EPレポート

・ 【スポット解説】経産省が安定供給継続を要請 エネルギー事業者は体制を強化へ 2020/05/15

新型コロナウィルス感染対策では、政府が4月7日、「緊急事態宣言」を発令するとともに緊急経済対策を発表した。その後、与野党や世論の批判を受け、16日には緊急事態措置実施区域を全都道府県に拡大、緊急経済対策の一部見直しを追加発表するなど、迷走ぶりを見せている。 一方、産業界は、事業継続に全力を注いでいる。特に指定公共機関などに指定された電力・ガス事業者は、経済産業省による安定供給継続の要請も踏まえて、感染防止対策と安定供給確保策を徹底。また、石油業界も安定供給確保に向けた取り組み強化を推進中だ。 経産省が8日に公表した電力・ガスへの安定供給継続要請では、全国の電力、ガス会社や電力広域的運営推進機関などを対象に安定供給継続に向けた対策の徹底を要請。具体的には、業務計画の順守とともに、発電所や中央給電指令所、ガス製造所などの重要施設の職員が感染した場合に備えて、①代替要員の確保など人員計画の精査、②代替施設の活用、③サプライチェーンの混乱長期化を見据えた代替的な調達先の確保 など必要な物品・資機材の安定的な調達--など、BCP(事業継続計画)対応の徹底を要請した。同時に、工事会社や設備の保守・点検事業者、警備会社などとの連携強化も促した。これを踏まえ同省は10日、電気事業法、ガス事業法、高圧ガス保安法、液化石油ガス保安法に基づき保安検査・点検期限の延長を認める制度改正を行い、関係機関に通知した。

・ 【視点】新型コロナが招く出力制御の増加 2020/05/15

 新型ウイルス感染が米国内で最も広まっているニューヨーク州の電力需要は、4月第1週目に前年同期比8%減と大きく落ち込んだ。カリフォルニア州でも電力需要は5%から8%下落している。加州は他州より再エネ比率が高く、需要減の影響を大きく受けそうだ。  温暖化問題への取り組みに熱心な加州は、再エネからの発電量シェアを2025年までに50%、30年には60%にし、45年に100%を目指す州法を制定している。加州政府によると18年の発電量に占める比率は、太陽光・熱14%、風力7.3%だ。発電用設備量では太陽光・熱1180万kW、風力610万kWを持つ。小規模太陽光設備も多くあり加州の全太陽光設備は2740万kWだ。全米の電力事業用発電設備は11億9650万kW、うち太陽光・熱3220万kW、風力9500万kW。加州が太陽光・熱発電で大きなシェアを占め1位だが、加州の10年の太陽光・熱発電設備量は48万kWにすぎなかった。  太陽光設備の急速な伸びは出力制御を招くことになり、その制御量は年々増えている。18年実績では出力制御量は4億6000万kW時、率は1.1%だったが、今年第1四半期の出力制御量は18年同期比3.3倍に伸びている。加州では送電網の中での蓄電池の導入も行われているが、その量は限定的だ。コロナ感染による需要減少に加え、加州では今年から低層の建物新築時には太陽光パネルの設置が義務付けられたので、晴天の昼間の需要量はさらに減少し、出力制御量は増える。

・ 非常事態下のニューヨーク電力供給 2020/05/15

過去の教訓を踏まえて非常事態に対応


米国では新型コロナウイルスが猛威を振るい、特にニューヨーク州では、市内はロックアウトされ、経済活動はほぼ停止している。しかし、電気事業は過去の教訓を踏まえて周到な準備をしていたため、非常時の中でも電力の供給を継続している。  ニューヨーク州は、NYISO(ニューヨーク独立系統運用機関)という発電・小売事業者から独立した非営利組織が、送電システムの運用および電力取引市場の運営を行っている。 1965年に発生した大規模な波及停電事故の反省から、翌年、州内の8電気事業者が、それまで個別に行っていた電力系統を一体運営すべくNYPP(ニューヨーク・パワープール)を設立。中央給電機能を持つパワープールとして運営された。96年には、ニューヨーク州規制委員会が競争的な卸売市場および小売市場の導入を決定し、99年、電力自由化の進行に伴いNYPPを改組してNYISが発足し、現在に至っている。  経済活動の低迷により、電力需要も減少している。NYISOによると、ニューヨーク州では、電力需要は3月末までは前年比2%程度の減少だったが、4月には4%に拡大した。 現在(4月21日)のところ、電力系統の運用は問題なく、電力取引市場も正常に行われている。しかし、再生可能エネルギーの導入が盛んな地域では、需要減少時に電力系統の運用が困難になり、停電が起きており、今後さらに需要が減った場合は、系統運用が困難を増すことが懸念されている。

・ 【エネルギーを見る眼】ロスアトムのコロナ対策 不測事態への対応を重視 2020/05/15

有事への備えは平常時の代替案検討が重要


本稿執筆中の2020年4月20日、新型コロナウイルスの世界での感染者数は240万人余り、日本では「緊急事態宣言」が全国に拡大された。原子力業界でも全世界レベルでコロナウイルス拡大の影響が出ている。しかし、いくつかのケースを見ると、国や実施主体により、その影響の度合いには明らかに差異があることが見て取れる。 ロシアの国営原子力企業ロスアトムは4月7日、ロシア製原子炉VVER2基を建設中のバングラデシュ・ルプール発電所で建設工事に従事する4000人以上の作業員のうち、コロナウイルスの感染拡大に伴いロシアへの一時帰国を希望する178人にチャーター機を手配したと発表した。 4月20日現在、ロシアでのコロナウイルス感染者数は4万2853人であるのに対して、バングラデシュでは2456人であり、人口比・増加率ともにロシアのほうがはるかに多い。このことからはロシアに戻らずバングラデシュにとどまった方がむしろリスクが低いようにも思えるが、バングラデシュでパンデミックが起きてからでは祖国に帰りたくとも帰れなくなるので、今のうちに帰りたいという希望もあるのであろう。なお、ロスアトムは、「下請け企業を含む作業員の一時帰国が、建設プロジェクトをスケジュール通り遂行する上で支障になることはない」と述べている。 同じくロシア製原子炉を建設中のベラルーシ・オストロベツ原子力発電所においてもコロナウイルス感染者が出ている。ベラルーシの保健省大臣Vladimir Karanikは4月8日、

・ 【EWN】コロナが及ぼす長期的変化 石油需要減でLNG価格低下 2020/05/15

新規供給量の伸びは2025年に停滞


新型コロナウイルス(COVID-19)の性格が1918~19年のスペイン風邪(世界全体で4000~5000万人死亡、日本は25~50万人死亡)に似てきた。仮に一地域・国でいったん終息に向かっても、国際的な人的移動を一部でも再開すれば、第2、3、4次流行が不可避と考えられ(スペイン風邪は第2次流行の方が死者数は多かった)、世界的な終息には最短でも2年程度はかかると多くの感染症専門家から指摘されている。 従って、世界経済縮小に伴うエネルギー需要の減退は、規模も期間もリーマンショックの比ではなく、1929年の大恐慌に匹敵する。中でも、運輸・交通用エネルギー需要の大半を占め、同時に総需要の半分程度が輸送交通分野である石油が当面最大の需要減退に直面することになる。 例えば、世界の石油需要は今年第2四半期に日量1000~2000万バレル(つまり、世界需要の10~20%)の消費量が消滅する可能性があり、今年1年間の需要減も10%程度になる可能性が十分にある。  このような急激かつ大規模な需要減退は、150年余りの石油の歴史で初めての事態であり、それに加えて既にOPEC(石油輸出国機構)のカルテル機能が崩壊して、サウジアラビアなど湾岸産油国の大増産がなされている。4月10日にサウジアラビアとロシアがトランプ米大統領の斡旋もあって1000万バレル程度の減産に合意した事で、いったん北海ブレント価格は若干値を戻したが、再びバレル当たり20ドルほどにまで低迷している。

・ 電力システム改革は総仕上げの段階に 2020/05/01

発送電分離で本格的な競争時代に突入


4月1日、大手電力会社の送配電部門を分社化する「発送電分離」が実施された。これに伴い、16年に他社に先駆けて送配電部門を分社化した東京電力と垂直一貫体制が維持される沖縄電力を除く、大手電力会社とJパワーから分離された送配(変)電会社9社が新たに誕生した。 2015年の電力広域的運営推進機関(OCCTO))設立、16年の電力小売り全面自由化に続く電力システム改革の最終段階と位置付けられた発送電分離の実施のより、戦後構築された垂直一貫体制が終焉。電力事業にとって大きな転換点となった。 (送配電網の中立性を確保) 発送電分離には、自由化分野である発電と小売りに参入した事業者が、送配電系統を共通インフラとして公平に利用できるようにする狙いがある。それ以前も、03年の制度改正で「会計分離」が導入され、情報の目的外利用や差別的な取扱いの禁止などの取り組みが行われてきた。しかし会社を分割し、発電・小売りとの兼業を不可とする「法的分離」による発送電分離を実施することで、送配電の透明性・中立性がより一層高まることが期待される。  システム改革の最終段階と位置付けられるものの、改革はこれで終わりではない。電力事業を取り巻く環境は、発送電分離を決めたシステム改革議論の当初に想定された姿とは大きな隔たりがあり、さらなる改革は不可避。最も大きな環境変化は、太陽光をはじめとする再生可能エネルギー電源の普及拡大であることは言うまでもない。

・ 【エネルギーを見る眼】コロナ問題での感染防止 行動変容を促す施策を 2020/05/01

自粛は意識やモラルに頼らず補償を示して


 新型コロナウイルス感染拡大の問題は予想を超えて広がりをみせ危機的状況が続いている。この原稿を書いている2020年4月12日においては、緊急事態宣言が発令され全国的な雰囲気は変わりつつあるが、感染拡大の傾向にはまだ歯止めが掛かっていない。 この問題に関してはこの連載で度々言及してきたリスク認知の問題が深く関係している。現在進行しつつあるこの感染拡大において人々の行動様式を決定するのはこのウイルスがどれだけ「ヤバイ」と思うかというリスク認知である。そしてそのリスク認知に大きな影響を与えるのは「情報」である。 (後知恵での議論の無意味さ) 最初に今メディアに溢れている後知恵での議論の無意味さを指摘したい。現在の状況を知っていれば、1カ月前、2カ月前にすべきだったことを指摘することは容易である。春節の時期に中国からの入国を全てシャットアウトしていれば、状況は全く違っていただろう。しかし、それができたかどうかを今議論しても意味はない。政治的な状況と中国へのさまざまな分野での依存度を考えると現実的にそのような決断を下すことは誰にもできなかった可能性は高く、それができなかった政府を批判することはできないと私は思う。

・ 【視点】コロナ危機の先に浮かぶ新時代 2020/05/01

新型コロナウィルスで世界経済は深手を負った。各国政府は巨費を投じて回復を目指す。その一方、この先の新たな世界像も浮かぶ。1月に開催された恒例のダボス会議の議論からその姿を想像してみたい。 統一テーマ「資本主義は自ら格差を正せるのか」の下、 円卓会議ではステークホルダー資本主義を巡る議論がTV放映された。 ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授は、「米国は約40年前、企業の目的は株主利益の最大化であると信じて法的枠組みに採り入れた。以来、短期的利益の追求、小さな政府、規制緩和、寡占化、大企業の繁栄、格差拡大という道を今日まで歩んできた。この弊害を是正するためには、ステークホルダーを株主のみに限定せず、労働者・社会・環境に至る全ての利害関係者を含める変革が必要だ」と述べた。 教授の主張は、国連の現在の取り組みと同一線上にある。15年に採択された「持続可能な発展のための諸目標」だ。企業活動に対し国連は、ESG(環境・社会・統治)という社会的価値の追求を求めている。 教授は「米国では昨年、大企業経営者のロビー団体が株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換を宣言したが、ESGへの具体的な取り組みはまだこれからだ」と語った。 注目されたのは、韓国のSKグループの会長が紹介したESG経営の姿だ。

