ガスの探鉱・開発の促進、環境規制の一部撤廃による火力発電の促進など、自国のエネルギー産業の活性化を進め、自給と雇用の拡大を目指し、経済の活性化を達成するという選挙公約実施の一歩だと考えられる。
 もちろん米国の離脱は、トランプ支持派の白人炭鉱労働者たちの保護にはならない。石炭は、シェールガスを中心にした天然ガスとのコスト競争に敗れたのであって、温暖化対策のための環境規制を緩めたからと言って探鉱労働者の職を増やすことにはならないことは自明である。

・ 【スポット解説】福島復興に新基本方針を決定 2017/07/11

 福島復興再生特別措置法の改正に伴う新しい福島復興再生基本方針が6月30日に閣議決定された。同法や基本方針の改正は、東京電力の除染対策費用の一部を免除する代わりに、福島の復興再生に向けてこれまで以上に人的・技術支援などの拡大を求めることが狙い。復興の流れが加速する中で、福島県内での東電が果たすべき役割と期待が一層増している。
法改正の最大の眼目は、特定復興再生拠点区域の復興と再生を推進するための計画制度の創設だ。

・ 新生東電、福島への責任は果たせるか 2017/07/01

新々総特の実現に向け始動


 廃炉、賠償、除染の費用として年間5000億円の利益を稼ぎ出し、福島への責任を果たすことはできるのか――。6月23日、東京電力ホールディングスは会長に川村隆氏、社長に小早川智明氏という新体制が発足し、2026年までの10年間の経営方針を示した新々総合特別事業計画の実現に向け始動した。
 「16兆円とか22兆円という数字は驚天動地。できない数字だとしても最後まで責任を貫徹しなければならない。経営陣は自分を捨ててでも挑戦するしかない」。23日に都内で開かれた株主総会で、新々総特が非現実的だとの株主の指摘に対し、數土前会長はこう力強く訴えた。
 しかし別の株主からも、「(數土前会長の発言について)地に足のついたことを言ってほしい。決意だけでは困る」「昨年の総会で、數土会長は新総特が十分進んでいると言ったのに、『7月に経営破たんする』との発言があった。新々総特は本当に大丈夫なのか」と懐疑的な意見が相次いだ。

・ 【エネルギーを見る眼】破壊的イノベーションによる省エネ量は試算できるか 2017/07/01

ICTの進歩で経済成長しつつCO2削減も


 物理学者ファインマンは1959年の講演「下の階には沢山が部屋ありますよ」で、微細加工技術が進むことで、どれだけ多くの情報処理が可能になるか、理論的に計算してみせた。情報の保存に必要な原子の数を勘定し、ブリタニカ百科事典をペンの頭に埋め込むことも出来るとした。ご案内のように、今ではこれは実現している。
 ファインマンの予言は他にも多岐にわたり、情報通信技術が微細加工により飛躍的に進歩を遂げる可能性を理論的に指摘した。まだ半導体というと、ようやく1958年にはじめてテキサツインスツルメンツにおいて集積回路が発明されたばかりだから、驚異的な予言だ。このような情報通信技術(ICT)の進歩によって、経済成長しつつCO2を削減するという「デカップリング」が実現するという見方がある。これは本当だろうか。

・ 【EWN】メタハイは夢の国産資源か それともただの土塊か? 2017/07/01

生産コストは1m3当たり150万円以上に


 今年4月から再び国のメタンハイドレート生産テストが、渥美半島~志摩半島沖にかけての水深約千mの海域で行われ、例によって多くのメディアに生産テストが成功したと既に大々的に報じられた。その後、生産パイプ内に、海底下のハイドレート層に大量に含まれる砂が大量流入したため、生産テストは前回同様に中断を余儀なくされたが、毎回、このメタンハイドレートの生産テストは多くのメディアの関心を呼んでいる。
 いわく「日本の貴重な純国産資源」、「現在の日本のガス消費量の約百年分もある」、「数年後にも実用化、商業化される可能性がある」などの喧伝によって、一部の政治家、外交・防衛関係者や経済人から一般人に至るまで、「夢の資源」として期待する雰囲気が醸成されているといっても過言ではない。
 しかし、現時点で近い将来の国産メタンハイドレートの商業化のめどは全く立っておらず、現在の国の商業化計画は事実上の絵に描いた餅にすぎない。それどころか、冷静・客観的に考えれば、永久に商業化できない「夢の資源は永久に夢のまま」の可能性も高い。