・ 【EWN】カーボンニュートラルを宣言 再エネ事業に注力するRWE 2020/05/01

2040年までに化石燃料を使用した発電から撤退


ドイツでは2022年までの脱原子力、38年までの脱石炭が法制化され、各発電所がスケジュールに従って閉鎖される見通しとなっている。 事業者は、これらの環境の変化に対応するよう、事業ポートフォリオの見直しを進めている。例えばE.onとRWEの間で事業資産の交換・再編が実施され、E.onが配電・小売り、RWEが発電事業に特化する動きがある。 RWEはもともと、ドイツ有数の工業都市であるエッセン市を中心に電気事業を展開し、炭鉱も有する従来型火力発電の大手事業者だった。近年、卸電力市場価格の低迷などから事業性が悪化し、改善のため16年には再エネ・配電・小売事業を子会社、イノジーに集約した。収支の明確化や株式市場からの資金調達、それによる電気事業の再構築を意図したものだった。さらに事業分野の集中化を図るため、18年3月、E.onとの資産交換を合意し、RWEは発電事業に特化することとなった。 18年末時点でRWEはドイツ国内の発電設備容量の25%を保有する事業者となる。また、E.onとの資産交換後は、中国を除き世界で2番目の洋上風力発電事業者、4番目の再エネ事業者となる見通しである。 RWEは19年1月、再エネ事業を推し進めるため、事業子会社、RWE リニューナブルスを設立すると発表した。同社の4事業の一角に位置づける。 さらに19年9月「新生RWE」を掲げ、40年までに化石燃料を使用した発電から撤退し「カーボンニュートラル(炭素中立)」を達成する目標を発表するとともに、新しいロゴやコーポレートカラーを発表している。

・ 【EWN】新型コロナが石油産業を直撃 続発するシェール企業の破綻 2020/04/24

金融システムにリスク伝搬の懸念も


 新型コロナウィルスが世界で猛威を振るう中、石油産業もかつてないほどの衝撃に直面し、世界経済にさらなる暗雲をもたらそうとしている。 原油価格(WTI)は一時、1バレル当たり20ドルを割り込み、およそ20年来の低水準となった。この水準はほとんどの石油企業にとって持続不可能なレベルである。特に懸念されているのは、シェールオイル、オイルサンド、海底油田といった、比較的高コストな油種を扱う事業者である。 4月1日、米国のシェール企業ホワイティング社が「チャプター11」を発動し、破綻処理のプロセスに入った。今年の価格下落の中で破綻した中堅シェール企業の第1号となった。 同社は、かつてノースダコタ州のバッケン鉱区で最大の生産量を誇ったが、その後、生産不振により業績が悪化。企業評価額は2011年に付けた150億ドルから99.8%下落し3200万ドルとなっていた。破綻に際し、約22億ドルの債務削減を新株との交換などを条件に債権者と合意。今後もこれまで通りの操業を続けるとしている。 今後、同様に破綻するシェール企業が続発すると考えられる。もともと、価格が下落する前の18年秋頃から、資本市場がシェール企業から引き上げ始めており、厳しい経営環境が続いていた。既に18年に28社、19年は50社程のシェール関連企業が破綻している。市場では、再建のプロセスに入っている企業として、アンテロリソース、 カリフォルニアリソース 、 ガルフポートエナジー、チェサピークエナジー――などの名前が上がっている。

・ 原子力規制委の透明性に重大疑義 2020/04/24

設立当初から続く密室での意思決定


 原子力規制委員会は、「透明で開かれた組織」を理念の一つとして掲げている。具体的には、「意思決定のプロセスを含め、規制にかかわる情報の開示を徹底する」と明言している。しかし、その組織理念を疑わざる得ない事態が起きている。  毎日新聞は1月4日、「規制委が2018年12月の関西電力に求める原発の火山灰対策を決める委員会(公開会議)に向けた非公開の事前会議の場で、2案のうち1案を退ける方針を決めたのに、議事録を作らず、参加者に配布した資料も回収・廃棄していた」と報じた。  報道後、更田豊志委員長は記者会見で「資料を基に議論した事実はない」と記事内容を否定。国会でも「(報道は)事実ではない。私自身も(2案の)文書を見た記憶はない」と答弁していた(3月10日、参議院内閣委委員会)。 (音声公開で発言内容を修正)  しかし、毎日は3月25日、事前会議を録音した音声記録を公開。音声により、会議で更田氏が「(2案のうち)1案の方がすっきりする」などと話していたことが明らかになった。すると、更田氏は発言内容を修正する。「資料に基づく議論をしなかったというのは、徹頭徹尾2案から1案を選択するための意思決定のための議論はしていなかったという意味」などと釈明。事前会議については、「あくまでブレーンストーミングの範囲」と述べている。だが、音声での発言との矛盾は明らかで、詭弁との印象がぬぐえない。

・ 【視点】コロナ危機対応から見える希望と不安 2020/04/24

 新型コロナウイルス感染拡大により世界的危機に直面している。パンデミック(感染の世界的大流行)危機下でも世界は協調した対応に成功していない。中国で最初の感染が始まり、今や欧米が感染拡大の中心になっている。米国大統領の中国ウイルスという軽はずみな発言に中国は強く反発している。感染者数の発表についても政治的操作があるのではないかという疑念が出ている。感染者数が検査の数に依存するのは確かであるから、コロナ肺炎による死者数に注目すべきである。その点では政府関係者も言っているように、わが国はギリギリのところで感染爆発に耐えていると言えるだろう(4月1日時点)。  感染が終息していない現段階で新型コロナウイルス対応を評価するのは時期尚早であるが、私が感じている希望と不安を簡潔に述べたい。ここで言いたいことは、どの対応が優れているとか劣っているとかいう評価ではない。焦点は、デジタル社会における感染症対応から見える希望と不安である。

・ 【エネルギーを見る眼】自主行動による環境政策 海外との競争のゆがみに 2020/04/24

呉製鉄所の閉鎖が意味するもの


25年ほど前、内房線の特急に乗って君津製鉄所の工場見学に参加する機会に恵まれた。それはどのような経緯であっただろうか、今は思い出せない。ただその一行は労働問題や労使関係を学ぶ院生からなり、二人掛けの隣には引率する労働経済学の先生が座り、少しばかり緊張したことを記憶している。 当時の私は修士課程に進学したばかりで、生産活動におけるエネルギー・資源投入など、米国の経済学者ホリス・チェネリー教授による工学的生産関数の製鉄での応用を考えていた。一行とは異質の問題意識を持つものの、アクアラインのない時代、弧を描く小旅行に気分は高揚した。 高炉の迫力に息をのみながらも、議論では自ずと労働問題が中心となり、夕方には製鉄所の方々とお風呂で一日の汗を流した。どうも自分が幼く感じたものだ。ものづくりは人づくり、という。製鉄所はその「場」であり、またそうした時代でもあった。

・ 電力インフラに迫るサイバー攻撃 新電力を巻き込んだ対策が必須 2020/04/15

 世界各国の電力インフラが、サイバー攻撃を受けている。現在までに日本の電気事業は被害を免れているが、「弱点」を抱えており、東京オリンピック・パラリンピックを前に対策が求められている。  ウクライナでは2015年、16年の二度にわたり、電力インフラをターゲットにしたサイバー攻撃によって大規模停電が発生。IT先進国のドイツも、18年だけで国内送電網に対し、19件ものサイバー攻撃が行われていたという。  新型コロナの影響で開催が危ぶまれている東京五輪も格好の標的になるだろう。  18年の平昌冬季五輪では、大会準備期間中に約6億件、大会期間中に約550万件もの攻撃があり、メインプレスセンター内でネットワークサービスに接続できない、大会公式サイトで入場チケットの印刷ができないなどのトラブルが起きた。12年のロンドン五輪では、「電力システムへの集中攻撃があった」と、大会組織委員会のサイバーセキュリティ担当者が明かしている。五輪とサイバー攻撃は切っても切り離せない関係にある。

・ 【スポット解説】「気候危機」あおるEUに反論 経産省が日本の主張発信へ 2020/04/15

EUが、2050年までの温暖化ガス実質排出ゼロ(ゼロエミッション)に向けた対策を次々打ち出している。昨年末、脱炭素化と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」を発表。その実行策として、「気候法案」の発表や、EU域内並の温暖化対策を実施していない地域からの輸入品に課税する「国境炭素税」の導入、企業活動が持続可能か否かを分類する「タクソノミー」の策定などを進めている。  一方、50年ゼロエミにコミットせず、石炭火力活用を堅持し、炭素税の議論も膠着(こうちゃく)状態の日本に対し、国内外の環境NGOやメディアが批判を強めている。一連の批判では、エネルギー自給率が低い中で、原発稼働が進まず、国際連系線もない、といった事情への配慮はない。こうした理不尽な批判に対して、経済産業省が反論に向けた動きを見せ始めた。  経産省は2月、二つの会議体を立ち上げた。「環境イノベーションに向けたファイナンスのあり方研究会」と、「エネルギーレジリエンスの定量評価に向けた専門家委員会」だ。どちらもファイナンスを切り口に、世界的にESG(環境・社会・ガバナンス)投資が拡大する中で、今後日本が取る対策への投資を確保できるよう、世界に向け「日本の言い分」を発信しようとの狙いがある。 前者のイノベーションに関する研究会では、CO2排出産業・企業の移行(トランジション)や、年明けに策定された「革新的環境イノベーション戦略」の実施に向けた資金供給のあり方などが議題。

・ 【[エネルギーを見る眼】重視されるESGとSDGs ネットワーク産業の責務 2020/04/02

民間企業は政府のフレームワークに参画を


4月から送配電部門の法的分離が実施される。再生可能エネルギーを電源とする参入者はFITによって支えられてきたが、今後は市場価格に一定のプレミアムを上乗せする制度(FIP)に移行する。発電市場の活性化には公平な条件でのネットワーク利用が不可欠となる。垂直統合型の電力供給体制は競争指向の総合エネルギー産業へと変わる。所有分離で競争を導入した英国の経験から、送配電分離が永続的な料金をもたらすわけではないことも明らかだが、自由化先進国の教訓を活かすことは重要だろう。 わが国は資源小国であることに加え、国際連系線もパイプライン接続もない孤立した市場で特殊な状況に置かれている。さらに、東日本大震災以降、原子力発電の本格稼働が困難で、廃炉を選択したサイトもある。福島第一原子力発電所の廃止措置はこれまでと異なる方法で進めなければならず、新技術の考案が今後の課題として残っている。また、近年の甚大な被害をもたらした自然災害により、迅速な復旧活動と綿密な投資計画が求められていることは言うまでもない。エネルギー政策の長期指針が提示されてはじめて、健全な企業間競争が展開できるのである。 自由化以降の問題点を克服するために、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(エネルギー供給強靭化法案)が、2月に閣議決定された。改正の論点は次の通りである。

・ 【スポット解説】福島で進む復興再生支援 大型エネ事業が相次いで運開 2020/04/02

3月3日、復興庁設置期限を2030年度末まで延長するなどの「復興庁設置法等改正案」が閣議決定された。これにより、21年度からのポスト「復興・創生期間」に向けた制度整備と財源確保などの取り組みが加速する。これを機に、これまでの岩手・宮城・福島3県の復興再生から、福島県内の原子力発電事故被災者支援対策へのシフトが一挙に進むことになる。その一方で、被災後着手したエネルギー関連事業が相次ぎ運用開始の時期を迎えている。 福島県内では、産業の復興再生支援の一環として「福島イノベーションコースト構想」を展開いる。廃炉やロボット、営農、先端医療などとともに大きな柱となっているのが、エネルギー事業だ。今年度から来年度にかけ、その大規模事業が相次いで動き出す。NEDOが東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業と18年から福島県浪江町で建設を進めてきた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」が2月末に完成し、今月7日には安倍晋三首相、梶山弘志経産相らが出席して開所式を開き、稼働を開始した。

・ 【EWN】インドの再エネ普及策 大口需要家が直接購入 2020/04/02

投資機会が増える一方、安定性欠く政策環境がリスクに


インドの新・再生可能エネルギー省(MNRE)は2020年1月9日、国内の導入済み再エネ発電設備容量が19年末で8400万4000kWに達したと発表した。 建設・入札中案件を含めると1億5000万kWを超える。政府は22年までに1億7500万kWの再エネ設備を導入する目標を掲げ、積極的に導入を促進している。 促進政策の一環として、インドの大規模需要家は、特定の条件を満たせば再エネ発電事業者と直接電力購入契約(コーポレートPPA)を締結することにより電力を調達することが認められている。 アジアでは、小売り自由化未実施の地域が多く、需要家が発電事業者から直接電力を購入できる制度が確立されていないことが多い。インドでの大口需要家による再エネ調達の実情と課題について紹介しよう。 情報サービス会社のブルームバーグNEFの報告によれば、18年には発電設備容量ベースで140万kWの再エネ(太陽光、風力)が企業によりPPAを通じて調達された。インドの電気料金は政策的に家庭・農業用料金が低く抑えられており、これを産業・商業用の収入で補う内部相互補助(Cross-Subsidy)の料金体系がとられている。 ブルームバークNEFによると、平均的な産業・商業用の料金は家庭用に比べて2~4割高い設定となっており、料金単価も10年時点と比較して6割以上増加した。 一方、近年の太陽光パネルの価格低下などを理由に、インドの再エネ価格は急速に低下している。このように、割高で値上がりを続ける規制料金と安価な再エネ価格という相反するトレンドが、インド企業が再エネ電力の調達を志向する背景となっている。

・ 【視点】新型コロナウィルスの脅威度とは 2020/04/02

筆者はSARSコロナウィルスが拡散した2003年春、東京での世界ガス会議が中止寸前に追い込まれた経験を持つ。当時を振り返りながら今の状況を考えてみたい。 クルーズ船の乗客を開放して以降、政府は「予防法は手洗い・マスク・会合自粛、もし感染したら対症療法と2週間の経過観察」と呼び掛けてきた。感染防止と巣ごもり、つまり自然治癒の態勢作りだ。その程度でいいのか、とやや不安に響いたが、免疫学の世界的権威、審(あき)良(ら)静男(しずお)・阪大教授の「新しい免疫入門」を読むと今回の対応は理にかなっているようだ。この点を理解するにはまず人体の免疫機構を知る必要がある。 細菌は微生物で体内へ入ると何でも食べる。薬も食べるから死ぬ。だがウィルスは違う。タンパク質の硬い殻の中にDNAかRNAの形で閉じこもるので薬は効かない。極小体なので細胞内へ容易に入り込む。すると殻が溶けて活性化し、細胞内のアミノ酸を使って自己を大量に複製、壊れた細胞を出て体内へ広がる。 一方、感染した細胞はその表面に感染を示す標識を出す。免疫系の偵察細胞がこの標識を捉えるとリンパ節へ情報を伝え、骨髄と胸腺でキラーT細胞やNK細胞という攻撃力の高い免疫細胞の生産が始まる。 脳も代謝性熱エネルギーの増産を指示し、体温を上げて免疫細胞を活性化させ感染現場へ向かわせる。標識を持つ細胞をキラー細胞が殺し、その細胞を捕食細胞が捉えて食べる。役目を終えた捕食細胞は体外へ排出される。

・ 関電「金品受領問題」の背景を探る 2020/04/02

若手が新たなエネルギー企業を立ち上げる絶好の機会


日本は平成の時代にバブル崩壊を経験し、「失われた20年」の間に金融機関を中心に、次々と企業不祥事が起きた。その都度、ガバナンス、コンプライアンスの重要性が叫ばれ、対策がなされてきた。 その中には、今、世界にもそん色ない経営を行っている企業がある。 しかしエネルギー業界、とりわけ電力会社は、その公益性が従業員の隅々まで浸透しており、これらの問題には無縁であった。 昨年発覚した関西電力の金品受領問題は、原子力発電事業に関係する経営幹部らが福井県高浜町の森山栄治元助役から金品を受け取り、返却すると原発稼働に支障をきたすと考え、一時的に個人の管理下で保管し、後日返却したことを、マスコミが報道したことから始まった。 (欠けていた世間常識の視点) 金品を授受したことは、取締役会にも報告されていなかった。幹部らは、金沢国税局から問題を指摘された時に、追加課税に応じたことで、法的には問題がないと判断したとされている。関電は金品授受という問題を、会社ではなく全て個人の問題であるとして、会社は関与しない方針をとり、外部に対しては個人情報を盾に逃げ切れると考えたのかもしれない。 この考えは、世間がどう思うかという視点が欠けていたと言わざるを得ない。昨年9月27日に開いた岩根茂樹前社長、八木誠前会長らの会見も、この考えで乗り切れると見ていた感がある。しかし世間の情勢を読み違え、会長、社長の退任まで追い込まれ、さらには第三者委員会に調査をゆだねることになった。

・ 【EWN】水圧破砕技術禁止に危機感 米経済に大きなダメージも 2020/03/23

民主党大統領候補が全面禁止を主張


米国石油産業の業界団体であるアメリカ石油協会(API)は2月27日、「危機に立つアメリカの進歩」と題するレポートを発表した。内容は、シェール開発で用いられている水圧破砕技術が仮に全面禁止された場合、米国経済にどれほど大きな経済的損失がもたらされるか、というものである。 レポートによると、水圧破砕技術が禁止された場合、2022年までに750万人の雇用が喪失、30年までに累積7.1兆ドルのGDPが失われ、家計は収入が年間5400ドル減る。一方でエネルギーコストが500ドル増加、農家の収入が43%減少、再生可能エネルギーが増えても今より40%多くの石炭が燃やされ、石油と石油製品の純輸出国から40%の純輸入国に転落するという。 昨年12月にも、米国商工会議所が支援するシンクタンクであるグローバルエネルギー研究所が同様の趣旨のレポートを発表している。こちらは25年までに1900万人の雇用と7.1兆ドルのGDPが失われるいう、さらに過激なものとなっている。 米国の産業界からなぜこの様な声が出てくるのかといえば、20年の米国大統領選において、水圧破砕技術の即全面禁止を訴えている候補者の当選が有力視されつつあるからである。そのため、この問題が大統領選におけるエネルギー政策の争点の一つとなっている。

・ 【スポット解説】コロナ対策で中国政府の失敗 原子力産業は他山の石に 2020/03/23

 原子力発電所の事故などを想定して使われるクライシスマネジメント(危機管理)とは、事故が発生した時に、状況を把握した上でその影響を最小限に食い止め、早期回復と二次被害の回避を行うことだ。新型コロナウィルスが世界中で猛威をふるう中、各国政府が取り組んでいる対応はクライシスマネジメントそのものといえる。 新型コロナの流行では、中国政府は初期のクライシスマネジメントに失敗した。武漢市で、原因不明のウイルス性肺炎の症例が確認され始めたのは昨年12月上旬。下旬には症例が多発し始めるが、市当局は医師らに箝口(かんこう)令を敷く。しかし、市内に住む李医師はこれを破り、12月30日に7人の患者の存在をSNSに書き込み、同氏は公安から警告を受ける。一方、市当局は原因不明の肺炎患者が12月31日には27人、1月16日には41人いることを公表。しかし、「ヒトからヒトへの感染はない」として、対策は海鮮市場の閉鎖などにとどまった。

・ 【視点】ライフサイクル評価の重要性 2020/03/23

 ライフサイクル評価(LCA)という概念を知ったのは50年ほど前である。当時はエネルギーアナリシスと呼ばれていて、原子力発電は発電所建設やウラン濃縮・放射性廃棄物処分などに投入されるエネルギーを考慮するとエネルギー収支がマイナスになるという議論が行われていた。実はこれはトリッキーな主張で、建設が連続して行われている期間は確かに収支がマイナスになる時期もあるが、原子力発電の運用期間全体を評価すればエネルギー収支は十分プラスになる。原子力に限らず様々な製品・サービスを対象としてライフサイクルでのエネルギー収支評価が行われており、それらを整理した「エネルギー・アナリシス」が第1回エネルギーフォーラム賞(1981年)を受賞している。  LCAは、コカ・コーラ社が1969年に行った、再利用可能な瓶と飲料缶を比較した環境負荷評価が始まりとされている。今ではLCAは環境影響評価の手法として定着している。評価手法の国際標準としてISO14040~49が制定され、日本LCA学会も2004年に設立されている。

・ 【エネルギーを見る眼】新型ウィルス拡大と世界経済 原油価格は低迷が基調か 2020/03/23

中国の存在感の高まりが浮き彫りに


中国発新型肺炎の発生が、世界経済を揺るがしている。さながら、世界経済の浮沈は中国頼みの様相を呈している。  2月21日夜放映されたNHKの国際報道は、ドイツの機械生産工場が中国製部品納入の遅れで生産中止の瀬戸際に立たされているもようを紹介した。新型コロナウィルスの影響で、まず中国の部品生産工場が生産停止を余儀なくされ、サプライチェーンの上流が寸断され、下流の製品生産工場が部品調達できず、生産継続が困難になっているとの構図だ。同番組は、このまま中国の部品生産が回復しなければ、欧州の産業活動は深刻な打撃を受けることになるとの警戒感を表明していた。 (石油需要は日量44万バレル減) 中国は米国に次ぐ世界第2のエネルギー消費国であり、世界最大の石油輸入国である。この中国の位置は、同国の経済活動の停滞により石油需要減をもたらしている。中国の需要減は国際石油需要の減少に直結する。図は2017年以後の非経済協力開発機構(OECD)地域と中国の石油需要増加量と中国の寄与度を示している。ここ数年の非OECDの石油需要増の6割以上を中国が占めている。 新型コロナウィルスの蔓延と中国経済の停滞により世界の石油需要は大打撃を受けている。国際エネルギー機関(IEA)の月次石油市場報告2月号は第1半期の石油需要は前年同期比で日量43.5万バレル減少するとの見通しを示した。