・ 【スポット解説】課題多いLNG ハブ化構想電力・ガスは海外市場に進出 2017/07/01

 経済産業省は6月21日、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)資源燃料分科会を開催し、今年4月にイタリアで開かれたG7エネルギーサミットでまとめた「LNG市場戦略」のフォローアップを行った。戦略では2020年代前半までに日本をLNG取引の中心地(LNGハブ)とすることを目指すとし、その実現のために①LNGの取引の容易性(トレーダビリティ)向上、②需給を反映した価格指標の確立、③取引を支えるインフラの整備――の3つの要素を重要とした。しかし、会合での経産省の説明から、3要素の実現が難航している現状が明らかになっている。 

・ 波紋広がる米国のパリ協定離脱 2017/06/21

政権内の異論を押し切ったトランプ大統領


 米国のトランプ大統領は6月1日、気候変動防止の国際的な枠組みとして結ばれたパリ協定について、離脱する意向を表明した。全世界の2割弱と中国に次ぐ温室効果ガスの排出国である米国の動きは、世界のエネルギー情勢に影響を与えそうだ。
 トランプ大統領は、離脱を表明した演説で次のように述べている。「他国が米国のパリ協定残留を期待するのは、米国を経済的に不利にできるからであり、パリ協定残留を求める国々は貿易、防衛で米国に多大なコストを掛けている」
「パリ協定離脱は米国の主権であり、外国からとやかく言われるべきではない。自分を選んだのはピッツバーグ(記者注・鉄鋼の生産の集積地)などの米国市民であり、パリ市民ではない」

・ 【エネルギーを見る眼】原発廃炉に欠かせない合理的な視点 2017/06/21

「廃炉は資産の除去」との認識を


 「これから日本は原子力発電所の大量廃炉時代を迎え、廃炉ビジネスに大きなチャンスが生じる」――。このように考えている方がもしいたら、電気事業者の身にもなっていただきたい、と強く申し上げたい。結論から述べるが、廃炉は合理的に実施すべきである。雇用や地域振興はその副次的な効果としては大いに結構であるが、それが最優先の条件であるわけではないことをご理解いただきたい。
 筆者は3年ほど前、2022年までの脱原子力を目指して既設炉の廃炉を進めているドイツを訪問し、廃炉事業についてオペレータと相談しているエンジニアリング企業A社の責任者に話を聞いたことがある。白状すると、筆者はかつて電力会社の廃止措置部門で働いていたころ、こちらに十分な予算がないことを承知の上でさまざまな技術を売り込みに来るエンジニアリング会社の方々にほとんど恨みに近い感情を持っていた。厳しい安全審査を受けなければならないこちらの弱みに付け込んで技術を売りつけることしか考えていないのか、そちらの大儲けはこちらの大赤字だ、という具合である。

・ 【EWN】課題解決に連携する欧州の電気事業者 2017/06/21

環境目標達成に取り組む欧州電事連


 自由化が進む欧州のエネルギー業界は激しい競争にさらされている。一方、保護主義の台頭と主要国の政権選挙、ロシアや中国などのエネルギー分野を含むプレゼンス拡大、地球環境問題に懐疑的な米トランプ政権の誕生など、エネルギー・環境をめぐる情勢は目まぐるしく変化している。そのような環境下における欧州電気事業連合(EURELECTRIC)の動向をについて見ていく。
 欧州各国の発電、送電、配電事業者の代表組織であった国際発送配電業者連盟(UNIPEDE、1925年設立)と、エネルギー政策を議論する年次総会を主催していた電気事業協調欧州委員会(EURELECTRIC、89年設立)が、電気事業者の声を一本化してECに対応していくため2000年1月に合併。欧州電事連が設立された。
欧州では90年の英国での電力自由化開始を皮切りに、欧州委員会(EC)によるEU指令に基づき、11年までに電力事業者の発送電が完全分離された。またECは11年3月に、50年までに温室効果ガスを90年の水準から80%削減するという目標を掲げ、「低炭素経済ロードマップ2050」として発表した。