・ 【EWN】LNG「戦国時代」到来か 交代する主役級の顔ぶれ 2020/03/11

「大型新人」の登場で変わる業界地図


昨年1年間の国別LNG出荷量は、豪州が7800万tで初めて世界一になった。2018年以前の10年間程度はカタールが世界一の座を誇っていたが、僅差での豪州の世界一達成は、現在のLNG市場の大変遷の象徴でもある。 世界のLNG市場は、1970年代からインドネシア、ブルネイ、マレーシアといった東南アジア勢とカタール、アブダビといった中東勢が、輸出国の主流を占めていた。これを反映して、世界一の輸入国である日本の輸入先もマレーシア、インドネシアが1、2位を争う状態が長年続いた。 しかし近年、東南アジア勢は消費増大や資源量拡大が止まり、世界の輸出市場でのウエートは低下し、その他の地域の伸びが著しい。ちなみに現在の日本の輸入先一位はやはり豪州だ。 豪州に続き、米国は20年台半ばまでに輸出量が1億t規模になり、豪州をしのぐ世界最大の輸出国になる可能性が十分ある。ロシアも西シベリア/北極海の新規案件で20年代半ばには4000万t前後で第4位に躍り出る気配だ。 また、アフリカ勢もアルジェリア、ナイジェリアを中心に合計で年産4000万t弱だが、この両国の生産量退潮と入れ替わりに、モザンビークをはじめとした新興LNG輸出国の生産量が爆発的に伸びて、10年後にはほぼ倍増の1億t弱程度になる可能性が高い。

・ 【スポット解説】土地賃貸借契約期間の延長 50年で再エネ業者に追い風 2020/03/11

 4月に予定される民法改正が太陽光発電など再生可能エネルギー普及の追い風になりそうだ。賃貸借の存続期間が、従来の20年から50年に延長されるためだ。太陽光パネルを設置する敷地を借りる場合など、20年ごとに契約を結び直す必要があったが、これからはそうした手間が減る。土地の借り手にとっては事業計画が立てやすくなる。  今回の改正は1896年の制定以来、約120年ぶりといわれるほど大幅なもの。改正点はモノの取引やお金の貸し借りなどに関する基本ルールについて約200項目に上る。事業用の融資について保証人になる場合は公証人による意思確認が求めるようになったり、今まで業種ごとにばらばらだった消滅時効がそろえられたりするなど、企業活動や一般の生活への影響も大きい。 土地や建物などに関する改正点も多い。このうち不動産の賃貸借契約の存続期間が延びることは、エネルギー関連業者にも関わりが深そうだ。民法ではこれまで、賃貸借契約の存続期間の上限が20年と定められていた。  この規定は、民法の中でも「強行規定」といわれ、これよりも長い期間の契約を結んだ場合は無効とみなされたり、短い期間にさせられたりすることがあった。契約してから20年が経った後には改めて契約を結び直す必要に迫られることもある。 民法に詳しい弁護士は「現実的には20年以上の、より長い期間を求めるニーズが少なくない。しかし、この規定があるせいで、不安定な契約の状態に置かれたり、実務を強いられたりすることがあった」と指摘する。

・ 【視点】ビル・ゲイツが原子力開発を進める理由 2020/03/11

 1月下旬に、ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力企業、テラパワー社の研究所を訪問し、企業を立ち上げた前社長からゲイツ氏の考え方をお聞きする機会があった。同社の目的は、廃棄物である劣化ウランを利用し発電を行う原子力設備の開発にあるが、ゲイツ氏がテラパワー社を設立した最大の動機は、世界の貧困層の人たちに競争力のある安全な電気を届けることにあった。  気候変動問題に深い関心があるゲイツ氏は、まずCO2を排出しない電源による電力供給を考えた。再生可能エネルギーで100%の電力供給を行う場合には、最後の30%から40%の供給が高コストになり安価な電源になり得ないことから、原子力の新技術による電力供給を考え、核拡散を防ぐため劣化ウランを利用し発電する技術の実用化を図ることにした。米国にある劣化ウランだけで800年間、米国の電力需要を賄うことができる。

・ 【エネルギーを見る眼】容量市場における入札価格 つり上げは容認できない 2020/03/11

価格支配力を行使させない制度設計を


2020年4月から旧一般電気事業者の送配電部門と自由化部門の法人格を分ける法的分離が行われる。所有権は分離しないので、送配電部門は依然として自社の競争部門に配慮する誘因は残り、経済学的には法的分離は大きな改革ではない。しかし法人格を分ければ、社内取引は契約に基づく取引に変わり、実効的な監視が可能になる。つまり法的分離は電力・ガス取引監視等委員会(監視等委員会)の厳しい監視があって機能する仕組みで、法的分離だけで送配電部門が中立化するわけではない。 さらに、分離前後で行動が大きく変われば、分離後の厳しい監視で、分離前の不公正な取引が露見する可能性が高い。近い将来の法的分離を前提とすれば、分離前から不公正な行動は難しく、旧一般電気事業者は、分離後に不公正と判断される行動は、分離前にもほとんど取っていないと考えられる。予定通り分離が行われ、電力システム改革が後退しないとの確信が、20年以前に既に状況を改善したのである。 次の大きな節目は24年と考えられる。容量市場が24年から機能し、合理的な量の供給力が確保されることを前提に、調整力市場やインバランス料金制度の改革も進む。供給力確保への悪影響を名目に停滞していたさまざまな改革が動き出す。

・ 【スポット解説】新たな再エネ買い取り方針固まる 主力電源化にはいまだ高い壁 2020/02/28

経済産業省の調達価格等算定委員会(委員長=山内弘隆一橋大学大学院特任教授)は2月4日の会合で、2020年度のFIT制度による電源別の買い取り価格に関する意見案を提示した。パブリックコメントを経て年度内に正式決定する。 事業用太陽光については、入札範囲を現行の「500kW以上」から「250kW以上」に拡大。250250kW未満は、一定の割合で自家消費することを条件にFITによる買い取りを継続する。その際の1kW時あたりの買い取り価格は、10~50kW未満で13円、50kW以上250kW未満で12円とした(19年度はどちらも14円)。 また、住宅用太陽光は1kW時当たり21円と、19年度から3円の引き下げ。一般材利用のバイオマス発電(1万kW未満)は、19年度の24円に据え置く。着床式洋上風力については、再エネ海域利用法適用案件、適用外案件も含め入札制に移行する。 12年にスタートしたFIT法の抜本見直しが予定される20年度は、再エネ政策の大きな転換点となる。19年度の買い取り費用の総額は3.6兆円に達する見込みで、再エネ導入の道半ばでありながら当初想定されていた3.7~4兆円の突破は目前。国民負担を抑制しつつ導入拡大をいかに進めるかが、政府が掲げる再エネ主力電源化の成否を分けることになる。

・ 【EWN】洋上風力事業者に証書を発行 ニューヨーク州が建設支援 2020/02/28

州政府機関に売却で「補助金」を確保


米ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)は2019年10月23日、同州沖合で開発が進む洋上風力発電プロジェクト2件、「エンパイアウィンド」、「サンライズウインド」と州における支援制度にあたる洋上風力発電再エネ証書(OREC)の調達・売却に関する契約を締結した。 エンパイアウィンドはノルウェーの石油大手エクイノールが手掛けるもので、サンライズウィンドは、デンマークのオーステッドが米マサチューセッツ州の送配電ガス事業者エバーソースと組んで開発中の事業。 NYSERDAは、ニューヨーク州において再エネ・省エネなどの研究開発とその導入促進を担う州政府機関。18年11月に洋上風力発電を対象とした支援制度を適用する事業者の選定に向けた公募プロセスを開始、19年2月の期限までに四つのプロジェクトの応札があった。 具体的には、連邦政府内務省傘下の海洋エネルギー管理局(BOEM)から海域占用許可を取得済みの①エンパイヤ―ウィンド、②サンライズウィンド、③「大西洋岸オフショアウィンド」(仏EDFと石油大手の英蘭シェル)、④「リバティウィンド」(デンマークの年金基金、コペンハーゲンインフラストラクチャ―パートナーズと西イベルドローラ傘下のAvangrid Renewables)らが応札した。 入札は、①価格70点、②経済効果(サプライチェーン構築への寄与度合いなど)20点、③プロジェクトの実現可能性10点――という評価基準で、NYSERDAおよび外部の専門家による評価が行われた。 また、評点の対象ではないが、

・ 【[エネルギーを見る眼】脅かされる国民の移動権 MaaSやCASEがもたらすもの 2020/02/28

ガソリン・ディーゼル車排除に車依存の地方住民は怒り心頭


MaaS(Mobility as a Service)やCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)というデジタル技術を基礎とした社会的なイノベーションが、徐々に生活に入ってきた。地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの削減など地球規模的な課題は、近年の異常気象により身近に感じるようになったが、MaaSやCASEは、地域における課題オリエンテッドな社会的なイノベーションと位置付けられている。

・ 【スポット解説】経済界が電気事業改革に提言 連系線増強の費用負担に注文 2020/02/17

日本経団連と日本商工会議所は1月24日、電気事業制度とFIT制度の改革案に対する意見公募に対する意見書を提出した。両者とも概ね改革案に賛同、その上で今後の詳細な制度設計に向けた留意点を中心に指摘している。 意見書は、経済産業省の「持続可能な電力システム構築小委員会」と、「FIT法改革案を検討してきた再生可能エネルギー主力電調化制度改革小委員会」の中間取りまとめ案の意見募集に対し行ったもの。電事法改正では、①託送料金制度改革の一環として欧州が導入しているレベニューキャップ制度を取り入れて効率化のインセンティブが働くようにするほか、②地域間連系線の増強費用の一部にFIT賦課金を充てる制度整備、③電力業界のレジリエンス対策として一般送配電事業者に対し「災害時連携計画」の策定を義務付けること、④マイクログリッドの構築に向けて配電事業にライセンス制を導入する――などを盛り込んでいる。 また、FIT法改正案では、①固定価格での買い取りに加え卸市場価格に一定額を上乗せするFIP(フィード・イン・プレミアム)制度を導入、②発電コストの低減が一定程度進む太陽光・風力は競争電源と位置づけFIPへの移行を検討、③小規模地熱、小水力、バイオマス発電は地域活用電源と位置づけてFIT制度を維持――などを打ち出した。

・ 【EWN】米国が世界最大の輸出国に 競争が激化するLNG市場 2020/02/17

熾烈な競合の覇者は誰に


 世界のLNG(液化天然ガス)を巡る競争が激化している。2019年は記録的なLNG開発投資の年で、年間供給量にして7000万t分の投資決定が行われた。これは、世界の総LNG供給量の約2割に相当する。そのうち約半分が米国で、残りはロシア、モザンビークなどであった。 国際エネルギー機関(IEA)が昨年発表したレポートによると、カタールは世界のLNG輸出量のトップを独走してきたが、いずれオーストラリアに抜かれ、さらに24年までに米国が抜いて世界最大の輸出国になるという(図)。 このように、米国は今後のLNG輸出国として大いに期待されているが、一方で現実の計画はそうした期待よりもさらに過熱している。米国の連邦政府エネルギー認可委員会(FERC)が認可した14の未建設LNG輸出ターミナルの供給量の合計は年間1億6000万tで、さらに認可待ちの9000万tを合わせると2億5000万tにもなる。 25年までの世界のLNG需要増加量予測が年間1億t(S&P Global Platts)であることを考えると、この米国単独の供給計画量がいかに莫大であるかということがわかるだろう。 コンサルティング会社、マッキンゼーは、このような計画は市場規模に対し過剰であり、10分の1も建設されないとの見方を示している。

・ 【エネルギーを見る眼】気候変動に規制強化を要求 海外の銀行・投資家の意図は 2020/02/17

性善説的なシナリオは期待できない


「国連気候アクションサミット 2019 」に関して、日本以外の国、投資家、大企業が経済成長と生活を守るためにアクションを起こしているのに、日本は対応が遅く置き去りにされているという議論がある。2050 年までに CO2 排出量をゼロにするという目標を企業や政府が掲げているのに、日本ではほとんどその動きがないことが批判されている。 この議論で一番私が気になるのが、銀行や投資家が気候変動を抑えるように規制を強化することを政府に要求し始めたことが、気候変動の問題の深刻さを表し、そのリスクを経済界も真剣に受け止め始めたと認識されていることである。銀行や投資家の判断が、地球の未来を真摯に考え科学的な知見をもとに国連気候変動に課する政府間パネル( IPCC )の勧告以上のアクションを求め、庶民の生活を守るために規制を要求しているように言われているが、私は違う見方をすべきだと考えている。結局はその方が自分たちにとって有利であると判断したからにすぎないのではないか。 ヘッジファンドの「ロングタームキャピタルマネージメント」(LTCM)の破綻、リーマンショックの例にも見られるように、

・ 【視点】配電ライセンスが拓く新ビジネス 2020/02/17

4月に電力システム改革の最終段階として送配電事業の法的分離が行われる。電力ネットワークとして送電と配電は一体であるが、大規模電源を連系する基幹送電線と需要家に直結する配電線とでは期待される機能が異なる。審議会では、広域化する送電、分散化する配電というキーワードでこの違いを表現している。この認識の方向性に沿って、「持続可能な電力システム構築小委」は昨年末に中間取りまとめを行い、託送料金にインセンティブ規制(レベニューキャップ)を導入することや災害復旧時の連携に関する仕組みとともに、配電事業ライセンスなどの導入を提案した。順調に進めば今国会での電気事業法改正によって配電ライセンスという新しい制度が誕生する。

・ 【スポット解説】IAEAがフォローアップミッション 産業界との対話にいまだ課題 2020/02/06

国際原子力機関(IAEA)は1月14日から21日にかけて、原子力規制委員会の規制業務が適正に行われているか調査する総合規制評価サービス(IRRS)のフォローアップミッションを実施した。  フォローアップミッションは4年前に実施したIRRSで指摘された勧告や提言に対して、日本がどれだけ取り組んでいたのかを確認するもの。  IAEAは規制委の規制業務に対し、「相当の前進を遂げた。規制委は多くの手立てを講じている」と評価する。高評価の背景として、「規制委の検査官が抜き打ち検査を実施できる権限」をはじめとする、原子力施設へのアクセス権限を強化した検査制度を確立したことや、事業者に対する規制要求を定期的にレビュ-および更新するために体系的なプロセスを導入した点を挙げた。  しかし、「新たな統合マネジメントシステムの完全な実施」と、

・ 【視点】国会議員の軽率なツイート 2020/02/06

新年早々、ある衆議院議員が「ドイツ、再エネが化石燃料を上回る。電力シェアは46%、太陽光では買い取り価格は1㎾時当たり5セントぐらいになっているそうだ。日本は2030年でも再エネ22〜24%、太陽光は送電系統への接続を阻まれて、あまつさえ出力抑制。そして環境大臣の地元で石炭火力を新設」とツイートしていた。  ドイツの電力事情を誤解している方のようだ。再エネの買い取り価格が安くなっているので、電気料金が下がっているような書きぶりだが、ドイツの家庭用電気料金は世界一、30ユーロセントを超えている。日本の1.5倍だ。固定価格買取制度(FIT)による負担額上昇に悩みを深めたドイツ政府は、

・ 【EWN】社会主義・中国のガス戦略 手本とすべきしたたかさ 2020/02/06

いまも生きる4千年の商人文化遺伝子


社会主義市場経済体制をとっている中国だが、その経済的実態は民間企業と比べて国営企業への手厚い優遇と国営企業同士の競争導入であり、政治的には共産党一党独裁の堅持だ。この奇妙な体制でも、天然ガス・LNGの調達は、市場経済体制である日本の関連業界がむしろ手本とすべき商人的したたかさ、巧妙な戦略を発揮している。 ちなみに、約4千年前の中華文明最初の王朝は、かつて学校などでは「殷(いん)」と教えられていたが、最近では当該王朝の自称、「商(しょう)」とされている(殷はこれを滅亡させた周が用いた蔑称)。日本語でも経済活動のことを商売というのは、この「商」が交易を重視し、貨幣さえも発行していたことから発している。中国は共産党支配下でも、4千年間の商人文化遺伝子が脈々と生きているのだ。  従来から中国のLNG調達は、ほとんど全て国営3社によって行われていたが、価格交渉に対する厳しさでは日本の民間輸入企業、とりわけ電力業界と際立った差を見せていた。価格が高ければ買わない、ないし需要量を大きく削減し、売り手に対抗してきた。そこに2019年12月、

・ 【EWN】英国が50年ネットゼロへ 産業集積地を脱炭素化 2020/01/20

バイオマス、CCS、水素利用で大幅に削減


2050年までに国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることを法制化している英国。その方策に注目が集まっている。 英国気候変動委員会は、目標達成には、省エネや電化の推進と併せて、炭素回収・貯留技術(CCS)と水素技術が重要であるとしている。 これらを背景に、19年55月、ドラックス社(英国)、エクイノー社(ノルウェー)、ナショナル・グリッドの関連会社(英)で構成する共同事業体は、英国北東部のハンバー地域で「CCSと水素を用いた脱炭素化を進める」と発表した。 従来、英国では、GHG排出量の削減目標について、50年までに1990年比で80%削減するとしていた。しかし、カーボンニュートラルを志向する機運の高まりを受け、気候変動委員会18年秋頃から政策検討を開始。50年までに英国全体でGHG排出量ネットゼロ(スコットランド地方は45年までにネットゼロ)を目指す政策提言を19年5月に発表した。 英政府は、6月にこの提言を法制化し、英国はG77(主要77カ国)の中で最初に50年ネットゼロを掲げる国となった。 気候変動委員会は、これまでの取り組みによって、低炭素技術が広がりつつあることから、ネットゼロ達成のための各年の国民負担は、GDPの1~2%と低く抑えられるとの見通しも提示。ネットゼロ政策の現実性も示している。

・ 【視点】米中覇権構想の第二幕 2020/01/20

秋の米大統領選挙を控え関税・貿易抗争は一時休戦入りした。一方、二幕目のベルが鳴る。昨年8月中旬、米大統領が台湾へのF16V型戦闘機66機の売却を許可したからだ。V型は空中戦の能力で世界一と評されるだけに、歴代の米政権はこの微妙な取引を封印してきた。 移り気な大統領がなぜ唐突に?とも響くが、香港での民主派の反中活動、1月11日の台湾総統選挙、対米不信感を募らす東南アジアの動き、11月の米大統領選挙などを計算しての決断であろう。 1979年の国交回復以降、米国のアジアへの関心は中国へ移った。中国は旧ソ連を追い詰める切り札として役立ち、また対中貿易が米経済の復活に繋がると予想したからだ。

・ 【エネルギーを見る眼】実用化しない革新技術 いま根本原因の追究を 2020/01/20

原子力の技術者が将来、挫折しないために


「これからの原子力には安価な電力を提供することに加えて、新しい役割が社会から求められていくべきではないでしょうか」。あるシンポジウムにおける有識者の発言であるが、この美しい言葉に共感するのは間違いなく原子力に最近、関わり始めた方であろうと断言できる。筆者同様、20年以上この業界にいる方であればこの「新しい役割」が実は数十年前から繰り返し提唱されてきたことを当然ご存じであろう。 この有識者が指す新しい役割とは、低炭素社会実現の一環としてカーボンフリーの電力・熱を供給する、水素製造も可能な高温ガス炉システムや、安全性も信頼性も柔軟性も高い小型モジュール炉(SMR)などである。 特に新型炉開発に関しては今や猫も杓子(しゃくし)も「SMR、SMR」。「初期投資の大きい大型炉と異なり、小さくシンプルで工期も短い」「受動的安全性を有し、動力の必要な大型安全設備が不要なので安全性も経済性も高い」等々の利点を聞けば期待もしたくなるだろう。 だが、残念ながらこれらの特徴は1980年代後半から既に研究機関でもメーカーでも知られており、

・ 【スポット解説】投資家行動指針にESG記載 浸透には不透明な面も 2020/01/20

金融庁は2020年3月にも施行する機関投資家の行動指針「スチュワードシップ・コード」の改定案にESG投資を盛り込む。国内では一部にとどまっていたESG投資が一気に広がる可能性がある。  スチュワードシップ・コードは、生命保険会社や信託銀行、資産運用会社など、投資家からお金を預かって企業の株式などに投資する機関投資家の「あるべき姿」を示す。「受託者原則」などと訳され、議決権の行使など投資先企業との対話や株主総会への対応のあり方、経営の不正監視の方法などを示している。日本版は英国を手本にして14年に初めて策定され、改定は17年以来3年ぶり2回目だ。 ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の英語の頭文字をとった略語で、ESG投資は株式投資を通じて社会の持続可能性を高め、よりよい社会の実現を目指すという考え方だ。 今回の改定では、気候変動対策などの「持続可能性」に焦点を当て、機関投資家に対し、投資先企業と対話を深めて運用方針にどう位置づけるかを明確に示すよう求める。コードは「プリンシプル・アプローチ」の考え方を取っており、機関投資家は原則から外れた行動を取る場合には、顧客などに対して十分な理由を説明する必要がある。金融庁は、ESG投資が増えれば、投資先企業の環境への取り組みや女性の社会進出支援といった取り組みが加速するとにらむ。  コードにESG投資を盛り込んだ背景には、国内外で気候変動問題への危機感が強くなったことがある。日本では昨秋、大型台風や豪雨が大きな被害をもたらした。米国や豪州では熱波が到来し、大規模な山火事が頻発している。海水の温暖化や酸性化が生態系に影響し、漁獲量を減らしているとも言われる。

・ 【エネルギーを見る眼】民営化・自由化を巡る評価    映画に残された公益的課題 2019/12/23

災害時の復旧作業が難航する事態に


公益事業の民営化・自由化はグローバルなビジネス展開を促進し、産業融合化を加速させた点で評価されている。利用者も多様なメニューから選択できるメリットを享受できるようになった。しかし現実には、台風により送電線や通信網、鉄道・道路・橋梁(きょうりょう)の寸断などインフラ施設が甚大な被害を受け、日常生活が機能停止に追い込まれたのも事実だ。復旧作業が難航したのは民営化・自由化と無関係ではない面がある。 千葉県で大規模停電を数日間、修復できなかったのは想定を超える事態であった。また、長野県千曲川流域の果樹園や北陸新幹線の車両基地の水没のほか、観光客に人気のある神奈川県の箱根登山鉄道の軌道崩壊も衝撃的な惨事となった。IoTやMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の観点から新ビジネスとして大きな潜在力を持つ公益事業であるが、その半面、