・ 【スポット解説】原子力機構で作業員が被ばく プルトニウムは検出されず 2017/06/21

 日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターで6月6日、作業員がプルトニウムと濃縮ウランが入った貯蔵容器を点検中、放射性物質が入ったビニールの袋が破裂し、被ばくするトラブルが発生した。点検を行っていた作業員5人は口や鼻をふさぐ半面マスクをしていたが、すぐに行われた検査で、3人の鼻腔内から3~13ベクレルの放射性物質が検出された。また肺に沈着したプルトニウムなどを計測する肺モニタによる検査が行われ、最も被ばく量が多かった作業員から2万2000ベクレルのプルトニウム239が検出された。 

・ 高レベル廃棄物の処分に新策 2017/06/11

処分候補地「マップ」提示に向けて


 進展が見られない高レベル放射性廃棄物の地層処分について、前進するよう国が対策に力を入れている。経済産業省資源エネルギー庁は5月31日、地層処分の研究開発について、関係機関の連携を図る「地層処分研究開発調整会議」の初会合を開いた。2017年度を期限とする現在の全体計画を改定し、18~22年度を期間とする計画を今年度内に策定する。
 また、経産省と原子力発電環境整備機構(NUMO)は5月14日、都内で処分地選定の考え方、進め方などを紹介する地層処分のシンポジウムを開催した。東京を皮切りに6月までに全国計9カ所で開催し、地層処分の適性地域を日本地図上に示す「科学的特性マップ」の提示に向けて、理解を求めていく方針だ。
 これまで高レベル廃棄物の地層処分の研究開発は、国と日本原子力研究開発機構(JAEA)が中心になり進めてきた基盤的な研究開発全体計画と、NUMOが進める応用的研究の中期技術開発計画の2本立てで進められてきた。

・ 【エネルギーを見る眼】シリア難民にハイテク・キャンプを 2017/06/11

福島で集められた救援物質を届けて


 縁あって、福島県郡山市に集められた救援物資をトルコ国内のシリア難民キャンプに“確実に”届けるルートづくりのため、トルコに行ってきた。たまたまNHKのオイルショック時(1973年10月~12月)の騒ぎを“油乞い外交”と冷やかされた“三木ミッション”を通じて回想するという番組の取材を受けた直後だった。ちなみにオイルショックとは、エジプト、シリア両軍がイスラエルに先制攻撃を仕掛け、サウジアラビア、クウェートなどアラブ産油国が「親アラブでない国には石油供給を毎月5%カット」という“石油戦略”を発動、西側先進国にショックを与えた事件だ。トイレットペーパーや洗剤の買い占め騒動が起こり、日本人が中東、アラブの重要性を理解した最初の出来事だった。

・ 【EWN】急速に経済成長するインドのエネルギー戦略 2017/06/11

石油メジャー育成の動きも


 インドは中国と並んでエネルギーの爆食国と言われて久しい。1991年ごろから国民会議派のラオ首相とシン財務相が規制緩和を柱とする経済改革を開始して、経済の安定性と成長率が高まり、2000年以降大きく効果が表れ始めた。03年から08年途中までは6年連続で7%を超える同国史上、未曾有の景気拡大が続いた。
 12年は経済の鈍化が鮮明になったが、14年のモディ首相によるインド人民党(BJP)政権の発足から経済は上向き、7%を超える成長を続けている。中国の10%台の急成長継続と比較すると成長にばらつきがあり、平均すれば6~9%台になる。しかし、08年のリーマンショック期間を除いて高い成長率を続けており、世界の新興国の代表のBRICS(ブリックス)の中では、資源価格低下の影響を大きく受けているロシア、ブラジル、また過剰な設備投資と不動産バブルなどで景気の鈍化している中国を尻目にインドだけが安定している。

・ 【スポット解説】インバランス料金制度を見直し 予見性の低減が課題に 2017/06/11

 昨年4月の電力小売り全面自由化と同時にスタートしたインバランス料金制度の見直し議論が本格化した。インバランス精算単価が卸市場価格よりも高いか、安いかを新規参入者が予見できてしまう現行制度では、事業者が意図的にインバランスを発生させて利益を得ることが可能で、計画値同時同量順守のインセンティブとして機能していないことが課題となっていた。

・ 海外進出へ軸足を変える石油政策 2017/06/01

高度化法3次告示施行へ


 経済産業省が石油政策での方針転換を打ち出している。4月7日、今後の石油精製・流通政策の在り方を検討した「石油精製・流通研究会最終報告書」を発表した。その中では「石油精製業者には、製油所の国際競争力の強化やアジア市場の獲得に向けた取り組みを加速化することにより、縮小する国内石油製品市場に売り上げの大半を依存する状態から脱却し、アジア市場をはじめ、ほかの成長分野に事業ポートフォリオをシフトすることで将来の安定的な経済基盤の確保につながるような取り組みを行うことが期待される」と明記。
 これまで、経産省は消費地精製方式を前提に過剰精製設備の廃棄を進め、恒常的な製品輸出には消極的だった。これを改め、製品輸出や海外事業進出、総合エネルギー産業化など、事業拡大を促している。

・ 【エネルギーを見る眼】エネルギー安全保障概念の変容 2017/06/01

脅威と保護対象の多様化


 1979年、第2次石油危機の最中に旧通商産業省に入省してから、30年近い在職中に何度かエネルギー政策に携わった。そのたびに「エネルギー安全保障」という概念に出会い、その概念を用いて政策を考え、対外的に説明してきたが、正確にはどのような意味か、米国留学で学んだ国際関係論における「安全保障」とどのように関係するのか、はっきりしない部分があるように感じた。審議会で知り合った京都大学大学院エネルギー科学科研究科の神田啓治教授(当時)にこうした問題意識を述べたところ、研究して学位論文にまとめてはどうかとアドバイスされた。指導を受けながら論文を書いたのは、ちょうど新世紀の始めごろであった。

・ 【EWN】米・英・中で減りドイツで増える CO2排出 2017/06/01

石炭から天然ガスへのシフトが大幅削減に貢献


 英国では今年4月21日に産業革命以来、初めて石炭による発電量がゼロになるという歴史的な現象が起きた。また国際エネルギー機関(IEA)の最新の推計では、英国では昨年、CO2排出量が前年比で6%も減少した。際立った排出量削減の最大要因は、石炭火力から天然ガス・コンバインド・サイクル発電へのシフトだ。
 2015年に発電量シェアの23%を占めていた石炭火力が、16年には9%まで急減していたのに対し、天然ガスによる発電量は30%から44%まで急上昇した。火力全体の発電シェアは53%と全く変わらなかったにかかわらず、火力の中で石炭から天然ガスへの雪崩的なシフトが生じたことでCO2が大幅削減したのだ。

・ 【スポット解説】FITで木質バイオマス拡大するも 林産業の近代化が課題に 2017/06/01

 急拡大する太陽光や風力に対して出遅れ気味の、バイオマスの普及をどう図るべきか――。自然エネルギー財団やスウェーデン大使館、世界バイオエネルギー協会は5月22日、都内でシンポジウムを開き、欧州のバイオマスエネルギー利用先進国の最新動向を踏まえ、日本での普及策について話し合った。日本では再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)でバイオマス発電の普及は進んでいるものの、木材産業の発展がおろそかになっているといった指摘が挙がった。

・ 東電再生のカギを握る柏崎刈羽再稼働 2017/05/21

新たな経営再建計画を国に申請


 東京電力ホールディングス(HD)と原子力損害賠償・廃炉等支援機構は5月11日、新経営再建計画「新々・総合特別事業計画」(新々総特)の認定を国に申請した。
 福島第一原子力発電所事故の関連費用増大などを踏まえ見直されたもの。翌日開かれた経済産業省の有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委)で審議され、会合の後、伊藤邦雄委員長(一橋大大学院特任教授)は、「非常にポジティブな評価」「東電委員会の提言に沿っているという認識が一致していると思う」と評価した。国は東電委での審議を踏まえて、月内にも同計画を認定する見通しだ。

・ 【エネルギーを見る眼】不可解な旧 一般電気事業者の営業活動 2017/05/21

支配的事業者は矜持を持って営業を


 家庭用も含めた電力市場の全面自由化から1年が経過した。家庭用市場での新電力への切り替え率は予想よりも低かったが、関東・関西・北海道などの地域では一定の数字に達している。さらに全面自由化の前後から、既に自由化されていた大口市場での競争も激しくなり、新電力が獲得していた需要家が旧一般電気事業者に奪還される例も数多く出ている。
 旧一般電気事業者の激しい値下げと営業攻勢は、新電力からの競争圧力に直面して効率化に努め、コスト競争力が高まった結果であれば望ましいこと。しかし、そうでなければ、必ずしも問題ない行為とは言えない。
 例えば航空市場で、新規参入者の便の前後の自社便だけ差別的にコスト割れの価格をつけて新規参入者を潰しにかかる価格戦略は、仮に黒でないとしても灰色で、効率化によって全体に値下げする価格戦略とは区別すべき。新電力の顧客の契約更新時を見計らって差別的に不当廉売をしているのか、健全な価格競争の結果なのかを見極めるためにも、監視等委員会は価格情報を網羅的に収集する必要がある。