・ 【視点】地球温暖化劇場の新人スター 2019/12/23

2019年9月の国連気候行動サミットではスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんの演説が話題をさらった。彼女は地球温暖化に取り組む大人たちを痛烈な言葉で批判した。例えば、「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢そして子ども時代を奪いました。それでも私はまだ恵まれている方です。多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます」という具合である。温暖化問題の研究者からは何の根拠もない乱暴な議論としか見えないが、その影響力には注意する必要がある。 温暖化問題の科学的知見には、まだ大きな不確実性がある。例えば、温室効果ガスの大気中濃度と気温上昇については、平衡気候感度(大気中の温室効果ガスの濃度が倍増した場合の平衡状態における気温上昇)はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価でも1.5℃から4.5℃という幅がある。つまり、2℃目標とか1.5℃目標とか言ってもそれに対応する温室効果ガスの大気中濃度の幅は極めて大きい。被害についても、昨今の台風被害などで温暖化の影響が表れていると一般には言われているが、専門家は可能性があるという程度の認識で、「大量絶滅の始まりにいます」という受け止めとは程遠い。  しかし、少女グレタが18年8月に始めた金曜日に学校を休んで抗議する「気候のための学校ストライキ」はあっという間に世界に広がり、19年9月20日の世界一斉デモには400万人が参加したと報じられている。まさに温暖化劇場のスター誕生である。  思い起こせば温暖化劇場には世界的に影響力のあるスターが今までにも登場した。「不都合な真実」で

・ 【スポット解説】「走る蓄電池」としてEVが活躍 2019/12/23

被災地では外部給電器不足が問題に


千葉県を中心に関東を襲った2019年の台風15号では、倒木や飛来物などにより電柱が倒壊。大規模停電が発生した。  被災地では気温が30度を超える日もあり、熱中症予防に冷房が必須だった。また、携帯基地局の停止やバッテリー切れによって携帯電話も利用できないために情報難民が発生する事態にも陥った。こうした電力不足の緩和に役立ったのが、「走る蓄電池」こと電気自動車(EV)だった。  EVはこれまで、CO2排出抑制、運転時の低騒音など、環境性能がクローズアップされていた。しかし、業務用蓄電池にも匹敵する大容量バッテリーを備え、緊急時には非常用バッテリーとして系統断絶時にも電力を供給できることから、災害時の非常用電源として活用する検討が進められている。  経済産業省は19年7月に「電動車活用社会推進協議会」を設立し、11月27日に協議会の軸となる「活用促進ワーキンググループ(WG)」の初会合を開催した。議題となったのは、

・ 【EWN】欧州が望むパイプライン 建設を巡って米独が対立 2019/12/23

LNG輸出量の拡大に向けた米国の思惑


ロシアから欧州に向けた建設中の天然ガスパイプラインを巡り、米国とドイツの間で対立が深まっている。 12月9日、米国の上院および下院の軍事委員会は、ロシアからバルト海を経由してドイツへ直接接続する天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設に関与する企業への制裁を含む国防権限法(NDAA)について合意した。 一方、米国のこの動きに対し、ドイツから強い反発の声が上がっている。 他国同士の経済活動への露骨な介入ではあるが、米国がロシアの欧州への影響力強化を懸念して、このような制裁を行うという意図は理解できる。そして、欧州も基本的にはロシア依存が拡大するのを避けたいはずだ。 それでは、なぜドイツや欧州がこのパイプラインを必要とするのか。そこには三つの背景がある。 まず、このパイプラインの構想が生まれたのは、シュレーダー政権の頃である。シュレーダー首相は2001年にドイツで初めて脱原発を決断。そして、その後05年にロシアのプーチン大統領との間で最初の「ノルドストリーム」の建設に合意している。つまり、このパイプライン構想は元々、ドイツの脱原発とセットだった。そして、第一のノルドストリームは11年に完成し、

・ 正念場を迎える国内の原子力産業 2019/12/23

回復基調の市場規模が足踏み状態に


福島第一原子力発電所事故後に落ち込んでいたものの、その後は回復基調にあった原子力産業の市場規模が、足踏み状態になったことが分かった。 日本原子力産業協会が公表した原子力産業動向調査によると、2018年度の電気事業者の原子力関係支出高は増加したが、鉱工業などの売上高と受注残高は大幅に減少。市場全体としては調整局面に入ったもようだ。 (電力支出の2割が新規制基準対応) 調査は原産協会が毎年実施しているもので、今年6~7月に350社を対象にアンケートを実施し251社から回答を得た。 それによると、電気事業者の原子力関係支出高は11年までは2兆円前後で推移していたが、12年に急減。その後は回復基調となり、18年には前年度比12%増の2兆1188億円と、8年ぶりに2兆円を超えた。 費目別でみると伸びたのは、機器・設備投資費(6059億円、前年度比40%増)と燃料・材料費(3337億円、28%増)。逆に運転維持・保守・修繕費(2522億円、14%減)は減少した。 産業構造別でみたシェアは、プラント既設(76%増)、バックエンド(10%増)、フロントエンド(6%増)、デコミッショング(5%増)で、プラント新設は事故以降、

・ 【EWN】温暖化で台風は巨大化したか 横行する根拠なき印象論 2019/12/17

スウェーデンの女子校生に踊らされる愚


今秋、東日本に来襲した台風15号、19号は大きな被害をもたらした。前者は死者数こそ1人ながら、房総半島で強風により大規模長期停電と多数の家屋被害をもたらした。  後者は逆に強風被害はわずかながら、広い範囲に記録的な大雨を長時間降らせたため七つの県で71河川を氾濫させ、90人以上の死者を出した。テレビなどでは「地球温暖化による史上最大規模の台風来襲」との評論を素人コメンテーターなどが繰り返し伝えた。 確かに、台風直撃に慣れていない東日本としてはかなり大きい被害だが、「温暖化による史上最大級の台風」という評価は納得できない。  15号、19号とも上陸時の気圧は約960ヘクトパスカル、推定最大風速は(10分間平均)は約40m。最大瞬間風速実測値(3分間平均)は、15号が千葉市海岸部で57m、19号が神津島で45m。 確かに大型の台風だが、過去の記録を見ると、最大風速では1位が

・ 【視点】停電情報の不備で損害賠償請求に 2019/12/17

 2019年は停電が多く発生した年だった。日本では台風により千葉県を中心に停電が発生し、米国では山火事を防ぐためカリフォルニア州の3電力会社が送電を停止し、中でもパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社(PG&E)の停電は大規模になった。  加州では17年、18年と乾季にPG&E保有の送電線と設備由来の山火事が発生した。18年の山火事では86人が死亡し大規模な損害が生じたため、PG&Eは米国のチャプター・イレブンと呼ばれる更生法申請に追い込まれ19年年初、更生会社となった。  異常乾燥となった今年10月、

・ 【エネルギーを見る眼】「グレタ現象」への違和感 学業放棄で独断に陥らないか 2019/12/17

気候変動はSDGs目標のひとつに過ぎず


2019年も残りわずかとなった。この1年を振り返れば、エネルギーに関連してさまざまな問題、事件が起きたが、個人的には、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)が9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席して、地球温暖化に真剣に取り組まない「大人」たちを激しく叱責したことが強く印象に残っている。   これがきっかけとなって、地球温暖化問題への関心が一層高まり、将来を担う若い人々の声にもっと耳を傾けるべきとの論調が強まってきていると感じる。こうした「グレタ・トゥーンベリ現象」ともいうべき状況について、筆者が思うことを申し述べたい。

・ 【スポット解説】COP25で「引き上げ」表明も 小泉環境相の発言に注目集まる 2019/12/17

スぺインのマドリードで気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が12月2日から開かれた。それに先立ち、小泉進次郎環境相ら環境省幹部と日本経済団体連合会の中西宏明会長らとの懇談会が11月29日に行われている。 冒頭、中西会長は「地球の危機という認識が世界的に高まり、環境問題は今や経済と成長、産業を考える上での前提となってきた。パリ協定の長期戦略の策定過程で真剣な議論をし、低炭素から脱炭素へと表現を変えた。実現は本当に大変だが、企業の技術革新や仕掛けづくりを進めていく」と発言。述べ、経済界として、脱炭素社会の実現を目指す意向を改めて表明した。 これに対して小泉環境相は、

・ 【スポット解説】災害で注目集める無電柱化 2019/12/06

安定供給に向け複眼的な視点を


今年の秋、連続して日本各地を襲った台風15号、19号。観測史上最強ともいわれる暴風によって電柱が倒壊、各地で停電が頻発したことを受け、電線や通信ケーブルを地中に埋めて対策を行う「無電柱化」に注目が集まった。  11月10日は「無電柱化の日」。これは2016年に制定された「無電柱化の推進に関する法律」で定められている。全国の都道府県で初となる「無電柱化推進条例」を制定した東京都は

・ 【EWN】アフリカに進出する欧州企業 オフグリッド地域で事業展開 2019/12/06

太陽光パネル・蓄電池のコスト低下で需要が拡大


フランスの大手電気・ガス事業者「エンジー」は2019年9月、アフリカ3ヵ国で太陽光発電システムを使ったサービスを提供するドイツのスタートアップ企業「モビソル」を買収したと発表した。これはアフリカの未電化地域で、拡大する電力需要を狙った新しいビジネスの展開である。  現在、世界の未電化人口約8億6千万人のうち6億人以上がサハラ砂漠以南のアフリカに居住している。この地域は人口密度が低く、事業採算性や事業者の保守・運用能力も低いことから

・ 【視点】覇権闘争に見る中国の強みと弱み 2019/12/06

中国の古典に「君主は舟なり、民は水なり、水よく舟を載せるも時に之を覆す」との格言がある。中国史を振り返ると、清朝に至る全ての王朝は、飢えた民衆の反乱と臣下の腐敗・謀反の組み合わせで興亡を繰り返してきた。この定型パターンを毛沢東以来の共産党政権は深く学んでいるようだ。 習近平政権は、腐敗撲滅運動で政敵群をなぎ倒した後、新たな成長の道 「一帯一路」と「中国製造2025」へ進路を向け、

・ 国連が主導権を取る気候変動対策 2019/12/06

グテーレス事務総長と金融業界の動向


9月に開催された国連気候変動サミットの会場で、地球温暖化問題の早期の解決を涙ながらに訴えた16歳のグレタ・トゥーンベリさんの演説が話題となった。「人々は苦しみ死にかけている。私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたがたはお金の事ばかり。成長というおとぎ話だけ。あなたたちには失望した。しかし若者はあなたたちの裏切りに気づき始めている」との発言は

・ 【エネルギーを見る眼】見過ごされるGDP統計劣化 商業・製造業で15兆円欠落も 2019/12/06

失われる産業連関表の「番人」


経済統計の授業をしていると、日本のGDPはアベノミクスに忖度(そんたく)して、過大推計されているのでしょうか?という皮肉のような同調を求められることがある。昨年からの統計不正問題、アベノミクス偽装疑惑など、ネット情報から影響を受けたのであろう、その表情は真剣そうである。「いや、どちらかと言えばむしろ過小評価されていると思うよ」と言うと目を丸くされてしまう。どこかの回し者とでも思うだろうか。 「GDP統計大改革始動」と題する、