・ 【EWN】環境対策で地位を確立する米国の電気自動車 2017/05/21

6年後には経済性でガソリン車と同等に


 昨今、欧米を中心にちまたの話題になっている電気自動車(EV)だが、その歴史は意外と古い。EV の開発の始まりについては、今からおよそ100年以上前に遡る必要がある。19世紀末には、米国の都市部では既に内燃機関の蒸気自動車やガソリン車とともに、鉛蓄電池を使用したEVが販売されていた。当時の売上も上々で、ガソリン車の名車「T型フォード」が発売されるまでは、自動車市場ではある程度のシェアを有していた。
 その後、ガソリン車の急速な性能向上と低価格に対抗しえず、自然と市場から淘汰(とうた)されてしまったものの、石油の供給が危ぶまれる度に、EVへの期待が高まった。
 1990年代以降、欧州を中心とした各国間の政治的な働き掛けも相まって、人々のライフスタイルの中へ徐々に環境保護意識の浸透が始まった。21世紀に入り、その影響は移動手段である自動車にも及び始める。元々ガソリン車などの内燃機関搭載車よりもエネルギー効率が格段に良いEVは、低環境負荷の象徴として、今後急速に拡大する兆しが見えている

・ 【スポット解説】原子力規制委でトップ交代 更田豊志氏が新委員長に 2017/05/21

 政府は4月、衆参両院の議員運営委員会に原子力規制委員会の委員長に更田豊志委員長代理を昇格させる人事案を提示した。田中俊一委員長は9月に5年の任期を満了し退任する。
 規制委員長のポストについては、田中氏の続投説が昨年末から流れていた。田中氏本人は激務による体調不良などから辞意を漏らしていたとされるが、原子力規制庁や環境省の幹部は続投を政府与党に打診。しかし田中氏の規制委運営に不満を持つ議員らが続投に難色を示した。特に、立地地域出身の議員らが電力会社や立地自治体とのコミュニケーション不足を批判したと言われる。田中氏の後を継ぐ委員長として、田中知(さとる)委員の昇格が検討されたようだが、規制委設立以来、委員を務め、「田中路線」を継承する更田氏が昇格した。

・ 大口で急速にシェアを伸ばす新電力 2017/05/01

経済省が電力・ガス全面自由化の進捗状況などを報告


 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会の会合が4月21日に開催され、1年が経過した電力小売り全面自由化の進捗と4月1日にスタートしたばかりの都市ガスの小売り全面自由化の進捗状況などが報告された。
電力自由化の進捗を測る指標のひとつとなっている新電力への電気契約の切り替え(スイッチング)件数は、1月末時点で全契約数の3.9%に当たる約246万件だった。一方で、大手電力内の規制料金から時勇メニューへの切り替え件数も同じくくらいあり、約237万件に上がっている
 新電力へのスイッチング率は東京電力管内が6.1%と最も高く、中国電力(0.3%)と北陸電力(0.9%)の管内が低い。大手電力内の契約切り替えは中部が13.1%と最も高く、北海道や沖縄、東北が低い。
注目されるのは、全面自由化以降のkWhベースの新電力シェアだ。2000年の部分自由化以降、特別高圧・高圧分野における新電力のシェアは、長い間2~3%にとどまってきた。それが、昨年7月に10%を超え、全面自由化による大口市場への波及効果の高さがうかがえる。

・ 【エネルギーを見る眼】石油供給過剰は解消されたのか 2017/05/01

IEA中期石油需給見通しからの分析


 足元の原油相場(WTI)は、4月下旬以後、期近ものが1バレル当たり50ドル台で推移している。産油国による減産延長の思惑から買いが先行しているものの、米国内の供給過剰状態が続くとの警戒感は根強い。
 米国シェールオイルの増産基調が続くとの見方は根強く、原油需給の緩和が見込まれている。その中で、サウジアラビアのファリハ石油相は4月20日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国を中心とする減産措置の延長に関し合意は形成されつつあると述べた。また、クウェート石油相も減産延長の見通しを示唆したため、減産延長が原油の需給改善につながるとの観測が強まっている。
 こうした一連の流れの中で、国際エネルギー機関(IEA)は3月、2022年までの中期石油見通しを発表した。本年の見通しは、OPECの協調減産が実施される中で発表されたため、石油市場に再び管理者が戻ったとの前提に立った内容となっている。昨年見通しは、石油市場の供給過剰で原油価格が20ドル台に下落した直後だったため世界は自由市場を経験していると論じた。

・ 【EWN】石油業界の再編で和製準メジャー誕生か 2017/05/01

再編に動く経産省のシナリオは


 東京電力ホールディングスは4月3会長に川村隆日立製作所元会長、社長に小早川智明・東京電力エナジーパートナー社長が就任する人事を発表した。日立のV字回復を成し遂げた川村氏を経産省はどうしても新会長に就けたかった。若い小早川氏が旧体制の東電からの離脱のシンボルにされた。難問続出の東電グループをどのように解体、毎年5000億円もの福島第一原発事故の再生費用を捻出しながら再生してゆく力技が要求される。
 この東電解体・再生の過程ではエネルギー企業の電力・ガスなどの境界を越えた再編や統合が起きる予感がする。一方石油業界では、JXTGホールディング誕生をはじめとする日本の石油業界の枠内での販売・精製シェアの取り合いのための合併と再統合の動きが活発だが、エネルギーの種類を超えた、また上流・下流の専門分野を超えた再編と合併は起きるのだろうか。
石油業界はずばりコスモ石油の将来が再編の鍵となる。これがきっかけで上流企業と下流企業が合体し、和製準メジャーの端緒となる動きが出るかもしれない。

・ 【スポット解説】総務省が「森林環境税」を検討 高市総務相は早期創設に意欲 2017/05/01

 総務省は森林環境の保全を目的とする「森林環境税」(仮称)の検討に入った。4月21日、「森林吸収原対策税制に関する検討会」(座長:小西砂千夫関西学院大大学院教授)の初会合を開催。冒頭にあいさつした高市早苗総務相は「森林環境税は市町村が主体となって森林整備を行う財源を確保するための税制として創設するもの。自治体の意見を十分に聞き、専門的な見地から幅広く検討を進めていきたい」と述べ、早期創設に意欲を示した。同検討会は秋に取りまとめを行い、2018年度税制改正への反映を目指す。

・ 温暖化対策「3本の矢」で50年80%削減へ 2017/04/21

カーボンニュートラル達成に新たな視点


 経済成長を犠牲にせず2050年温暖化ガス80%削減という難題解決に向け、経済産業省の長期地球温暖化対策プラットフォーム(PF)は4月7日、報告書案をまとめた。国内や業種内で閉じた従来の延長線上の取り組みではなく、新たな視点で、日本の排出量を超えた地球全体での削減(カーボンニュートラル)を目指す「温暖化対策3本の矢」を提案。①国際貢献で各国が貢献量の多寡を競う仕組み、②ライフサイクルで低炭素化につながる製品を普及し、グローバル・バリューチェ-ンでの削減に視野を広げること、③有望な技術分野のイノベーション促進――を掲げた。報告書は4月中旬にも正式に策定する。
 環境省の長期低炭素ビジョン小委員会も3月、50年以降のビジョンをまとめている。温暖化対策と経済成長の両立を掲げつつも、50年80%減は必達目標と整理。そのために、エネルギー需給構造で低炭素電源9割以上が必要など、各分野の絵姿を示した。

・ 【エネルギーを見る眼】リスク情報の正しい活用 2017/04/21

あくまで相対的な比較の根拠として


 この連載では何度もリスクという言葉が使われているが、私が委員を務めている総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループでは、福島第一原子力発電所のような事故を2度と起こさないために、現在リスク情報を活用した意思決定に関した議論を行っている。このRisk Informed Decision Making(RIDM)の概念は、原子力分野に限らず合理的な規制を実現するために広く適用されることが期待されている。
 しかし、従来の規制の枠組みは主に決定論的な考え方に基づいており、一般的なリスク概念の理解レベルが低い現状では、RIDMの導入に向けて克服しなければならない課題も多い。