・ 【スポット解説】仏アストリッド建設計画が中止 岐路に立つ次世代原子力の開発 2019/11/26

 日本がフランスと共同で進めていた高速増殖炉の実証炉「アストリッド」建設計画が中止となった。経済産業省も2020年度予算で関連予算を計上しないことを決めたという。日本の核燃料サイクル政策や放射性廃棄物対策は岐路に立たされている。  アストリッド建設計画の中止は、仏ルモンド紙(電子版)が8月末に報じた。仏原子力庁が計画の統括チームを今春に解散するとともに、「アストリッドは死んだ」とする関係者のコメントを

・ なぜ原発肯定の若者が増えているのか 2019/11/26

人々の意識の根底を分析する『原発世論の力学』


世論は、一般的には主権をもつ人々の意志と定義される。研究者の間では、個人的意見の集合的分布や総和とみる見方と、社会的実体であり、個人的意見には還元できないとみる見方の二つがある。前者を極端にした見方では、世論調査で測定された結果が世論だと論じるものさえある。 世論は個人の意見を素材にするものの、それを足し合わせた総和にはとどまらず、成員間の相互作用の過程という動態的なものだ捉える指摘がある。一方で世論調査は、調査される者のその時点での意識や態度を、調査票が

・ 【エネルギーを見る眼】流通構造を変える「価格」 ネットとの競争で変化は 2019/11/26

消費者にとっての最大の関心事


 価格は、消費者にとって購買するかどうかを決める要因であり、企業の収益を決める最も直接的で重要な要因である。しかし、製品や流通チャネルと違って容易に変化させることができる。自由化された電力の小売りにせよ、ガソリン価格にせよ、消費者にとっての最大の関心事はいつも価格だ。どこどこの国の電力は質が悪いなどと言っても消費者は興味を示さない。「電力に質があるの」という程度の

・ 【EWN】英国でシェール革命起きず! 政府は「開発」で右往左往 2019/11/26

関連活動への46億円の投資は水の泡に


 英国政府は11月1日、国内での水圧破砕を停止すると発表した。それに伴い、国内におけるすべてのシェールガス開発は停止されることとなった。 この判断は、英国の石油・ガス上流事業の規制機関であるOGA(Oil and Gas Authority)が10月に公表した報告書に基づいて行われたものである。報告書では、水圧破砕(フラッキング)に伴う地震の可能性や規模を予測することはできないと警告している。 英国で現在唯一シェールガス開発を行っているクアドリラ社は、今年8月、

・ 【スポット解説】「革新的環境イノベ戦略」を検討 革新的原子炉開発を推進へ 2019/11/13

 政府は10月29日に「革新的環境イノベーション戦略検討会」を開き、とりまとめの素案を示した。同戦略は、近年、経済産業省が力を注いでいる水素利用やカーボンリサイクルなどに加えて「革新的原子力技術、核融合」も含めたが、実現には課題が山積みしている。 同戦略は、今年6月に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の

・ 【EWN】LNG開発に過去最高の投資 20年代は「黄金時代」にも 2019/11/13

温暖化対策と投機市場化リスクも浮上


2018年10月のロイヤル・ダッチ・シェルなどによるカナダ西海岸の大型液化案件以来、今年の年末まで、新規LNG液化基地への最終投資意思決定(FID)のトータル年間液化能力追加分は、約1億2000万tに達しそうだ。場合によっては年間1億3000万tとなる可能性もある。ちなみに19年当初、世界のLNG生産能力は約4億tとされている。たった、1年余りで今年当初の全生産能力の3割程度が追加される決定がなされることになる。19年は投資総額は500億ドル以上と、歴史上、最大の投資額となりそうである。国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば、

・ 再エネFIT見直し議論で要件案提示 2019/11/13

電気や熱の自家消費や地域活用が前提に


総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」の第3回会合が10月28日に開催された。小規模太陽光や小水力発電といった、地産地消電源として活用するべき電源に係る制度の在り方について議論した。 15日の第2回会合では、再エネFITから自立し「競争電源」として市場への統合を図る電源の制度について議論された。今回議論の対象となった地域活用電源は、総合エネ庁の「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」において、「自家消費などを優先的に評価する仕組みを前提としつつ、当面は現行のFIT制度の基本的枠組みを維持する」と整理されたもの。 FITにより支援する要件として、①具体的にどのように取り組みを評価し、支援の対象としていくか、

・ 【視点】停電は原発が原因との不思議な主張 2019/11/13

 台風15号が引き起こした千葉の停電は長期化したが、その原因は柏崎原発のせいだとする小出裕章・元京大原子炉実験所助教のラジオでの発言がネットで拡散していた。なぜ千葉の停電に原発が関係あるのか理解が難しいが、答えは「東電が柏崎原発の再稼働に1.2兆円かかるので送電線のメンテナンスを怠ったせいだ。人災だ」との発言だからだ。  直接発言を聞いていないが、拡散している発言が事実とするとエネルギーの専門家にもかかわらず電気の知識がないことになる。停電の原因をニュースでも放映された高圧送電鉄塔の倒壊に求めているようだが、鉄塔の倒壊は停電長期化の原因ではない。高圧送電線は万が一に備えて予備能力が確保されている。能力の半分は送電事故を想定し、空けてあるのだ。今回の鉄塔倒壊による送電の途絶も翌日には回復されたはずだ。 そもそも停電の原因が

・ 【エネルギーを見る眼】拡大する石油の需給ギャップ 「一帯一路」の権益を獲得 2019/11/13

国民所得の拡大で自動車燃料の需要増大


 中国ではエネルギーの対外依存度が上昇し、特に石油の対外依存度は71%に達している。石油の需給ギャップは10年前の2億t台から2018年には4.5億t以上にまで拡大。今後、25年までに石油の消費量は7億2000万tに達し、需給ギャップは5.3億t以上に拡大する見込まれている。こうした需給ギャップが拡大する深層的要因や、

・ 【視点】雑穀米志向でグリーン・レジリエンス(浦野浩・エネルギー評論家) 2019/11/07

レジリエンス(resilience)という表現をよく見かける。「跳ね返す力」を意味する科学用語だが、広義に解釈し防災力を高める、ストレス耐性を強める、活性化をはかるという意味でも使われるようになった。グリーン・レジリエンスも、グリーンが意味する環境・農業・林業・暮らしなどについて、安全性や耐性を高めグレードアップする表現として国際的に使われている。林業の衰退は、台風による倒木や土砂災害を引き起こし、インフラとライフラインの損傷につながる。先頃の台風15、19号で生じた被害の大きさを知るにつけ、グリーンの耐性低下をあらためて痛感する。

・ 【スポット解説】相次ぐ過去最大クラスの台風 電力設備の基準見直しも 2019/11/07

台風15号や19号は関東地方や東北地方を中心に大きな被害をもたらした。主に強雨で電柱や鉄塔といった電気設備も大きな被害を受け、被災地の住民が停電に見舞われるなど不便を強いられた。今後も大きな規模の台風や集中豪雨が直撃する可能性が指摘され、電力設備も対策の必要性に迫られている。被害が広範囲に及んだことから、政府は18日の閣議で「特定非常災害」への指定を決めた。特定非常災害への指定は、阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震、昨年の西日本豪雨などに続き6例目だ。

・ 【EWN】 セキュリティー基準を厳格化 サイバー攻撃の高度化に対応 2019/11/07

高度化・巧妙化する米電力会社への攻撃


米国の連邦エネルギー規制機関(FERC)は2019年6月20日、北米電力信頼度協会(NERC)が作成したサイバー攻撃に関する報告基準の改定案を承認した。従来、北米の電気事業者は、電力の安定供給に支障が出た場合のみ、NERCおよび国土安全保障省(DHS)傘下の各機関へ当該事案について報告する必要があったが、今回の改定により、

・ 【エネルギーを見る眼】関電の金品受領問題 問われる料金原価の適性性(松村敏弘・東京大学社会科学研究所) 2019/11/07

コンプライアンスだけの問題ですむか


関西電力の幹部が多額の金品を関係者から受け取っていた問題が連日マスコミを賑わしている。癒着(ゆちゃく)によって調達等が歪められたとの疑念に関して関電は否定しているものの、コンプライアンスに問題があったことは関電自身も認めており、拙い事後対応もあって、経営陣の刷新という大事に到った。私は法令違反の有無や癒着に関して特別な情報も知見もないので無責任なことは言えないが、金品を返却するよう努力したとの関電の説明は、多くの幹部に関して一定の説得力があると思う。また、

・ 電力系統の再構成はどうあるべきか 2019/11/07

原因者負担の原則では投資回収が困難に


北海道胆振東部地震で大型電源が脱落してブラックアウトが起こり、また、再生可能エネルギーの急激な増加により系統が不安定となり受け入れ制限が続くなど、わが国では系統を再構築する必要が出ている。現在、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は系統の混雑緩和への対応に終始している。新たに送電線の増強、新設の検討を始める条件は

・ 意識改革と企業倫理の根本立直しを 2019/11/01

原発巡る関電の金品受領問題


関西電力の岩根茂樹社長は10月2日、福井県高浜町の森山栄治元助役から、同社の20人が金品換算で3億1854万円を受領、うち3487万円については返却できていないことを会見で明らかにした。森山氏と関わりが深い高浜町の建設会社、吉田開発への国税当局の査察をきっかけに、関電幹部が森山氏から金品を渡されていた事実が発覚したため、

・ 【視点】系統コストの負担の在り方(山地憲治RITE副理事長・研究所長) 2019/11/01

再エネ主力電源化に向けて、発電コスト削減だけでなく、増加せざるを得ない電力系統コストの抑制が求められている。まずは既存系統の最大限の活用を目指してコネクト&マネージ(接続させるが、流す電力は運用で調整する)と呼ばれる取り組みが行われている。この取り組みでは、事故時などに備えた予備容量も含めて系統容量の空きを活用するため、想定潮流の合理化やN-1電制(通常時は予備容量の一部も利用し事故時には電源制限)、ノンファーム接続(空いている時だけ接続)などの制度整備が進んでいる。コネクト&マネージの効果的な展開のためには、電源制限などのオペレーションとそれに伴う電源側のコスト負担を分離して運用すること

・ 【EWN】米国の石油生産に暗雲 シェールオイル開発が停滞 2019/11/01

生産性低下で「親子問題」が顕在化


中東では、今年の春頃から石油タンカーや石油設備が何者かによって攻撃される事件が多発している。その度に聞こえてくるのが「中東がだめになっても米国のシェールオイルが増産されるので問題ない」という論調である。米国は2018年にサウジアラビアを抜き世界最大の産油国となり、今年6月に一時的にではあるが輸出量も世界一となった。こうした報道を目にすると、米国の石油生産の将来は盤石であるかのように思えてくる。しかし、実は最近の米国の石油業界では、このような見方に変更を迫るような話題が急激に増えている。実際、

・ 【スポット解説】仙台市ガス局の民営化議論 残最大規模の市の行く末は 2019/10/28

国内最大の公営ガス事業者である仙台市ガス局の民営化議論が進んでいる。民営化によって、自由化の恩恵を受けられるようにするのが目的だ。だが、民営化した後も料金水準や経営の安定性を保てるかといった課題もある。事業の譲渡方法や譲渡先の選定方法に関心が集まる。経営の弾力的な運営が可能な企業に任せたい――。仙台市長の諮問機関、仙台市ガス事業民営化推進委員会(委員長=橘川武郎・東京理科大学大学院教授)が7月に開いた初会合では、事務局からこう説明があった。仙台市のガス事業はもともと、民間の仙台瓦斯が