・ 【EWN】LNG・原油の安値局面は当分継続する見通し 2017/04/21

トランプ政権の対イラン政策が不安定要因


 昨今のOPECとロシアの協調減産発表にもかかわらず原油価格が一向に上昇しない。減産合意直後に、IEA(国際エネルギー機関)が減産は結構よく守られているとの推定を発表したため、早々にバレル60ドル台までの上昇を見込んだ専門家もいたが、見事裏切られた格好だ。
 そもそも、OPECが組織としての減産を通じて、価格上昇や維持に長期間成功したことは歴史上一度もない。これは、初歩のミクロ経済学が教えるところの「カルテルは裏切りのインセンティブに満ちた脆弱(ぜいじゃく)なもの」と言う定理の典型のようなカルテル組織がOPECであり、実際の価格の守護役は、極論すればサウジの単独原産のやせ我慢のみであって、サウジも長期やせ我慢には耐えられないし、今回もその例に漏れないと多くの市場参加者から見られていることが一因だ。

・ 【スポット解説】容量市場創設の検討を広域機関が経産省に要請 2017/04/21

 電力広域的運営推進機関(広域機関)は3月30日、電気事業者から提出された計画をとりまとめ、2017年度の供給計画を経済産業相に提出した。電気事業法29条2項の規定により、広域機関は業務指針やこれまでに得られた知見などを踏まえて、供給計画の提出に合わせて経産相に意見を述べることができる。17年度計画では、今後10年の間に供給予備率が適正値から下がると予想されることから、容量市場の創設など3点について対応を求めている。

・ 東京電力が改革断行に経営陣を一新 2017/04/11

会長に「日立V字回復」の立役者・川村氏


 東京電力ホールディングス(HD)は4月3日、記者会見を開き、会長に川村隆・日立製作所元会長、社長に小早川智明・東電エナジーパートナ(EP)社長が就く人事を発表した。6月に開かれる株主総会と取締役会の了承を経て就任する。數土文夫会長は退任し、廣瀬直己社長は新設の副会長(福島総括)に就く。
 またパワーグリッド(PG)、フュエル・アンド・パワー(F&P)、EPの各カンパニーのトップと社内取締役も一新(表参照)。新体制で、16兆円にも上る福島第一原子力発電所事故関連費用の捻出など、山積する課題に挑むことになった。
 会長に就く川村氏は1962年に東大工学部電気工学科を卒業し、日立に入社。重電部門を歩み、姫路第二発電所6号機や島根原発1号機などの開発に携わっている。副社長を経て2003年にいったん退任。子会社の会長に就いたが、09年、リーマンショックなどの直撃を受け悪化した日立の経営再建のために呼び戻された。経営効率化、リストラなど、やるべきことのリストを100日でまとめ、スピード感を持って再建に挑み、同社の「V字回復」の立役者と呼ばれている。また、昨年10月に経済産業省が立ち上げた東電改革・1F問題委員会の委員を務め、自らの経験を踏まえて議論で主導的な役割を果たしたと言われている。

・ 【エネルギーを見る眼】経済の転換で変貌する中国のエネルギー事情 2017/04/11

高まる非化石燃料のシェア


 経済の転換・産業構造の高度化に伴い、中国のエネルギー情勢は大きく変化してきている。エネルギー・資源多消費産業の生産能力の削減などからエネルギー情勢の変化を
中国のGDP実質成長率は、2011年以降大幅に下降しており、11年から14年までは年平均8%にダウンし、さらに15年に7%を割って6.9%となり、16年も6.7%に減速している。産業別付加価値の増加率も11年から大きく変化。第2次産業、3次産業の付加価値の増加率は10.3%、9.4%から14年には6%、8.3%まで下がり、 15年に鉱工業生産は過剰設備・余剰生産能力の拡大や在庫削減に伴い、前年比1.3ポイント減の6%と、同統計が始まった1998年以来最も低い水準になっている。

・ 【EWN】スマートメータ―活用でCO2削減 目標を達成へ 2017/04/11

英国事業者が図るマネジメントサービス


 英国では2020年までに家庭用・小規模商業用の電力・ガス需要家に約5300万台のスマートメーターを導入する目標を掲げている。その背景として、スマートメーターの導入によって省エネやデマンドレスポンスなどのエネルギーマネジメントサービスが普及することにより、CO2排出の削減目標の達成に近づける狙いがある。加えて、小売り事業者にとっては、導入により従来型メーターで発生していた検針や管理、供給者変更などのコストの削減が期待できるという事情がある。
 これまで多くの小売り事業者は四半期ごとの料金請求と立会検針を実施してきたが、顧客が不在の場合も多く、検針率が低いことが課題であった。英国ではメーターが屋内に設置されることが一般的で、EDFエナジーでは検針率が約50%であり、顧客不在の際は顧客自身が検針を行うケースも見受けられていた。

・ 【スポット解説】透明な石油価格確立に向け経産省がガイドラインを策定 2017/04/11

 経済産業省は3月24日、石油流通の透明・公正化に向け、元売り会社と系列ガソリンスタンド(SS)や特約店との取引に関する「ガソリン適正取引慣行ガイドライン」を策定した。総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)資源・燃料分科会が2016年7月に公表した中間論点整理で、「ガソリンなどの石油製品の流通における卸取引の透明化・適正化について議論を深め、事業者に対するガイドラインの策定を進めるべき」と提言。これを受けて、16年秋から石油精製・流通研究会で検討してきた。

・ 危機に瀕する日本の原子力産業 2017/04/01

東芝はウエスチングハウスを「損切り」へ


 東芝は米国子会社のウエスチングハウス社(WH)について、米連邦破産法11条の適用を申請する。現在、米国内で4基の原子力発電所を建設するWHは、工事の遅れなどから損失が拡大し、その額がどこまで増えるか見えていない。破産法が適用されれば損失額が確定し、また東芝は同社を連結から外すことができる。
 WHが事業を継続するには他企業からの支援が必要となり、既に韓国・中国企業の名が取りざたされている。一方、原子力技術流出の心配があり、わが国の原子力産業の弱体化も避けられない。今後の行方を懸念する業界関係者は多い。
 WHを支援する企業として、まず明らかになっているのは、韓国電力公社(KEPCO)だ。東芝は英国仏エネルギー建設会社のエンジー(ENGIE)社と共に、英国中部のムーアサイド原発に原子炉を3基つくる予定があるニュージェン社に出資している(株式の6割を保有)。KEPCO首脳は2月、その株式を取得する交渉をしていることを明らかにした。

・ 【エネルギーを見る眼】大型炭素税の導入は温暖化対策に効果あるか 2017/04/01

部門別・燃料別の政治的配慮が必要


 経済全体のCO2排出に一定の税率を以て大型炭素税を導入しようとすると、どのような政治的配慮が必要になるだろうか。
 家庭部門ではエネルギー消費の大半は電気とガスであって、石油は減少傾向にある。現在、電気とガスはサービスあたりのCO2排出量ではしのぎを削っている。すると、電気とガスの間では、代替が起きるとしても、CO2削減は量としてはあまり期待できない。
 石油については、高い税率を課するならば、もちろん価格効果も代替効果も発生すると思われるが、これはありそうにない。というのは、家庭用の石油については、政治的配慮によって、高い炭素税を課することは難しいからだ。
 石油は、まだ暖房用途に多くが使われている。特に、これは北海道などの寒冷地で家計に影響する。これを価格効果で減らせるだろうか。価格効果というと、無色透明な感じがするが、実際には「貧乏人は使うな」というに等しい残酷なものになる。現実には、暖房用の石油は減・免税にせざるをえないだろう。このような政治的配慮は現実には避けて通ることが難しい。

・ 【EWN】石油経済から投資国家へ変貌するサウジアラビア 2017/04/01

米国とサウジを仲介したIT業界の“風雲児”


 世界最大の国営石油会社、サウジアラムコの株式公開(IPO)は早くとも2018年後半以降、おそらく19年以降になると言われている。上場時価総額は約230兆円ともみられ、日本側には東京にも上場場所を誘致したい意向がある。サルマン国王が来日時にこれをお土産とし、東京での上場を発表する可能性もあると言われていたが、実際は、東証、経済産業省とアラムコで東証上場についてのIPOの共同研究会をつくることになっただけだった。
 サウジは国家収入の80%を石油の輸出に依存しているため、原油安の影響で財政は赤字が続く。そこで昨年ムハンマド副皇太子が「サウジビジョン2030」を発表し、その中で「脱石油経済、投資国家への構造改革が重要」と唱えた。その要がサウジアラムコのIPOである。想定される上場取引所はニューヨーク、ロンドン、アジア(1カ所)なので、東証は難しいと噂されているが、米国とのすき間風によりニューヨークが外されれば、東証の可能性も出るとも言われている。