・ 【エネルギーを見る眼】福島原発事故は予測できたか 司法判断での後知恵バイアス(高橋信・東北大学大学院工学研究科教授) 2019/10/28

人間の意思決定に働く「不合理性」


東京電力の旧経営陣に対する無罪判決に対してメディアは全般的に厳しい論調で報じている。福島第一原子力発電所事故がひき起こした大きな社会的な影響を考えると、メディアが無罪という判決をすんなり受け入れることはないだろうが、私は司法制度における後知恵バイアスの問題を考える必要があると思う。司法の性質上、判決を下すのは常に事が起こった後であり、未来から遡って過去の事実を認定する必要がある。過去の状況を判断する場合、事象が発生した時点において、その年代の社会通念的な常識の範囲内で、その判断が「誤っていたか否か」が問題になる。判決は、重大な被害を発生し得る津波に関する情報があったにも

・ 【EWN】千葉の大規模停電で実証 災害に強い石油・LPG 2019/10/28

エネファームは「宝のもち腐れ」に


9月8日から9日にかけて東京湾を縦断した台風15号は、進行方向東側の房総半島に大規模・長期停電をもたらした。小型だが強い台風だったので、被害は千葉市以南・以東の地域に集中し、多数の倒木や枝などの飛来物によって、多数の個所で電線が切断され、電柱が倒れ、大規模地震にも匹敵する広域・長期の停電となった。大規模停電に伴って、ポンプが作動しなくなった水道も各所で断水し、また基地局のバッテリー切れによって携帯電話も通じなくなり、復旧作業を困難にした。 北海道全域ブラックアウトに続き、

・ 福島原発処理水「海洋放出」で論争 2019/10/28

松井大阪市長に小泉環境相が不快感


福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分を巡り、前閣僚の発言をきっかけに、地方の政治家を巻き込んだ論争が起きている。9月10日、原田義昭環境相(当時)は退任前の記者会見で、「原発で発生する処理水は、思い切って放出するしか方法がない」と述べた。これに呼応するように、松井一郎・大阪市長らが海洋放出を促す発言を行っている。一方、原田氏の後任として環境相に就いた小泉進次郎氏は、

・ 【視点】独エーオンに見る電力事業の難しさ(山本隆三・常葉大学経営学部教授) 2019/10/28

ドイツ最大のエネルギー企業、「エーオン」が化石燃料、原子力、火力、水力、電力取引部門を「ユニパー」として分離し上場したのは3年前だった。エーオンには送配電、小売り、再生可能エネルギー部門が残った。当時、再エネの将来性を見据えたエーオンが既存の発電部門を見限ったとの報道もあったが、分割の狙いは企業価値の向上にあったのだろう。電力市場が自由化され、さらに変動費がほとんど不要な再エネ電源の増加が卸価格を下落させたため当時エーオンの採算は悪化。株価は

・ 【EWN】米国で拡大する蓄電池 州政府の支援策が後押し 2019/10/23

家庭用は前年比5倍に急増


米国の非営利団体「スマート電力アライアンス(SEPA )」が、定置用蓄電池 (Energy Storage)の導入状況をとりまとめた報告書を公表した。SEPAには、米国の公営・市営の電力会社や公益事業委員会など、1000以上の会員として参加している。会員の合計販売電力量は、全米の販売量の73%を占める。SEPAの報告によると、2018年に全米で33万4900kW・76万3000kW時の蓄電池が導入され、累積で

・ 【スポット解説】電力先物市場がスタート 事業者からの信頼が重要に 2019/10/23

9月17日、東京商品取引所(TOCOM)で日本初の電力先物取引がスタートした。電力先物市場とは、将来の電力価格を固定価格で売買できる市場のこと。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は、気象条件などの影響で価格変動が起きやすい。電力先物市場で低価格の電力を仕入れることで、価格変動リスクをヘッジでき、安定した経営が行えるメリットがある。商品は休日を含めた終日の電力を対象とする「ベースロード電力」と、

・ 電力ビジネスはどう変貌するか 2019/10/23

IT技術によるイノベーションの可能性


2000年3月に電力小売りの自由化がスタートして20年近くになった。現在では新電力の占める割合は全電力需要の14%を超え、これから20年4月に全面自由化というスケジュールになっている。 03年には日本卸電力取引所(JEPX)が開設され、小売り全面自由化当初(16年4月)時点では取引量は総需要の2%であったが、この夏では30%を超えるまでに至った。新電力の登録数も、611事業者(9月1日時点)で、事業を行っているのが約300社となっている。一見、わが国の電力自由化は成功のように見える。しかし、現実には

・ 【視点】オーロラが語る地球の防衛網(浦野浩) 2019/10/23

この夏、オーロラの名所として知られるカナダのイエローナイフという小さな町へ出かけた。一度は眺めてみたい景色として人気のあるオーロラだが、遭遇できるかは天候次第だ。私の場合、3日間夜空を見上げて、幸運にもオーロラ爆発と呼ばれるまれな景色まで観ることができた。帯状の緑のカーテンが揺れ、光の龍や竜巻が躍る姿には赤い色まで入っていた。オーロラは、太陽が放出する太陽風に対し、

・ 【エネルギーを見る眼】米メジャーズが小売りに回帰 デジタル技術で現場を管理(小嶌正稔・桃山学院大学経営学部教授) 2019/10/11

マラソン社の成功例を他社が後追い


米国のメジャーズがリテール(小売市場)に戻ってきた。これはESG投資の観点からの投資撤退を避けるためにもリテールネットワークの活用が必要になっていること、ダウンストリームで精製からリテールまでを統合した「マラソンモデル」が強みを発揮していること、そしてリテールからの撤退の要因の一つになった現場管理が、デジタル化によって可能になっていると考えられていることである。「マラソン」は、

・ 原子力巡航ミサイルが爆発か 2019/10/11

ロシア軍が住民500人に避難を要請


8月12日、モスクワから東へ約400㎞の場所にあるサロフ市内で、ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」の職員5人の葬儀が行われた。職員らは8月8日に、ロシア北部アルハンゲリスク州ニョノクサの近くにある海軍の海上プラットフォーム上にある実験場で、液体燃料ロケットエンジンの実験を実施。実験を終えた直後にエンジンが突然出火して爆発し、爆風で海に吹き飛ばされて死亡した。5人が所属していたのはロスアトムの全ロシア実験物理学研究所核センター。また、

・ 【視点】FITの反省と見直し(山地憲治RITE副理事長・研究所長) 2019/10/11

 再エネ発電の固定価格買い取り制度(FIT)導入以前から、FITは劇薬で、再エネ導入効果は大きいがその副作用も大きいと私は指摘してきた。その予見は現実になっている。2012年7月のFIT本格導入以降、18年12月末までの6年半の間に、わが国の太陽光発電は560万kWから4870万kWと約9倍に急増した。この情勢を踏まえ、第5次エネルギー基本計画では再エネの主力電源化を目指すこととなったが、この目標には「経済的に自立した」という条件が付いている。しかし、

・ 【視点】GAFAが作り出すエネルギー格差(山本隆三・常葉大学教授) 2019/09/12

米国では、知人から太陽光発電から化石燃料関連まで、さまざまなベンチャー企業への投資について意見を求められることがある。多くの米国人は、高リスクだが高収益の可能性もあるベンチャー企業への投資を考えるのだろう。一方、日本人でベンチャーへの投資を考える人はほとんどいないだろう。一度だけ、知人からスタートアップへの経営参加を打診されたことがあるが、ベンチャーへの投資を相談されたことは皆無だ。日米の投資に対する考え方の差が、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる企業が米国からしか出てこない理由の一つだろう。

・ 【エネルギーを見る眼】緊張増すペルシア湾 迫られる日本の選択(最首公司) 2019/09/12

イラン・サウジ代理戦争の調停役を


ペルシア湾の安全航行を巡り、米国・イランの緊張が高まっている。米国は国際有志軍を結成して、イラン包囲網を築こうと、日本にも参加を促しているが、日本とイランの間には格別の関係がある。ここは米国・イランをひとまず置いて、イエメン内戦の処理に当たるのが日本の得策である。

・ 【EWN】有望なメタンと水素 将来的に魅力あるビジョン 2019/09/12

既存のLNGインフラを有効活用


今年も大学生の就職活動は夏前には事実上終了している。近年は、日本企業も即戦力の中途採用に力を入れているが、最近まで最も安定した業界であった規制業種、例えば都市ガス業界などは依然として、4大新卒(技術系は修士卒)の新入社員への依存・期待は大きいだろう。今年は、都市ガス各社の新卒採用には大きな問題はなかったようだが、この先は逆風が吹く可能性は強い。

・ 【スポット解説】原発「共同事業化」で基本合意 東電には柏崎刈羽稼働の思惑も 2019/09/12

東京電力ホールディングスと中部電力、日立製作所、東芝の4社は8月28日、原子力発電の共同事業化を目指した検討を行うことで基本合意した。共同事業とすることで、事業を進めるうえでの課題を乗り越えたい考えだ。しかし、電力会社同士や、メーカー側とも、それぞれ立場や思惑は異なる。「同床異夢」となる可能性もはらんでいる。

・ 再エネと電力安定供給両立へ議論に着手 2019/09/11

改正電事法・FIT法を通常国会に提出へ


経済産業省は、エネルギー基本計画で掲げる再生可能エネルギーの主力電源化と、電力安定供給の維持を両立させるための制度議論に着手する。総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会(分科会長=榊原定征・前経団連会長)の下に、「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」「持続可能な電力システム構築小委員会」の二つの小委員会を設置した。年度内に議論をまとめ来年7月の改正電気事業法と改正FIT法の改正案を通常国会に提出、2021年4月の施行を目指す方針だ。

・ 【視点】デジタル社会を阻む計量法の縛り(山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長) 2019/08/19

デジタル社会の到来で膨大な量のデータが計量されるようになってきた。電気計量においても2024年にはスマートメーターが全戸に設置される見通しだ。スマートメーターからは電力量に加えて時間や位置情報も得られる。送配電設備もIoT(モノのインターネット)で結ばれ、さまざまな計量が行われるようになってきている。こうしたデータを活用して、電力アグリゲーションビジネス、P2P (個人間)の電力取引、EV(電動自動車)の充放電制御、さらには防災対策や見守りサービスなどさまざまなビジネス展開が期待されている。ここで問題となっているのが計量法の縛りである。

・ 【EWN】シェールガス開発が進展 存在感増すアルゼンチン 2019/08/19

北米以外で初めて大規模開発を実現


6月初旬に史上初めてアルゼンチンが浮体型LNG製造・出荷施設(FLNG)からLNGを輸出を開始した。この「タンゴLNG」と命名された輸出案件は年産50万tと小さなものだが、かなり画期的なものである。日本のメディアではほとんど報道されなかったが、二つの点で注目に値する。まず、第一点は米国・カナダに次いでアルゼンチンでシェールガスの商業開発が軌道に乗り始め、同国の天然ガス生産量が急増していること

・ 「れいわ」躍進のエネ政策への影響は 2019/08/19

原子力にとって致命的なことにも


99万2267票――。れいわ新選組の山本太郎氏が参院選で獲得した票だ。消費税と原発即時廃止を掲げ、選挙前には泡沫(ほうまつ)候補とさえ言われた同氏の獲得票は、ふたを開ければ全候補者中でトップ。次の衆院選で100人規模の候補者擁立をめざす同党は、今後の野党の勢力図に大きな影響を与えそうだ。

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